Luv Ka The End(2011)#311

ヤシュ・ラージ・フィルムズ正規盤はオリジナルの赤ケース入り。
「Luv Ka The End
(ラヴのジ・エンド)」★★★☆
ラヴ・カー・ジ・エンド
提供:アディティヤ・チョープラー/原案・製作:アシーシュ・パテール/監督:バンピー/脚本・台詞:ローイ・シーガル、シーナーズ・テレーズリーワーラー/台詞:ニキル・ヴヤス/撮影:アディル・アフサル/作詞:アミターブ・バッタチャルヤー/音楽・背景音楽:ラーム・サムパト/振付:アディル・シャイク、サンジャイ・シェッティー、ヒテーシュ・ケーワルヤー、ヌプル・バールガワー/プロダクション・デザイン:マドゥー・サルカル/衣装デザイン:ソニア-トミー/アクション監督:パルヴェーズ-フェーローズ/VFX:ターター・エルクシーVCL/編集:ソォーラブ・クルカルニー
出演:シュラーダー・カプール、ターハ・シャー(新人)、プシュティー・S、スリージター・デー、イロール・ピーター・マークス、メヘルザン・B・マヅダ、ラーフル・パルダサニー、ジャンナット・ズベイル・ラーマニー、リヤー・バムニヤル、ネーハー・ゲーロート、ラワニャー・ジャイン、マハーバヌー・モディ・コトワル
特別出演:アルチャナー・プーラン・スィン、シーナーズ・テレーズリーワーラー、アルジュン・サブローク、アリー・ザッファル
公開日:2011年5月6日(日本未公開)

(c)Y-Flms, 2011.
STORY
JKならぬJC(ジュニア・カレッジ)のリアー(シュラーダー)は18歳の誕生日に人氣歌手<フレディー・カプール>のコンサートをボーイフレンドのラヴ(ターハ)から誘われる。しかし、ラヴが学園イチのナンパ師でネットの隠れリアリティー・ショー<BBC(ビリオネア・ボーイズ・クラブ)>でリアーのバージン攻略を賭けている事を知って仕返しに乗り出す!
Revie-U
マイナー俳優主演のフロップ作で、パッとしないジャケット・デザインとあって長らく食指が動かなかったものの、いざ観てみれば、どうしてどうして、これがなかなかよく出来ており、センスの良さを感じてしまう。やはり映画は観てみなければ判断出来ない、と再確認した次第。
10年代に入ってサイーフ・アリー・カーンやラーニー・ムカルジーを看板にしたゴージャス路線から一転、先鋭な切り口の小粒ニュー・ストリーム系にシフトしたかに見えたヤシュ・ラージ・フィルムズだが、早くもカトリーナー・ケイフを連続して迎え大作連打に回帰。
しかし、そこは商才に長けたアディティヤ・チョープラーだけあり、若手俳優を起用した今どきのマイナー作品を手がける系列プロダクション F-Filmsを立ち上げ、2011年だけでも本作、「Mujhse Fraaandship Karoge(私とトォォォモダチになって)」(2011)、「Virus Diwan」(2011)の3本を立て続けにリリース(公開)。もちろん、テリウッドと称され沸きに沸くインドTVのオンエアを含めソフト本数を稼ぐ目的もあろう。
もっとも、ストーリーは例によって聖林「モテる男のコロし方<未公開>」の下敷き。原版では単なる三股止まりだが、テリウッドで流行のリアリティー・ショーを絡めている点が焼き直しの追加アイデア(と言っても、三人仲間の母親が若作りのセクシーという設定はそのままだったりする)。

(c)Y-Flms, 2011.
ヒロインを演じるシュラーダー・カプールは、アミターブ・バッチャン主演「Teen Patti(スリー・カード)」(2010)の端役でスクリーン・デビューし、本作で主演に昇格。<カプール>はカプールでも、カリーナー・カプールの名門カプール家でなく、なんとシャクティー・カプールの愛娘!
ハリウッドのようにいよいよヒロインも等身大(十人並みとも言う)の時代に突入か。
芝居は悪くなく、演出の良さも手伝って物語を引きつける力は感じられ、見事、(米Fox Sarchlight的な)ニューストリームや小粒アート系を対象としたStardust Searchlight Awardsで主演女優賞を獲得!
ただ、ラヴが乗り回すジャグァーSを叩き潰したり、挙げ句の果ては酩酊させた後にタトゥーを勝手に入れる等、仕返しに燃えるあまり性格悪そうに見えてしまう…。

