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Agneepath(2012)#316

2012.10.25
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!
Agneepath

Eros正規盤は、紙ケース+化粧箱入りDVD2枚組。

「Agneepath」火の道(2012) ★★★★
アグニーパト

製作:ヒルー・ヤシュ・ジョハール、カラン・ジョハール/原作:ムクール・S・アーナンド/脚色・監督:カラン・マルホートラー/脚色:イラー・ベディ・ダッタ/台詞:ピユーシュ・ミシュラー/撮影:キラン・デーオハンス/追加撮影:ラヴィ・K・チャンドラン/音楽・背景音楽:アジャイ-アトゥール/作詞:アミターブ・バッタチャルヤー/振付:サロージ・カーン、ブリンダ、レーカー・チンニー・プラカーシュ&チンニー・プラカーシュ、ガネーシュ・アチャルヤー、フェーローズ・カーン/プロダクション・デザイン:サブー・シリル/アクション:アッバース・アリー・モーグル/衣装:マンディラー・シュクラー、ナヴィン・シェーッティー、マニーシュ・マルホートラー/VFX:ピクシオン/編集:アキヴ・アリー

出演:リティク・ローシャン、リシ・カプール、サンジャイ・ダット、プリヤンカー・チョープラー、オーム・プリー、ザリーナ・ワハブ、サチン・ケーデーカル、チェータン・パンディット、ラージェーシュ・タンダン、パンカジ・トリパティー、デーヴェン・ボージャニー、バンワリー・タネージャ、ブリジェーンドラ・カーラー、ラヴィ・ジャンカル、アリーシュ・ビワンディワーラー(新人)、カニカー・ティワリ(新人)
特別出演:カトリーナー・ケイフ
公開日:2012年1月26日(東京国際映画祭2012上映)/174min.

Agneepath

(c) Dharma Productions, 2012.

STORY
アラビア海に浮かぶマンドワ島で教師をやっていた父を極悪人カンチャー(サンジャイ)に殺されたヴィジャイ(リティク)は、母と共にムンバイの下町へと移り住む。故郷マンドワを奪回するため、人身売買を行うグンダー(ヤクザ)のラーフ・ラーラー(リシ)に近づき、彼のヒットマンとなるが…。

Revie-U
東京国際映画祭で上映となった本作のオリジナル版は、ボリウッドの帝王アミターブ・バッチャン主演Agneepath(1990)。製作は家族の四季」K3G(2001)等を手がけた故ヤシュ・ジョハールで、彼の息子カラン・ジョハールが亡き父を偲んでリメイク版をプロデュース。同じくプロデューサーとして名を連ねているヒルー・ヤシュ・ジョハールは、カランの母親で夫の死後、プラー・ナーム(正式な名前)として夫の名を併記している。

リメイク版のアナウンス当初、アビシェーク・バッチャンが「父の出演作の中で最も氣に入っている演技」と語っていた事もあり、誰もがアビー配役かと予想した。
しかし、役不足なのは明らかであり、また一方でオリジナル版におけるアミターブの演技は圧倒的である一方で、対抗するキャラクターが弱かった事から、敵役となるカンチャー・チーニを同じマンドワ村出身として増強。外部からやって来た密輸マフィアという点を変えるだけでなく、オリジナル版では地主が村人を扇動してヴィジャイの父を撲殺させるエピソードをカンチャー主導に置き換えている。
またその貶め方も増強されており、オリジナル版では無学な踊り子に文字を教えるため遊郭を訪れたところを睡眠薬を飲まされ、同衾する自堕落な教師という汚名を着せられたが、リメイク版では年端もいかない少女に暴行し、雨の中、村の大木で首を吊られる。
これらがエスカレートした背景にはスラムドッグ$ミリオネアの影響もあるだろうが、元々、オリジナル版がヤシュ・ジョハールによるダルマ・プロダクション作品の中でも群を抜いて荒々しい作風であり、それはインド経済が死に体へと向かった80年代末の世相を反映しての事。

Agneepath

(c) Dharma Productions, 2012.

