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「マダム・イン・ニューヨーク」English Vinglish(2012)#318

2014.07.04
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!

D-EV「マダム・イン・ニューヨーク」
English Vinglish(英語か何かを)/2012
14.07.04 ★★★★★

製作:ラーケーシュ・ジュンジュンワーラー、ラダーキシャン・ダマニー、スニール・ルッラー、R・バルキ/脚本・監督:ガゥリー・シンデー/作詞:スワナンド・キルキレー/音楽・背景音楽:アミット・トリヴェディ/撮影:ラクシュマン・ウテーカル/プロダクション・デザイン:ムスタファ・スタティオンワーラー/VFX:プライム・フォーカス/編集:ヘーマンティー・サルカル

出演:シュリデヴィ、アディル・フセイン、プリヤー・アーナンド、スラバー・デーシュパーンデー、スジャーター・クマール、シヴァンシュ・コーティア、ナヴィカー・コーティア、ラジーヴ・R、スミート・ヴヤス、デミアン・トンプソン、コーリー・ヒッブス、マリア・ロマノ、ルース・アグイラール、
特別出演:アミターブ・バッチャン
公開日:2012年10月5日(インド/世界)
日本公開:2014年6月28日(あいち国際女性映画祭2013上映)

ムンバイーに暮らすシャーシー(シュリデヴィ)は、平凡な主婦。彼女の作るラッドゥー(祝い事に食べる甘いお菓子)は近所でも評判。ただし、思春期になる娘は、英語の出来ない母親が三者面談に来るというので機嫌が悪い。永く英国に統治された多言語国家のインドでは、上昇志向が強く、英語ーR訛りのキツいヒングリッシュ(インド英語)でなくーを流暢に話せるのがステイタスとなっていて、シャーシーは仕事で英語をこなす夫からも軽んじられていたのだ。

そんなある日、NYに暮らす姉より娘が結婚するので式のひと月前から手伝いに来て欲しい、と誘われる。もちろん、晴れの当日、祝いの席で彼女自慢のラッドゥーが振る舞われる事も期待して。
ところが、初めての外国旅行となるNYの町中でシャシは手ひどい経験をし、一念発起して2週間でマスター出来る英会話教室へ秘かに通い始める。そこは人種のるつぼで知られるNYだけあって、英語が出来ないフランス人のシェフ、メキシコ人の家政婦、アフリカ人、韓国人、パキスタン人、タミル系インド人(ITエンジニアなのに!)が通い、そして受け持つ講師もLGBT(性的マイノリティー)という多様さだ。シャーシーは、ここで英語だけでなく、“entrepreneur(起業家)”という単語を学ぶ。それは、まだ地位が低いインド女性へのエールとなるのだった。

原題「English Vinglish」にある[V]は、「お菓子かにかどうぞ」と差し出す時に使うヒンディー語の用法。言語を題材にした作品だけあって、劇中、言葉が通じないフランス人とインド人が互いの母語で思いを告げ合うスケッチが胸を打つ。

B-140530

主演のシュリデヴィは、80年代のボリウッドを支えたインドの秘宝(「サラーム・ボンベイ!」で映画館に潜り込んだ子供たちが歓喜をあげる女優が彼女!)。その存在感は凄まじく、Khuda Gawah(神に誓って)」(1992)では女だてらに荒馬を駆ってブズカシーに参戦、母子のWロールで主演のアミターブ・バッチャンを喰った程!
本作で復帰後のIIFA(International Indian Film Academy Awards) 2013ステージでは、本作エンディング・ナンバーから軽くスタートし、「Mr.India」Mr.インディア(1987)、「Himmatwala(どてらい男)」(1983)、「Chandni(チャンドゥニー)」(19891)、「ChaalBaaz(狡い奴)」(1989)等、ヒット・ナンバーを連続でパフォーマンス。その婉麗な姿に満場の観客だけでなく、アリーナ席に並んだスター達が沸き上がり、コメディエンヌとしても格別な彼女の偉大さを見せ付けた。

