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Don 2(2011)#312

2012.06.15
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!
Don 2

Reliance正規盤はDVD2枚組。

「Don 2」★★★

製作・原案・脚本・台詞・監督:ファルハーン・アクタル/製作:リティーシュ・シドゥワーニー、シャー・ルク・カーン/脚本:アミート・メーヘター、アムリーシュ・シャー/脚本監修:ホーニー・イラーニー/作詞:ジャーヴェード・アクタル/音楽:シャンカル、エヘサーン&ローイ/アクション:アクション・コンセプト(ジャーヴェード-アエジャズ)/撮影:ジェイソン・ウェスト/振付監督:ヴァイバーヴィー・メルチャント/衣装デザイン:ジャイメル・オーデードラ/プロダクション・デザイン:T・P・アビド/VFX:ピクシオン/編集:アーナンド・スバヤー

出演:シャー・ルク・カーン、プリヤンカー・チョープラー、ボーマン・イラーニー、クナール・カプール、アリー・カーン、ナワーブ・シャー、サヒール・シュロフ、フローリアン・ルーカス、オーム・プリー
特別出演:リティク・ローシャン、ラーラー・ダッタ

STORY
前作で無事逃げ延びたドン(シャー・ルク)は、またしても世界中のアンダーワールドから命を狙われていた。その後、インター・ポールの警官となっていたローマー(プリヤンカー)と、その上司マリック(オーム)の前にドンが現れ、逮捕される。しかし、それは刑務所に服役中のヴァルダン(ボーマン)を脱獄させ、ドイツ中央銀行を襲う計画に引き込むためだった…。

Don 2

(c) Excel Entertainment, 2011.

Revie-U
アミターブ・バッチャン主演Don(1978)のリメイク版DON」Don(2006)の続編ではあるが、登場人物を継承したファルハーン・アクタルのオリジナル・ストーリーとなっている。
本来、大本の脚本家デュオ、サリーム-ジャーヴェードの原作権が生き、その旨しっかりクレジットされるはずだが、見当たらないところを見ると、ファルハーンの父ジャーヴェード・アクタルサルマーン・カーンの父サリーム・カーンが仲違いしてコンビ解消したため、あえて原作権を放棄したのだろう。そのせいか、ジャーヴェード・アクタルにしても単に作詞家としてクレジットされているだけだ。
(因みにパート1「DON」のオープニング・タイトルバックでも<サリーム-ジャーヴェード>のコンビ名が左右に開くドアに記されており、<決別>を強く示唆しているのがインド人らしい)

さて、その本作であるが、パート1から引き継がれたキャラクターは、ドンに復讐を誓うヒロイン、ローマー役に7 Khoon Maaf(7人殺しを許して)」(2011)のプリヤンカー・チョープラーが続投。ストーリー上、あまり目立った立ち位置でないが、終盤、前作で習得したマーシャル・アーツを披露。
ドンが囚われの身となって刑務所にまで入り込み、接触を求めるのが前作で彼を追い詰めようとしたヴァルダン役に3 Idiots」3バカに乾杯!(2009)のボーマン・イラーニー。熊のような大柄で智恵のまわる悪役タイプだが、今ひとつ。
ローマーの上司となるインターポールのマリック役に、しぶとさの増したDabangg(大胆不敵)」(2010)のオーム・プリーが配役されている。演技の質としては、シリアスに徹したKurbaan(犠牲)」(2009)路線。

新たなキャラクターとして、ドンの恋人アイェーシャー役にHousefull(満員御礼)」(2010)のラーラー・ダッタが特別出演。ミス・ワールド2000のプリヤンカーとは久々の共演で、これでミス・ユニヴァース2000が揃った事になる。本編中、唯一のダンス・ナンバルとなるzaraa dil ko thaam loで踊り子として登場するが、その後に見せるボブカットのスーツ姿が凛々しく、ドイツのパーティー・シーンでのドレスアップしたゴージャスさがソー・クール。ただし、アクション・シーンに絡まない特別出演に終わっているのが残念。
今回外されたアルジュン・ラームパールの代わりと言えそうな、ハッカーとしてドンにリクルートされるサミール役が端正なマスクのWelcome to Sajjanpur」ようこそ、サッジャンプルへ(2008)のクナール・カプール。持ち前の<いい人>ぶりが脚本にツイストを加える好キャスティングと言えよう。
その他、悪役にEscape from Taliban(2003)のナワーブ・シャー、DZB(ドイツ中央銀行)の副頭取ディワーン役に同じく「Escape from Taliban」や、米「トレイター 大国の敵<未公開>」(2008)、米「マイティ・ハート」など海外作品の多いアリー・カーンを配役。ナワーブは相変わらずだが、アリー・カーンはまずまずの雰囲氣を醸している。

冒頭、ドンと会話している声は前作で恋人役だったイーシャー・コーッピカルのもの(今回は声だけのカメオ主演で、ノン・クレジット。ボリウッドの場合、通常、カメオでも献辞が入るが、今回はなし)。
シャー・ルク・カーンも一応、プロデューサーとしてクレジットされているが、彼のプロダクション、レッド・チリース・エンターテイメントと提携している訳ではないので、単にギャラが配収の割合という契約なのか、宣伝ウケするためだろう(ハリウッドでも俳優を持ち上げて起用する時、名目上<エグゼクティヴ・プロデューサー>とクレジットする事でギャラをセーブしたりする)。

シャー・ルクは役作りに髭面などいくつかメイクを変えてはいるが、演技としてはいつもの通り。シャー・ルク・ファンにとっては彼の一挙一動、台詞のひとつひとつに見も心も震えるだろうが、いくら凄んでも<人格者>たる素顔のシャー・ルクが見て取れるため、今ひとつリアリティーが感じられないのが玉に瑕。

Don 2

(c) Excel Entertainment, 2011.

