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Ra.One(2011)#305

2012.01.19
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!
Ra.One

Eros Entertainment 正規盤は化粧箱入り。

「Ra.One(ラーワン)」★★★☆
製作:ガウリー・カーン/共同製作:サンジーヴ・チャーウラー/原案・脚本・監督:アヌバーヴ・スィナー/脚本・台詞:カニカー・ディローン/脚本:ダヴィド・ベーヌロー、ムシュターク・シャイク/台詞:ニランジャン・アイェンガー/撮影監督:ニコラ・ペコリーニ/追加撮影:マニカンダン/作詞:パンチー・ジャローンヴィー、ヴィシャール・ダドラーニー、クマール、アンヴィター・ダット/音楽&背景音楽:ヴィシャール&シェーカル/振付:ガネーシュ・ヘーグデー、フェーローズ・カーン/プロダクション・デザイン:サブー・シリル、マーカス・ウーキー(UK)/VFXスーパーバイザー;ジェフリー・クレイザー、ハレーシュ・ヒンゴーラーニー/VFXプロデューサー:ケーイタン・ヤーダウ/配役監督:シャヌー・シャルマー/リード・スタント・コーディネーター:アンドリュー・ギル、スピロー・ラザトス/スタント・コーディネーター(India)パルヴェーズ&フェローズ/衣装:アナイター・シュロフ・アダジャニアー、マニーシュ・マルホートラ(for カリーナー)、ナレーシュ・ローヒラー、マスクリン、ロバート・リーヴァー(UK)/Ra.One & G.Oneスーツ:ロベルト・クルツマン、ティム・フラティー(デザイン)/デジタリー・リクリエイション:レッド・チリース・VFX/編集:サンジャイ・シャルマー、マーティン・ワルシュ

出演:シャー・ルク・カーン、カリーナー・カプール、アルジュン・ラームパール、アルマーン・ヴァルマー(新人)、シャーハナー・ゴースワーミー、トム・ウー、ダリープ・タヒル、サティーシュ・シャー、スレーシュ・メノン
特別出演:サンジャイ・ダット、プリヤンカー・チョープラー、アミターブ・バッチャン(ナレーター)、ラジニーカーント
2011年10月26日世界公開(日本公開:2012年8月4日、写真美術館ホール、他全国ロードショー)

STORY
ロンドン在住のハイテク少年プラティーク(アルマーン)は、ゲーム・プログラマーの父親シェーカル(シャー・ルク)のオヤジギャグにうんざり。シェーカルは反抗期に入った息子に取り込むため、悪役を主人公にした対戦ゲーム「Ra.one」プロジェクトを進める。しかし、プログラム内にあったラーワン(アルジュン)が対戦相手のルシファーを求め実在化してしまい…。

Revie-U
<キング・オブ・ボリウッド>シャー・ルク・カーンが自社レッド・チリース・エンターテイメントの社運を賭けて製作したSFスーパーヒーロー物。プロデューサーとしてクレジットされているガウリー・カーンはシャー・ルク夫人で、もちろんボリウッドのファミリー・プロダクション・システムによくある名前貸し。

タイトルの「Ra.One」は劇中のゲーム・プログラム「ランダム・アクセス・ヴァージョン・ワン」に当てているが、もちろん、ヒンドゥー神話「ラーマヤナ」の魔物Raavan」(ラーヴァン=ラーワン)にかけている。
対するヒーロー「G.one」生命あるものJeevan(ジーヴァン=ジーワン)と、いかにもボリウッドらしい対にニンマリ。

Ra.One

(c)Red Chillies Entertainment, 2011.