ヴィジャイを演ずるリティク・ローシャンは当初、オファーを躊躇したと伝えられるが、アミターブがNational Awards 主演男優賞を獲得した伝説的な役柄であるからして当然と言えよう。
かつてシャー・ルク・カーンがアミターブ主演の人氣作Don(1978)をリメイクした時にも相当のプレッシャーとなったものだ。
ただ、誰を据えてもアミターブを超えられないと製作のカラン・ジョハールは判断したのだろう。抜き刃の牛刀の如き迫真に満ちたアミターブの存在感を、主人公でなく敵役のカンチャーやラーフ・ラーラーに分散する事でこれを乗り越え、アミターブ版とは別物として観る事が出来る(カランはすでに父の製作したDostana(友情)」をタイトルだけ借用して現代風のDostanaを製作しているのも功を奏した)。

本作はアミターブの父Dr. H. R. バッチャンの手による詩「Agneepath」からインスパイアしたムクール・S・アーナンド版(脚本はサントーシュ・K・サロージ)を下敷きに、カランの監督作マイ・ネーム・イズ・ハーン」My Name is Khan(2010)等の助監督を務めて来たカラン・マルホートラーが脚色し、監督デビューを飾った。
オリジナル版は、アミターブの演技こそ賞賛されるべきものである一方で、国民映画となったSholay」炎(1975)や「Don」等と比べると作品としては今ひとつであったがために、リメイクする際に手を入れる余地が多く残されていたと言える。

敵役以外では、オリジナルと大きく異なる設定は、ヴィジャイの恋人と妹だろう。
アミターブ版ではすでに幼女となっていた妹シクシャーが、本作ではムンバイへ渡った直後、身重な母が産氣づき、少年ヴィジャイが色町の女たちに助けを求め、彼女たちがサーリーで覆いを囲って道端で産み落とす(アニル・カプール主演Bulandiでも同様のスケッチあり)。
ヴィジャイは少年期に汚職警官を射殺した事から母と諍い、離れて暮らす事となり、妹にも自分という存在が隠されている。そっと誕生日のケーキを届けるヴィジャイが哀しい。
また、妹は15歳とあって恋仲になるミトゥン・チャクラワルティー演じたクリシュナン・アイヤールに相当するコミック・リリーフは削られている。

ちなみに、アミターブ版ではヴィジャイが36歳。本作では台詞に「ムンバイ」とあるものの、少年時代が1977年、青年時代が15年後の1992年という設定。それ故、妹の誕生日を祝えなかったヴィジャイが酔って帰る場面で、ダルメンドラ主演「Tahalka」(1992)の描き割りが用意されている。

Agneepath

(c) Dharma Productions, 2012.

一方、恋人はと言うと、アミターブ版では瀕死の重傷で病院に担ぎ込まれたヴィジャイの看護をするナースであったが、本作では妹を取り上げた娼婦の娘。彼女の母がカンチャー子飼いの汚職警官に連れ去られそうになるのを少年ヴィジャイが警官の銃を手に取り引き金を引いてしまう。そのような因縁深き幼馴染みとして、新たに設定されたのがカーリー。演ずるは、Don 2(2011)他、7 Khoon Maaf(7人殺しを許して)」(2011)など多彩な演技を見せるプリヤンカー・チョープラー
カーリー自身は客を取らず、色町の女相手にビューティー・パーラーをオープン。愛らしい様が健在なのがいい。

カラン・マルホートラーの脚本は、果敢にもオリジナル版の名台詞などをカットしつつ大胆に構成し直す他、「Agneepath」の詩を息子に教える父親が洞窟内の階段で足を滑らせ、ラーフ・ラーラーのヒットマンとなったヴィジャイが彼の靴を履き違える等、暗喩に富み、細部までよく練り込んで作られている。
台詞はアミターブ版が近年はコメディ俳優としてMujhse Shaadi Karogi(結婚しようよ)」(2004)などに出演しているカーダル・カーンであったのに対し、本作ではディル・セ 心から」Dil Se..(1998)の特捜刑事役やTere Bin Laden(ビン・ラーディンなしでは)」(2010)で道化芝居を見せる一方、音楽家としても活動する才人ピユーシュ・ミシュラーが参加している。

Agneepath

(c) Dharma Productions, 2012.