(c)Y-Flms, 2011.
脚本・台詞には、「Radio」(2009)のヒロイン、シーナーズ・テレーズリーワーラーが参加。「あんた、二重アゴよ。チューイングガム噛んでエクセサイズしなきゃ」等、女子らしい生きた台詞が実にキャッチー。
自ら生徒とデキてる女教師役としてカメオ出演する度胸の良さも嬉しい。

(c)Y-Flms, 2011.
監督のバンピーは、これがデビュー作。リアーたちに<BBC>の存在をレクチャーするネット&メタル・マニアとして出演しているのが、いかにも出たがりのインド人監督らしい。
ちなんにこのスケッチで、戸口のエンター・パスワードとして使われる「jumma chumma de de(キス・ミー・ベイビー)」(スデーシュ・ボースレー&カヴィター・クリシュナムールティー)は、まだ白いヒゲを蓄えていなかった頃のアミターブ主演「Hum」タイガー 炎の三兄弟(1991)におけるメガヒットナンバル。インド人ならついニヤニヤしてしまうパスワードだ。

(c)Y-Flms, 2011.
サポーティングは、姉をユスリあげるおしゃまな妹ミンティー役ジャンナット・ズベイル・ラーマニー、おデブな親友役プシュティー・シャクティ(子役出身だけあって芸達者。兄は「Kaho Naa…Pyaar Hai」、「Golmaal」のヴラージェーシュ・ヒルジー)、恋のライバルとなるセクシー嫌味女ナターシャー役のリヤー・バムニヤル等、キャラクターぴったりの配役も抜群。近年、ハリウッドに倣って<キャスティング・ディレクター>がクレジットされるようになったが、これだけそつなく仕事をしてくれるのなら申し分ない。
また、父親役に「Na Tum Jaano Na Hum(君も僕も知らずして)」(2002)、「Neal’N’Nikki」(2005)の監督アルジュン・サブロークがカメオ出演。「DDLJ」(1995)でカラン・ジョハールとシャー・ルク・カーンの友人役で出演していた彼だが、最近はすっかり演出欲は失せたのか、ヤシュラジ作品に関わりつつも端役で楽しんでいる様子。
そして、何より本作の魅力を高めているのが、音楽監督とバックグランド・スコアを兼任したラーム・サムパトのポップな仕事ぶりだろう。昨年は「Delhi Belly」(2011)も発注されるなど、このところ急上昇。本年はアーミル・カーンがファルハーン・アクタルと組んだ製作・主演「Talaash(捜索)」(2012)も待機中!
新鋭アディティー・スィン・シャルマーの可憐な歌声が切なさを解き放つガーリー・ロック・チューンのタイトル・ナンバル「luv ka the end」、Tシャツ・コマ撮りナンバル(プロダクション・バナーとややかぶる)ポップ・ナンバル「freak out」、恋の夜を夢見る乙女チックなファンシー・ナンバル「tonight」など多彩なアレンジが施されている。

(c)Y-Flms, 2011.
中でも、注目はアリー・ザッファルをフィーチャルした「F.U.N. fun funaa(悦しんで昇天)」だ。本家ヤシュ・ラジ製作「Mere Brother Ki Dulhan(オレの兄貴の花嫁)」(2011)の前振りとして人氣歌手<フレディー・カプール>役で終盤にカメオ出演させている事から、アディティヤがアリーを高く買っている事が伺われる。本業がシンガーだけあって、ノリのよいアリーのシャフトもキマっている。
(先のStardust Awardsではスーパースター・オブ・トゥモロウ賞を「Mere Brother Ki Dulhan」で受賞!)
ボリウッドの小粒化が心配されたが、さすが12億の民を擁するだけあって、新しい才能が迸(ほとばし)るインド映画界には感心してしまう。
(最も斬新だったのが、マンガで展開するY-Filmsのプロダクション・バナーだったりするが)。
この、軽快に疾走するボリウッドの流れに日本市場も正しく追いつける日が来るのを祈るばかりだ。
なお、YouTubeにて公式HDストリーミングが250円で鑑賞できる。
http://www.youtube.com/movie?v=LTuSlUwdRo4&ob=av1n&feature=mv_sr
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