Bodyguard(2011)#306

Reliance正規盤はPケース+紙カバー・ジャケット付き。
「Bodyguard」★★★★
製作・衣装:アルヴィラー・アグニホートリー/製作:アトゥール・アグニホートリー/原案・脚本・台詞・監督:シディーク/脚本監修:サリーム・カーン/脚本・台詞:J・P・チョウクセイ、キラン・コートリアル/追加台詞:アローク・ウパドゥヤヤ/撮影:セージャル・シャー/作詞:シャビル・アフメド、ニーレーシュ・ミスラー/音楽:ヒメーシュ・リシャームミヤー、プリータム(I love you)/背景音楽:サンディープ・シロードカル/振付:ヴァイバヴィー・メルチャント、ガネーシュ・アチャルヤー、ムダッサル・カーン、ヴィシュヌ・デーヴァ/プロモ監督(desi beats):スミット・ダット/美術監督:アンゲリカ・モニカ・ボーウミック/アクション監督:S・ヴィジャヤン/アクション・コーディネーター:プラナーヴ・V・ディワル/衣装デザイン:アシュレイ・レベッロー、マニーシュ・マルホートラ(forカリーナー)/VFX:ヴェンサト・テック・サービス、ピクシオン/編集:サンジャイ・サンクラー
出演:サルマーン・カーン、カリーナー・カプール、ラージ・バッバル、アスラーニー、ヴィドゥヤー・スィナー、ヘーゼル・キーチ、チェータン・ハンスラージ、サリーム・ベイグ、モーハン・カプール、マスタル・モード・ファイザン、ラジャト・ラーワイル(新人)
友情出演:カトリーナー・ケイフ
カメオ出演:カリシュマー・カプール
特別出演:アディティヤ・パンチョリー、マヘーシュ・マンジュレーカル、シャラート・サクセーナ
2011年8月31日世界公開(日本以外)

(c)Reliance Entertainment, 2011.
STORY
凄腕ボディガードのラヴリー・スィン(サルマーン)は、領主サトラージ(ラージ・バッバル)のひとり娘デヴィヤー(カリーナー)が狙われているとの事から彼女を護衛する任務を受けるが…。
Revie-U
「Wanted」(2009)、「Dabangg(大胆不敵)」(2010)と再ブレイク中のサルマーン・カーン。本作「Bodyguard」も流行のサウス・テイスト仕上げで、ボリウッドの歴代オープニング・デイ&ウィーク記録No.1を獲得!

(c)Reliance Entertainment, 2011.
「ボディガード」というと何やらケビン・コスナー&ホイットニー・ヒューストンのハリウッド版を思い出すが、本作のオリジナルはモリウッド(マラヤーラム)版「Bodyguard」(2010)。
これがまた日本の安直なテレビ局が喜びそうなコッテリヒゲオヤジが主演で、ボリウッド・ファンからするとトホホな作りながら、オリジナルの脚本・監督も務めたシディークが自らメガホンを取り、メジャー作品に相応しい予算とテイストでセルフ・リメイドし、ボリウッド進出を果たした。
ちなみにこの他、タミル、テルグ、バンゴーリー、カンナダでもリメイドされている。
リージョナル(地方)映画の監督がヒット作を自ら手がけボリウッドに乗り込むパターンは、アーミル・カーン主演でA級作品に仕立て直した「Ghajini」(2008)が名高い。
本作の監督シディークが思いがけない純愛を終幕に用意しているのも、このリメイド版「Ghajini」を強く意識しての事だろう(「Ghajini」はオリジナル・タミル版が習作と思えるほど哀愁を増し映画として完成度が高めめられている)。
なお、本作のクライマックスにおける水たまりでのアクションは、タミル版「Ghajini」からのインスパイア。
幕間的にサウス・テイストの大仰なアクションが入るものの、基本のストーリー・ラインは、プネーのカレッジに通うヒロインが堅物ボディガードを偽の女子大生<チャーヤー>を装って懐柔してゆくうちに恋に落ちるというもの。
この間、他愛もないスケッチが展開するワケだが、決して飽きさせないのは大物サルマーンとカリーナーの技量に負うところが大きい。なにしろ、あのサルマーンが忠誠を誓うボディガードとして徹底した下僕ぶりを見せるのだから愉快。

(c)Reliance Entertainment, 2011.
そのヒロイン、デヴィヤーに扮するのが、カリーナー・カプール。「Ra.One」(2011)ではあまり活かされなかった彼女だが、本作ではいわゆるツンデレぶりが実に愛らしく、カリーナー・ファンは必見。
(デヴィヤーが悪戯で仕掛けるチャーヤーの<電話声>が、なんとカリーナーの実姉カリシュマー! 「Aashiq(愛しき人)」などで見せたオチャメぶりからして嬉しいサプライズとなっている)