さて、本作を引き締めるのが、敵役カンチャー・チーニに扮する不敵なギャングスターを演じさせたら(演技だけでなく!)最も相応しいサンジャイ・ダットを起用。この夏、日本でも劇場公開されたシャー・ルク主演/製作ラ・ワン」Ra.One(2011)の冒頭で看板作品Khal Nayak(悪役)」(1993)に見立ててゲスト出演していたが、本作では不氣味なスキンヘッドで登場。身体に入っているタトゥーは彼自身の本物。
アミターブ版のスタイリッシュなカンチャー・チーニと異なり、トラウマを抱える病んだキャラクターとなって、司法の及ばない密輸基地と化したマンドワ島の主として相応しい。

Agneepath

(c) Dharma Productions, 2012.

もうひとり、サンジャイ=カンチャーに揺るがぬ威圧を見せるのが、ラーフ・ラーラーを演ずるリシ・カプール。往年のトップ・スターとして培った芝居が人身売買組織のドンという腐った役柄を一層彫り上げる。息子同様に接して来たヴィジャイに殴られた後、かすかに見せる屈辱が佳い。
アビシェーク同様、息子のランビール・カプールとて父を超えるのはかなりの難易度と言えよう。

Agneepath

(c) Dharma Productions, 2012.

そして、青年ヴィジャイとして本作をリードするのが、Kites」カイト(2010)がインド映画として初の全米オープニング・トップ10入りし、「Zindagi Na Milegi Dobara」人生は一度だけ(2011)も国内上映されたリティク・ローシャン。逆三角形ボディと発達した三角筋、上腕二頭筋を存分に示しながら走るシーンが圧巻。妹を思いはFiza(2000)を彷彿。脚本の効果を大きいだろうが、アミターブ版のヴィジャイに引き摺られず、彼なりの繊細なヴィジャイ像を好演。
プリヤンカーとの再共演「Krrish 3」が待ち遠しい。

サポーティングは、ヴィジャイの母親役に、「マイ・ネーム・イズ・ハーン」でシャー・ルクの母親を演じたザリーナ・ワハブ
ヴィジャイを見守る警察署長ガイトンデー役に英「ぼくの国、パパの国」など海外作品の出演も多い名優オーム・プリーDON」Don(2006)&「Don 2」と重なるのがやや玉に瑕。
汚職大臣にはBaadshah(帝王)」(1999)など定番サチン・ケーデーカル、彼の庇護を受けるスマグラー(密輸マフィア)シャンタラーム役にWelcome to Sajjanpur」ようこそサジャンプルへ(2008)のラヴィ・ジャンカル
ラーフ・ラーラーの息子マザール役が、リティクのデビュー作Kaho Naa Pyaar Hai(言って…愛してるって)」(2001)では青白い顔で冴えないホテル・マネージャー役だったラージェーシュ・タンドン。この10年ほどんど見る事なかったが、押しの強い演技を物にした。
カンチャーに内通する警官バクシー役にWhat’s Your Raashee?(君の星座は何?)」(2009)の占星術師兼探偵のラージェーシュ・ヴィヴェーク

Agneepath

(c) Dharma Productions, 2012.

そしてリズムが異なる南系の踊り子ムジュラー・ナンバルchikni chameliのゲスト・アイテムとして今をときめくカトリーナー・ケイフをフィーチャル。プリヤンカーに続いてカラン・ジョハール製作「Dostana 2(友情2)」、そして「Dhoom 3」が期待!

なお、妹の誕生日を祝いそこなったヴィジャイをカーリーたちが励ます群舞gun gun gunaに、ボリウッドのトップ・コリオグラファー(振付師)のサロージ・カーンに師事している日本人バック・ダンサー、Ayakoも参加している。スクリーンないしDVDで確認されたし。

東京国際映画祭ではティーチ・インにカラン・マルホートラー監督が来日。「ナマステ・ボリウッド」35号でインタビューを掲載します。

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