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Phir Bhi Dil Hai Hindustani(2000)#050

2010.09.09
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!

Phir Bhi Dil Hai Hindustani

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Phir Bhi Dil Hai Hindustani(それでも心はインド人) 01.02.10 UP/02.02.19 Re ★★★★

ピル・ビー・ディル・ヘイ・ヒンドゥスターニー

製作・監督:アズィーズ・ミルザー/ストーリー・脚本:マノージ・ラールワーニー、ラージクマール・ダーヒマー/原案・台詞:サンジャイ・チェル/撮影:サントーシュ・シヴァン/詞:ジャーヴェード・アクタル/音楽、背景音楽:ジャティン-ラリット/振付:ファラー・カーン/アクション:メフムード・バクシー/美術:シャルミスター・ローイ/編集:ジャーヴェード・サイード

製作・主演:シャー・ルク・カーン&ジュヒー・チャーウラー
出演:パレーシュ・ラーワル、サティーシュ・シャー、ダリープ・タヒル、シャクティ・カプール、ゴーヴィンド・ナームデーオー、アンジャン・スリワスターワ、ニーナー・クルカルニー、ハイデール・アリー、ヴィシュワジート・プラダーン、バールティー・アチュレーカー、スミター・ジャイカル、シャラート・サクセーナ、ジョニー・リーヴァル

公開日:2000年1月21日(年間13位/日本未公開)

STORY
ATVの突撃レポーター、アジャイ(シャー・ルク)に対抗すべく、ギャラクシーTVは女性レポーター、リヤー(ジュヒー)を大抜擢。ところが、演説中の政治家をモーハン(パレーシュ)が暗殺、国際的なテロリストの仕業かと思いきや、愛娘を陵辱された復讐だった。事件は視聴率競争を巻き込んだ政治的陰謀に発展、真相を知ったアジャイとリヤーは共同戦線を張り、ひと芝居を打つが・・・。

Revie-U
「ラジュー出世する」Raju Ban Gaya Gentleman(1992)の黄金トリオ、シャー・ルク・カーンジュヒー・チャーウラー、監督のアズィーズ・ミルザーが共同で設立した製作会社「ドリームズ・アンリミテッド」(有限法人格のLtd.に引っかけた社名)の第1作(シャー・ルクとジュヒーの共演作としてはゲスト出演含めて5作目)。

アズィーズの兄でアート映画の監督サイード・アクタル・ミルザーDDLJ ラブゲット作戦DDLJ(1995)のアーディティヤー・チョープラーKKHH(1998)のカラン・ジョハール、そしてDuplicate(瓜二つ)(1997)のプロデューサー、ヤシュ・ジョハールも後押ししている。

ディル・セ 心からDil Se..(1998)でのシャー・ルクは国営ラジオ局のレポーター兼ディレクターが役どころであったが、1990年代に入ってインドは衛星多チャンネル時代に突入しており、今や20局以上が開局、SONYも参入している。破竹の勢いを見せるTV業界はテリーウッドと呼ばれているほどだ。

経済開放以前のTV界からキャリアをスタートしているアズィーズとシャー・ルクは、これを大いに揶揄している。

冒頭、シャー・ルク扮するアジャイが爆弾処理現場から決死のレポートで爆風で吹っ飛ばされる(!)かと思えば、悩殺豊満ボディーも健在なジュヒー演じるリヤーも負けじとスタジオ撮影によるモンスーン中継(!!)や大物政治家の豪勢な獄中生活を隠しカメラでスクープ、さらに政治家が暴動を扇動している図式や、生中継の公開死刑となったモーハンの囚人服にスポンサー名が入るなど、さながら現代インドの素顔をカリカチュアする社会派エンターテインメントになっている・・・

のかと思えば、ジョニー・リーヴァル扮するギャング、パプー・バーイが有人ロケットまで装備し、アジャイとリヤーが前近代的チャイニーズ・レポーターを装って拉致されたモーハンを奪い返すというコテコテ・シーンも用意されているマサーラー映画である!(揚げ句の果てに赤旗ミュージカル並みの愛国的パレードのエンディングだ)

ところで、このモーハン・ジョーシーという役名は、Vaastav(現実)(1999)にも出演しているモーハン・ジョーシーではなく、兄サイードが監督し、アズィーズが製作を担当した「Mohan Joshi Hazir Ho(モーハン・ジョシー出廷中)(1984)に由来するのだろう。

製作費は1億5000万ルピー。スタッフの意気込みも凄く(?!)、クライマックス寸前の銃撃&カーチェイス・シーンは「ビッグ・ヒット」(1998=米)をそのままコピー。しかもビデオテープと赤い車がしっかり符合している。他にも随所にボリウッド・クラシックス、セミ・クラシックス作品からイタダキがあるのもご愛嬌(苦笑)。

原題「それでも心はインド人」は、「ラジュー〜」の原型であるShree 420(詐欺師)(1955)の冒頭、ラージ・カプール(プレイバックはムケーシュ)の歌う「mera jutaa hai japani(おいらの靴は日本製)からの一節。シャー・ルクたちのボリウッド・クラシックスに対する敬愛がここに表れている。