「スラムドッグ$ミリオネア」司会役アニル・カプールの兄で映画製作者のボニー・カプールと結婚後、引退していた彼女が本作で20年ぶり(正確には16年ぶり)に銀幕へ復帰。先月のプロモーション来日は、ボリウッド映画の日本公開では初。奇しくも90年代後半に在日インド人コミュニティーからイベント招聘されて以来となる(ちなみにボニーの先妻との息子アルジュン・カプールは旬の若手スター!)。
間もなく50歳を迎えるシュリデヴィの美しさは記者会見でも「美魔女」と称賛されたが、劇中、オープニング・ショットで振り返る眼(まなこ)ぱっちりの彼女は、まさしく少女漫画から抜け出て来たかのよう(目が大きいだけでなく、かなりの小顔!)。

現役時代、舞踊やコメディで鳴らしたシュリデヴィにとって、ミュージカルのない今風の作品で「復帰」とは意外な氣もするが、あいち国際女性映画祭2013で上映された際に来日したガゥリー・シンデー監督にインタビューしたところ、彼女の夫であるR・バルキ監督(アミターブ主演「Cheeni Kum(甘さ控えめ)」「Paa(父)」)が何かの用事でボニー・カプールを自宅に訪ねたおり、「今度、私の妻が脚本を書いて監督デビューします」と伝えると、たまたま家に居たシュリデヴィが脚本に興味を持ち、数日後に「この映画に出たい」と連絡があったのだという。

言葉にこだわった作品だけあって、シュリデヴィ出身の南インド向けにタミル語バージョンも作られ、ヒンディー語版でボリウッドの大御所アミターブ・バッチャン(「華麗なるギャツビー」)が特別出演する場面でコリウッド(タミル語映画界)・スターのアジート・クマールが起用されていて、近年の傾向というだけでなく、アニル主演Bulandi(高位継承)」(2000)がヒンディー語映画ながらラジニーカントの特別出演を売りにしていたり、遣り手の製作者であるボニー・カプールが「シュリデヴィ提供」を看板にトリウッド(テルグ語映画界)のP・S・ヴァムシー監督を起用して南インド市場を強く意識した「Shakti(力)」(2003)で制作していた事にも繋がるように思える。

劇中、唯一氣になったものの、監督インタビューで訊き忘れたのが、英会話講師デイヴィッドが<失恋>した後に着て来るスウェーターとサングラスの衣装設定だ。演じるコリー・ヒッブスは映画出演は本作が初めてのキャリアとなるようだが、舞台俳優なのだろう。このスケッチの衣装のみ、どこか作品のトーンと異質のため、特別な<傷心>を表現するための演技設計として彼が自分で用意したのではないかと思う。

シャーシーの夫サティーシュ役は、「エージェント・ヴィノッド」Agent Vinod(2012)でヴィノードを追う敵役を演じていたアディル・フセイン「Kaminey(イカれた野郎)」(2009)、Ishqiya(色欲)」(2012)他、海外作品もしばしば起用され、米「ライフ・オブ・パイ」(2012)、米英「ミッシング・ポイント<未>」(2012)に出演。
思春期の娘サプナー役ナヴィカー・コーティアは、ガゥリー・シンデー監督によると幼い弟サーガル役シヴァンシュ・コーティアのオーディションに付いて来たところ、キャラクターが氣に入って配役を決めたとか。ボリウッド映画における家族の芝居が実にナチュラルだったりするが、本作では尚佳い理由はそこにあったか。
また、祖母役スラバー・デーシュパーンデーは、この10年程、TVシリアルやマラーティー映画にシフトしていただけに懐かしい。

P-MIN

「マダム・イン・ニューヨーク」【2012/インド/ヒンディー語・英語/スコープサイズ/監督・脚本:ガウリー・シンデー/134分】字幕翻訳:石田泰子 提供:ビオスコープ、アミューズソフトエンタテイメント 配給:彩プロ
madame.ayapro.ne.jp

本年6月28日よりマダム・イン・ニューヨークの邦題で、シネスイッチ銀座ほかで上映中。ぴあの初日満足度ランキングでは、洋画・邦画を差し置いて1位に! 順次全国公開し、フォーラム福島では9月の予定との事。乞うご期待。

英語というと文法を氣にして口下手になる日本人も多いが、劇中にある「May I  ?」のひと言でコミュニケーションがエレガントに広がり、会話は心と解るはず。劇場には、ぜひハンカチ2枚を持参して欲しい。1枚はエンディングのスピーチで涙を、もう1枚は映画の後で甘い物かにかのために。 (ナマステ・ボリウッド/すぎたカズト)

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