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Chalte Chalte(2003)#052

2010.09.10
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!

Chalte Chalte

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Chalte Chalte(ゆきゆきて) 04.11.13 UP ★★★★★
チャルテー・チャルテー

製作・原作・脚本・監督:アズィーズ・ミルザー/原作・脚本:ロビン・バット/撮影:アショーク・メーへター/台詞:プラムード・シャルマー、アーシーシュ・カーリヤー、ルミー・ジャフリー/音楽:ジャティン-ラリット/音楽・背景音楽:アーデーシュ・シュリワスターワ/作詞:ジャーヴェード・アクタル/振付:ファラー・カーン/美術:プリテン・パテール/編集:アミターブ・シュクラ

出演:シャー・ルク・カーン、ラーニー・ムカルジー、ジャス・アローラー、サティーシュ・シャー、ジャイシュリー・T、ラジーヴ・ヴェルマー、リレット・ドゥベイ、ジョニー・リーヴァル、ジャミー・カーン、ハイデール・アリー、ヴィシュワジート・プラダーン、ボビー・ダーリン

友情出演:アーディティヤー・パンチョリー

公開日:2003年5月13日(年間トップ8ヒット!/日本未公開)

STORY
トラック野郎のラージ(シャー・ルク)は、ふとしたことからファッション・デザイナーのプリィヤー(ラーニー)と出会って恋に落ちる。ふたりは友人たちもうらやむハッピーな夫婦となるが・・・。

Revie-U *結末に触れています。
お待ちかね! ドリームズ・アンリミテッド第2弾! 「ラジュー出世する」Raju Ban Gaya Gentleman(1992)のアズィーズ・ミルザー監督作品。今回も主演は盟友シャー・ルク・カーンだが、ヒロインはジュヒー・チャーウラーからラーニー・ムカルジーにバトンタッチ。ジュヒーがおめでただったため、スケジュールが合わなかったのか??(ジュヒーは、シャー・ルクと共に製作のみ)。

ラーニーとシャー・ルクは、Kuch Kuch Hota Hai(何かが起きてる)(1998)、時に喜び、時に悲しみKabhi
Khishi Kabhi Gham…
(2002)に続くが、ふたりの共演は意外に少なくてこれで3作目。ヒーロー&ヒロインとして、まともに(?)結ばれるのは今回が初めてとなる。

話の筋はいたってシンプル。冒頭、ボーリング場で待ち合わせた若者たちのひとりが婚約者を連れてくる。彼女が恋愛小説を読んでると知るや、皆で彼らの友人ラージとプリィヤーの恋愛物語を語り合い、それにそって劇が進行する。

ラージの職業は、トラック2台を所有する「ラージ運送」の若き社長。パンジャーブ出身。時には、Gadar(暴動)(2001)のサニー・デーオールを気取って自分で運転もする(演芸ナンバル「main nikla gaddi leke」で登場!)。

一方、プリィヤーはギリシア育ちの花形ファッション・デザイナー。到底、ふたりが出会う「隙」はない。が、ラージの運転するトラックに追い越しをかけたプリィヤーの車がぶつかりそうになって・・・。このエピソードは爆笑だ。勝ち気なプリィヤーがラージに喰ってかかっている最中、ハンドブレーキを引き忘れた彼女の車が路肩に落ちてしまうのだ!

その後、友人の結婚式でプリィヤーと再会したラージは、風光明媚なマハーバールシュワル(プネーの南120km)からムンバイーまで彼女をトラックで送る。インドの田舎道を堪能しまくるドライブ・ナンバー「dagariya chalo」は、ラガーンLagaan(2001)でも見られた鳥追いのゴーファンや水牛を川の水で洗ったり、さとうきびを畑から盗んだりと、なかなか愉快。曲の終わりには、道草ばかり喰おうとするラージより帰国子女のプリィヤーの方が遊び呆けてしまうほど。