音楽は、「ラジュー〜」ジャティン-ラリット。背景音楽も担当している。

ウディット・ナラヤンがプレイバックするタイトル・ナンバル「phir bhi dil hai hindustani」ではカランとアルジュンKaran Arjun(1995)におけるSholay(1975)をリスペクトしたダンス・ナンバルでわりとメインで踊っている老バックグラウンド・ダンサー嬢もチラリと登場。豪華なセット撮影のシャー・ルク(アビジート)版とカラフルなiMacをビーチに持ち出したロケ撮影のジュヒー(ジャスピンデール・ナールラー)版が見比べられる「I’m best」「トゥルーマン・ショー」(1998=米)のホリゾント&階段セットにインスパイアされたシャルミスター・ローイの美術が秀逸な「aur kya(それから何?)など爽快なポップ・ナンバルが並ぶ。

作詞はDil Chahta Hai(心が望んでる)(2001)などプロデュース業も盛んなジャーヴェード・アクタル、台詞はイエス・ボスYes Boss(1998)の他、Khoobsurat(見目美しき)(1999)で監督デビューを果たしたサンジャイ・チェル

そして、撮影は「ボンベイ」Bombay(1994)、「ディル・セ」などマニ・ラトナムご用達にしてAsoka(アショーカ)(2001)を監督したサントーシュ・シヴァンである。

サポーティングは、アジャイの父親にハイデール・アリー、母親にスミター・ジャイカル、KTVのオーナー、カーカー役にサティーシュ・シャー、ギャラクシーTVのチノイ役は定番敵役のダリープ・タヒル、チーフ・ミニスター役にSarfarosh(命知らず)(1999)のゴーヴィンド・ナームデーオー、野党リーダーのラーマカーント役にダンディなシャクティ・カプール、アジャイらの民衆デモを阻止しようとするインスペクター役にヴィシュワジート・プラダーン「ラジュー〜」では日和見な上司役だったPukar(叫び)(2000)のアンジャン・スリワスターワが今回は義のある警察署長役で好演。

そして、マフィアのボスにシャラート・サクセーナ、モーハンの妻ラクシュミー役にニーナー・クルカルニー、その他、「ラジュー〜」の面々も見られるのがうれしい。

本作で初めてプロデュースに関わったジュヒーによれば、そもそも「ラジュー〜」の撮影現場がめちゃめちゃ楽しく、その雰囲気はトリオが再結集した「イエス・ボス」でも変わらなかったため、ある時、アズィーズからの提案でラジュー・トリオによる自主プロデュース作品を作ることになったと言う。

もっとも、興行成績が今ひとつであったため、シャー・ルクとジュヒーの次なるプロジェクトであるAsoka(アショーカ)(2001)では、リーズナブルなプライスで海外配給権をさばかなければならなかったとか。

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そうそう、エンディング・クレディットではNGシーンも見られる。


*追記 2010,10,09
>共同で設立した製作会社「ドリームズ・アンリミテッド」
第2弾としてChalte Chalte(2003)を製作。この作品では共同製作者のジュヒーが妊娠中だったため、ラーニー・ムカルジーSRK作品のファースト・ヒロインに昇格!

シャー・ルクとジュヒーは別プロダクションを起こしてAsoka(2001)を製作するが、この時のエグゼクティブ・プロデューサー(ハリウッドの場合、大抵は名前だけ)を務めたサンジーヴ・チャーウラーはジュヒーの兄弟。

その後、シャー・ルクは奥方のガウリー名義でレッド・チリース・エンターテイメントを設立し、「Main Hoon Na(私がいるから)」(2004)から継続的な映画制作を押し進める。サンジーヴはそのすべてに関わり、Om Shanti Om」オーム・シャンティ・オーム(2007)では劇中プロデューサー役で出演している。

ちなみに、ジュヒーは夫と共に、SRKのレッド・チリースとインドのクリケット・プロ・リーグ「コルカタ・ナイト・ライダーズ」の共同オーナーでもある。

>アズィーズ・ミルザー
シャー・ルクがドリームズ・アンリミテッドとは別に制作会社を興したのは、アズィーズと不仲になったわけでなく、もともと寡作だったアズィーズのスタンスにあるようだ。

アズィーズは妻を亡くしてからしばらく暮らしを静かにしていたが、シャーヒド・カプール主演でKismat Konnection(運命のコネクション)」(2008)を監督。といっても氣持ちはシャー・ルクにあるらしく、ラジュー出世する」Raju Ban Gaya Gentlman(1992)の焼き直しと言えるストーリーであった。

アズィーズはシャー・ルクの一家にとって父親的な存在でもあるようで、シャー・ルクの息子アルヤーンと、まるで孫と寛ぐような姿がシャー・ルクのドキュメンタリー「Inner / Outer World」で見ることが出来る。

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