(c)Reliance Entertainment, 2011.
そして、デヴィヤーの親友役<マーヤー>を演ずるのが、英エセックス生まれのハーフ(母がモーリシャス系インド人)でこれがボリウッド・デビューとなるヘーゼル・キーチ。
モデルとして活躍した後、シャー・ルク・カーン主演「DON」(2006)の、つまりはアミターブ・バッチャン主演「Don」(1975)を正式リメイクしたタミル映画「Billa」(2007)において、ドンの銃から弾を抜き出す女、つまりはシャー・ルク版でカリーナーが演じたカーミニー役としてローズ・ダウン名義で出演しており、カリーナーと奇妙な縁を感じる(アイテム・ナンバル「sei ethavathu sei」でのダンスはイマイチ)。
この「Billa」では南インド仕様の浅黒く焼いた肌で演じているが、本作では北インド好みの透き通った白い肌で見るからにハーフ。
さて、サルマーン主演でタイトルが「ボディガード」というと、もう底の浅いアクション・コメディを連想しそうになるが、ロマンティック・スターとして名を馳せた彼の真価が存分に発揮されており、思わぬ収穫と言えよう(肉体派スターとしても一粒で二度美味しい!)。

(c)Reliance Entertainment, 2011.
デヴィヤーは<チャーヤー>を装って、愚直なまでに堅物なボディガードに徹するラヴリーをからかうにつれ彼の純朴な心に打たれ、次第に想いを寄せるが悪戯の代償は大きく、それが哀しき恋の結末へと至るのだ。
脚本として秀逸なのは、ラヴ・ストーリーとしての真価がクライマックスのお子様アクションを済ませた後の、終幕として味わい深く配置されている事だ。
しかも、インド的な主従の忠義に縛られた関係が恋の切なさを増強する仕掛けであると同時に名作「Kuch Kuch Hota Hai」何かが起きてる(1998)のサルマーン版とも言える構成がこれまたボリウッド・ファンとしてはニヤリとさせられ感動がより一層深くなる。
ここでは核心には触れないが、偽名の<チャーヤー>は、かの「ディル・セ 心から」Dil Se..(1998)の名ナンバル「chaiyaa chaiyaa」と同じく「影」を、親友<マーヤー>は「幻影」、転じて「恋愛」を意味する事を示しておこう。

(c)Reliance Entertainment, 2011.
サポーティングは、領主サトラージ・ラーナー役に「Salma(サルマ)」(1985)のラージ・バッバル。実際に上院議員を務めるだけあって役柄に相応しい風格を見せる。
サトラージの執務役に「Sholay」炎(1975)などの名脇役アスラーニー。
ラヴリーのボス役がシャラート・サクセーナ。
デヴィヤーの命を狙うグンダーにマヘーシュ・マンジュレーカルとアディティヤ・パンチョリー。マヘーシュは「Wanted」、「Dabangg」といい味を見せたが本作では添え物悪役に留まる。
アディティヤは「Tarkeib(方法)」(2000)や「Musafir(旅人)」(2004)など風采のない二流俳優で、久々に銀幕復帰した「Striker」(2010)で目も醒める二枚目ぶりに驚いたものだが、本作では体重が戻ったせいか、またも二流の風合いに戻ってしまっているのが残念。

(c)Reliance Entertainment, 2011.
音楽監督にはサルマーンが一本立ちに引き立てたヒメーシュ・リシャームミヤーを、またゲスト・コンポーザーとしてプリータムをフィーチャル。
ヒメーシュはシンガーとして一世を風靡したゼロ年代半ばの破竹系サウンドを廃し「音楽監督」の仕事に徹底しているのが佳い。
タイトル・ナンバル「bodyguard」ではカトリーナ・ケイフが彼女自身として特別出演。華麗なステージを見る彼女はこれまた最高。
メロー・ナンバル「teri meri(君と私の)」におけるラーハト・ファテー・アリー・ハーンの運命を感じさせる深い歌声と、哀愁を染め上げるライティングに腐心したセージャル・シャーの撮影が心を摑む事請け合い。
地方映画の秀作を存分に取り込みながら、メジャー作品としてリメイドする事で魅力を倍増してゆくボリウッドの実力には感嘆するばかりだ。
ただし、純愛描写に心打たれるかどうかは、インド的な心情の理解度に左右されるため、サブキャラクターの視点から見てしまうと「私の人生返して!」となり兼ねない。
どれだけ想いを投影出来るかが、ボリウッドを楽しむにあたっての<たしなみ>と言えよう。
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