さて、ムンバイーに到着したラージのトラックを進入禁止の手前で交通警官が止める。悪名高きインドの警官だ。普通はここで一悶着あっておかしくない。ところが、彼は心優しき警官で、「ここから歩いて帰る」というプリィヤーをラージと一緒に見送るのだ。そればかりか、雑踏に紛れかき消されてしまうラージの声を「伝言」ゲームのように中継してくれさえする! しかもラージに「バイバイも」と促され、「バイバ〜イ」と言うのが可笑しい。

この、町行く人々の人の良さ。そういえば、アズィーズのデビュー作であった「ラジュー〜」でも、シャー・ルクとジュヒーの熱々カップルにラーティー(警棒)片手の警官から車のセールスマンまでうっとりしてしまっていたっけ。チャイ屋で駄弁る面々の下町の人情にほだされて、すっかりマサーラー映画ファンになった人も多かったことだろう。

案の定、粗忽者のラージは洗濯人にプリィヤーの電話番号(これも伝言ゲームで聞き出した)を書いたメモごと洗濯させてしまい、先の交通警官ティワリを訪ねてもう一度電話番号を聞き出そうするが彼も失念している。そこでチャイ屋で郵便配達のおじさんらに尋ねてまわり、彼らも一緒にプリィヤーを探しまわるのだ(まるで「Gメン’75」のように横一列になって歩くショットも! 実はこれ、ボリウッド版「レザボア・ドッグス」である「Kaante」のパロディ)。

その後も彼らは、ふたりのアパートへ遊びに来たり、先のティワリなどエンディングで重要な役割まで与えられ(交通課なのに!)、ラージとプリィヤーを親身になって見守るのがいい。

この下町の情緒といったものが、実はアズィーズの持ち味だったりするのだろう。前半は、DDLJDilware Dulhania Le Jayenge(1995)ばりに結婚のためアテナに住む父のもとへ向かうプリィヤーとラージの道中物となるのだが、やたら大風呂敷な撮影と政治的なテーマに話を広げてしまったPhir Bhi Dil Hai Hindustani(それでも心はインド人)(2000)が作品として未消化だったことを思い出すと、アズィーズの基本はやはり「ラジュー〜」のような人情物なのだなあ、と思ったりもする。

実際、年間19位に留まった「PBDHH」に比べ、本作はトップ8にランク・イン。アズィーズ4作品中、最もヒットしている。ちなみに「ラジュー〜」は年間10位。

さて、すんなり結婚してしまい、ふたりは友人もうらやむ仲睦まじきカップルになって・・・と思いきや、後半は四六時中ケンカばかりしている夫婦に。現実はキビシイ?

これは主に、部屋は散らかし放題、時間には普通のインド人よりルーズ過ぎるという彼の性格ゆえ(というより、ほとんどADD)なのだが、ラージがプリィヤの元婚約者サミールを持ち出してきたことから遂に彼女が別離を決意するまでに(サミール主催のパーティーにはBMW、メルセデスなど超高級車が集うが、ラージの愛車はコンパクトなヒュンダイ・サントロ。アッパー・クラスに対するミドル・クラスのコンプレックスもある。プリィヤー自身は、階級差の結婚をまったく問題にしていなかったのだが・・・)。

後半はちょっとダレ気味で、ついついシャー・ルクが口やかましい嫉妬夫を演じたソープ映画Hum Tumhare Hain Sanam(愛しい人、私はあなたのもの)(2002)を見てるような気になってしまう。まあ、結局のところ「ケンカするほど仲がいい」というオチなのだけどね。

サポーティングは、「PBDHH」でシャー・ルクに対立する警官役ビシュワジート・プラダーンが友人ヴィヴェーク役。ラージを何かと面倒を見る隣人マヌー・バーイ役に、やはり「PBDHH」のサティーシュ・シャー

お馴染みジョニー・リーヴァルは、路上の酔っ払いナンドゥー役。「DDLJ」でもしばしば耳にした「le jayenge le jayenge dilware dulhania le jayenge〜」と歌い、ラージとプリィヤーを窓の下から見守る(酔った歌声がうるさくて、ラージから「静かにしろ! オレたちはケンカ中なんだぞ!」と叱られてしまう!)。

プリィヤーの父親に、Yeh Raaste Hai Pyaar Ke(愛の道標)(2001)のラジーヴ・ヴェルマーアムリーシュ・プーリーの頑固親父ぶりに比べると、物分かりが善過ぎてなんだか物足りないが。

伯母役に「Gadar」の母親役、「モンスーン・ウェディング」Monsoon Wedding(2001)のリレッティー・ドゥベイ

友情出演に「イエス・ボス」Yes Boss(1997)のアーディティヤー・パンチョリーがビジネスマン役でチラリ。スキンヘッドなのは喪中?