前作公開後、程なくして続編のアナウンスがされた折、早い製作が期待されたものの、監督のファルハーン・アクタルがなんとRock On!!(2008)で俳優デビューしてしまったために(映画妄想狂の出たがりインド人が多いボリウッドではしばしば起きうる)、5年後の公開となった。
しかしながら、前作では評価されたスタイリッシュな演出もどこ吹く風、本作ではアベレージといった印象だ。傑作を幾つも誇ったサリーム-ジャーヴェードの脚本から離れたオリジナル・ストーリーという事もあるだろうが、ハリウッド・サスペンス・アクションでもよくあるレベルに留まっている。
前作ではアンダーワールドの<ドン>と、瓜二つなために替え玉潜入する事となる善良な青年というふたつのキャラクターがあったために、極悪非道な<ドン>が引き立てられていたが、シリーズ化した本作では悪の側面だけで成り立たせる訳にもいかず、シャー・ルクのヒーロー性やロマンス感も加味せざるを得ず、冷酷緻密な<ドン>のキャラクターが<鈍化>してしまっている。
また、ローマーに熱を上げる同僚刑事があっさりモデル顔(これがデビューのサヒール・シュロフ)の配役だけでなく、そののスケッチも中途半端なために演出もキレに欠け、散漫に思うのは、やはりファルハーン・アクタル自身、人生経験に深みが足りないためだろう。

この傾向は、音楽面でも感じる。
スラムドッグ$ミリオネアaaj ki raat(今宵は)」が引用されたサントラCDにまで収録された前作と異なり、シャンカル、エヘサーン&ローイもどこか退屈。これではセールス的に厳しいとサントラ販売会社T・シリーズが判断したのか、前作ソングmujhko pehchaanloのプロモをわざわざ別撮影のオリジナルで作っているほどだ。
劇中の、いわゆるフィルミー・ナンバルも掴みのスローなzaraa dil ko thaam loに留まり、肩透かしを喰う。10年代に入ってボリウッド・ソングはつまらなくなったと言われるが、こうまで捻り技の楽曲を用意されると、ゼロ年代にアゲアゲデコで煽りまくったクラブ系サウンドがガキっぽくて今更やってられないとばかり、思っているのだろうか。

全体にボリウッド・ネタも少ない中で、ニンマリさせられるのは、ドイツのパーティー会場でドンの<変相>として登場する某スター。どことなくシャー・ルク本人より雰囲氣を醸しているので彼バージョンの<ドン>も見てみたいところ。

リビエラ、タイという設定も加え、ドイツ、マレーシア、チューリッヒでロケーションを展開したスケールは、青息吐息で海外ロケをなんとか敢行する日本のテレビ映画とは段違いのゴージャスな出来で、さすがボリウッドと言えよう。
日本企業は相変わらずボリウッドに疎いが、ベルリンでの派手なカーチェイス用にシャー・ルクがブランド・アンバサダーを務める韓国のヒュンダイ(現代自動車)が2台の高級車を提供。そのスタイリングからして<日本車以上>をアピールしている。

Don 2

(c) Excel Entertainment, 2011.

ラストでシャー・ルクが乗るバイクのナンバーが「DON 3」となっていて、パート3に含みを持たせている。
その前に期待したいのは、プリヤンカーが引き続きヒロインを務める「Krrish 3」(2013)。こちらも「Don 2」同様、製作が延び延びとなりファンをやきもきさせていたが、時流に乗った3D作品という事でモチベーションが上がり、2013年1月公開目標で進行中。
プリヤンカーとリティクは本年1月の「Agneepath(炎の路)」(2012)が好成績。旧作タイトル頂きの新作「Zanjeer 2.0(鎖)」(2013)やシャーム・ベネガル監督の踊り子物「Chamki Chameli」(2012)のプリヤンカーも期待。

シャー・ルク主演作ではプリヤンカーもゲスト出演(笑)しているファミリーSFRa.One(2011)が「ラ・ワン」の邦題で8月4日(土)より東京都写真美術館ホール、他全国ロードショーするという。
新作ではヤシュ・チョープラーの監督作でカトリーナー・ケイフ共演「London Ishq(ロンドンの恋)」の他、サンジャイ・リーラー・バンサーリー監督作「Bajirao Mastani」(共演はカリーナーラーニーレーカー)、セルフ・プロデュースの「Chennai Express」などがアナウンスされている。
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