ヒロインはスタローンinハリウッド・トラブル」Khambakkht Ishq(2010)のカリーナー・カプール
きっと、うまくいく」3Idiots(2009)のようなハマリ役ではない単なる添え物ヒロインではあるが、アップに耐えられる肌の美しさが素晴らしい。
初めから<妻/母>という役柄がいかにもボリウッドらしいが、シャー・ルクの相手役としてはスクリーン・ケミストリーが薄いカリーナーとしてはよい設定だろう。

そして、目を引くのがスキンヘッドで臨んだラーワン役のアルジュン・ラームパールだ。
モデル出身のアルジュンは、ミレニアム以降、リティク・ローシャンに対抗する新人スターとして期待されたもの、啼かず飛ばず。DON(2006)などでサブリードにシフトして俳優として磨きをかけた事もあって、本作ではシャー・ルクのお子様ジーワンを喰う怪演を見せ、これからのAwardsシーズンで悪役賞受賞が楽しみ。

Ra.One

(c)Red Chillies Entertainment, 2011.

ところで、ラーワンとジーワンの対決シーンとなるロケーションは、ピンク・フロイドのアルバム「アニマルズ」で名高い英バターシー発電所。最近では「トゥモロー・ワールド」(’2006=英米)にもそのままスケッチされている。
ここでキャノン・バースティングで車がスピンを掛けられて吹き飛ぶアクション・シーンが繰り広げられる訳だが、パワーステーションのエナジーを吸いまくるなどもうひと捻り欲しかった。
(ただ、一時玉砕したラーワンの分子がアスファルトに埋め込まれてしまう描写は、時節柄、二本松市で放射性物質を含むセメントがマンションや道路に使用された事がオーバーラップしてしまう)

また、後半のチェトラパティ・シヴァジー国際空港(ムンバイー)外観は、サンジャイ・ダット主演Jung(闘い)」(2000)に病院として使われていたテルグ映画の牙城ラモジ・フィルム・シティにある恒常オープン・セットで久々のボリウッド登場となる。
なお、提携した航空会社キングフィッシャーのアンバサダーがディピカー・パードゥコーンであるからチラリとカメオ出演して欲しかった。

ボリウッド・ネタでは、プロローグにサンジャイ・ダット(Khal Nayak(悪役)」)とプリヤンカー・チョープラーが特別出演。
冒頭一番に献辞が捧げられている<インド映画の帝王>アミターブ・バッチャンがゲーム「Ra.One」のプロモ・ナレーターとして声の出演(シャー・ルクとアミターブは長らく対立していただけに、帝王を意味する<Shahanshah>が実に心憎い)。
と、同時にこれは次に続く地方映画扱いされるコリウッド(タミル映画)の<Superstar>ラジニーカーントとの<格差>を示す意味もある。

Ra.One

(c)Red Chillies Entertainment, 2011.

シャー・ルクが渾身で製作に望みながら、国内市場的には対製作規模で<フロップ>。リリース(公開)週こそトップ1の動員となったものの、間もなくランビール・カプール主演「Rock Star」(2011)に蹴落とされてしまった。
このへんは作品テイストがお子様向け(その割には下ネタが多い!)であることだけでなく、主人公を南インド人に設定(スブラマニアムは南のハイ・カースト名)し、さらに<スッパルスタル>ラジニーカーントが「Robot」そのままで特別出演するなど、南インド市場におもねった行為が北インドの観客にはむしろ小っ恥ずかしく感じられたためと思われる。

ボリウッドのクオリティ高いドラマに慣れた北インドの観客からすれば、やはり食い足りない出来であり、同じお子様向けのSFヒーロー物ならTaare Zameen Par(地上の星たち)」(2007)の天才子役ダルシェール・サファリーが主演したディズニー配給「Zokkomon」(2011)の方が割り切って楽しめる。