プリィヤの婚約者サミール役に「モンスーン〜」のジャス・アローラNa Tum Jaano Na Hum(2002)にも出ていたオカマ君もプリィヤの友人役でうろうろしている。

そして、いい味を見せるのが、警官ティワリ役のジャミール・アリーミモラHum Dil De Chuke Sanam(1999)では、ジョイント・ファミリーの一員という小さな役だったが、今後の活躍が楽しみである。

ラージと一緒にプリィヤーを探す郵便配達人ガンガー役には獅子っ鼻のハイデール・アリー。シャー・ルクの父親役だった「PBDHH」では白い顎髭を生やし実に哲学的な面相を見せていたが、今回は剽軽なポーズも。改めてボリウッド俳優の芸域の幅を見せつけられた。

アズィーズの演出は、良好。ギリシアの家までプリィヤを送り届けた別れ際、航空券や遊園地のチケット、レストランのレシートまでも想い出の品にするロビン・バットの脚本術に感心(台詞のプラムード・シャルマーアーシーシュ・カーリヤルミー・ジャフリーの功績か)。

Aankhen(盲点)(2002)のアショーク・メーへターによる撮影は秀逸で、特にギリシア・ロケが美しい。

ジャティン-ラリットアーデーシュ・シュリワスターワのフィルミーソングも快く、パラポルティアニ教会も登場するミコノス島ロケの熱々ナンバー「tauba tauba ishare」では、紺碧の空と白亜の教会、斜めの構図、アビジートアルカー・ヤーグニクのプレイバックも手伝って、蒼き地球をあしらった「PBDHH」の「aur kya(それから何?)を思い出させる。

美術はプリテン・パテールに引き継がれているが、クリア系ブルー、グリーンで塗られたラージ家のセットはなかなか美的でリフォームの参考にしたくなるセンス。

シャー・ルクは、例によってのお調子者ぶりで楽しませてくれる(ただし、前半)。流暢な英語で営業電話に出るものの、ミーティングをすっぽかしていたことに気づき、慌ててクルタからスーツに着替えてゆく様が笑える。

一方のラーニーは、出逢いのシーンで喰ってかかる芝居が何度見ても爆笑。ギリシア・ロケでは、エーゲ海を想わせるブルー×ホワイトの衣装が印象的。プリィヤーの役ははじめ、アイシュワリヤー・ラーイの予定だったというが、アイシュとシャー・ルクの口喧嘩を延々見ていたくはない(じゃあ、ラーニーならよいのか、というとそうわけではないが)。

すっかり韓流に押し流され、一般的には忘れ去られたインド映画だが、こうしてシャー・ルク×アズィーズのコンビ作を観ると、再び印流が日本にも上陸することを願ってしまう。


追記 2005.12.02

ジョニー・リーヴァルが路上で歌っている曲は、シャシー・カプールムンターズ主演「Chor Machaye Shor」(1974)のパーティー・ナンバル「le  jayenge」

追記 2010.09.10

>プリィヤー役ははじめ、
アイシュワリヤー・ラーイに白羽の矢が立っていた、というのは、この時期、よく聞かれた話。とりあえず、アイシュにオファーしとこう、と。

近年のシャー・ルク・カーン主演作は、ボリウッドでの立ち位置もあって大作化する傾向にあるが、そろそろ本作のような小粒で憎めない作品も作って欲しいところ。
「Dulha Mil Gaya(花嫁をみつけた)」(2010)のような愚作に義理でゲスト出演し、宣伝の片棒まで担ぐよりは、よっぽどファン・サービスになると思うのだが。

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