サポーティングは、シェーカルが勤めるゲーム会社のオーナーにPhir Bhi Dil Hai Hindustani(それでも心はインド人)」(2000)のダリープ・タヒル
シェーカルの同僚ジェニー役は、いつも以上に浅黒いサミーラー・レッディTaxi No.9211」でなくRock On!!(2008)で注目を浴びたシャーハナー・ゴースワーミーを起用。あまり活かされていないのが残念。
シェーカルの同僚でラーワンに乗っ取られる中国人<アカーシ>役が「沈黙の聖戦」、「リボルバー」や「バットマン・ビギンズ」、「トゥームレイダー2」などハリウッド・ベースで活動する中国系俳優トム・ウーが好演。「Krrish」(2006)のリティクをしのぐワイヤー・スタント・アクションを披露(役名が日本名・明石?なのに中国人という設定で、さらに「ジャッキー・チェンじゃない」という台詞が連発するのは、インド人にとって日本と中国がごっちゃになっている事への皮肉をこめたツイストなのか、単なる勘違いそのままなのか定かではない)。
その他、ムンバイー・シーンでの隣人アイヤール(南インド系の名前)役に「PBDHH」やMain Hoon Na(私がいるから)」(2004)などお馴染みのサティーシュ・シャー
空港スケッチのタクシーワーラーにおとぼけ役者スレーシュ・メノンAsoka)。
この場面でラーワンに拳銃を向けるどチンピラ役が、シャー・ルクの自伝アルバム「Still Reading Khan」を手がけ、「Main Hoon Na」のカメオ出演し、Om Shanti Om」オーム・シャンティ・オーム(2007)と本作の脚本として参加しているムスターク・シャイク
そして、「たとえ明日が来なくても」Kal Ho Naa Ho(2003)のぽっちゃり<スウィートゥー>役デルナーズ・パウルがクライマックス前の列車シーンで登場するなど、シャー・ルク組がしっかり顔を見せてくれるのがゼロ年代前半までのボリウッドらしい友情が感じられて嬉しい限り。
(さらにDDLJのユーロ同行者+「たとえ明日〜」のMBA講習生役で思わせぶりに姿を見せていたアナイター・シュロフ・アダジャニアーが衣装デザイン、カリーナーの衣装はカラン・ジョハールの<親友>でシャー・ルク作品を手がけ続けるマニーシュ・マルホートラが担当)

Ra.One

(c)Red Chillies Entertainment, 2011.

ボリウッドのトップ・メーカーとなったヴィシャール&シェーカルによる楽曲は、シャンカル・マハーデヴァンがプレイバックしている事もあり、時に音楽監督トリオ、シャンカル-イフサーン-ローイを連想させるが、米グラミー賞受賞の人氣シンガー、エイコンをフィーチャルしたchammak challo(マジックしよう)」など実にキャッチー。
もっとも、大枚はたいた「stand by me」の正式カバーdildaaraは、その必要性が感じられないが、英米の2世、3世のデシ(在外南アジア系)をそそるには有効か。
ちなみにジーワンのジングルとして作成された「リーラ〜♪」流れるバックスコアは、初めてスーパースターと呼ばれたラージェーシュ・カンナートゥインクルの父でアクシャイ・クマールの義父)主演「Apna Desh(我が国)」(1972)より、ムンターズが妖しく(ラージェーシュは怪しく)踊る伝説的ファンキー・ナンバルduniya mein logon koへの敬愛。

シャー・ルクは「Om Shanti Om」以降、すっかり定番となったダサキャラで生身のシェーカルと人造人間ジーワンを演じ分けているが、エンディング・クレジットに流れる睨みの利いたルックスからすると、お子様も含めたファミリー層をターゲットにソフトな作風に仕上げず、時代にマッチしたハードなヒーロー物で攻めて欲しかった。
実際、年末にリリースされた「DON」の続編「Don2」(2011)は、フロップした本作を尻目に全米マーケットでオープニング週で260万ドルと本作の166万ドルを大きく引き離し、<キング・オブ・ボリウッド>の面目を保ったと言えよう。
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Ra.One

Eros Entertainment 正規盤は3面見開きケース+DVD2枚組みセット。

*追記 2012,06,15
本年8月4日(土)より「ラ・ワン」の邦題にて東京都写真美術館ホール、他全国ロードショー。

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