Haan…Maine Bhi Pyaar Kiya(2002)#043
Haan…Maine Bhi Pyaar Kiya(はあ、私も愛を知りました・・・) 02.08.08 UP ★★★
ハーン・・・マイネー・ビー・ピャール・キヤー
製作:スニール・ダルシャン/ストーリー・監督・台詞:ダルメーシュ・ダルシャン/ストーリー・脚本・台詞:ラージ・スィンハー/台詞:ナシーム・ムクリ/撮影:W・B・ラーオ/詞:サミール/音楽:ナディーム-シュラワーン/衣装:マニーシュ・マルホートラ/伴奏音楽:スレンデール・ソーディー/アクション:アッバース/振付:ラージュー・カーン/美術:ビジョン・ダース・グプタ/編集:バーラト
出演:アクシャイ・クマール、カリシュマー・カプール、アビシェーク・バッチャン、カーダル・カーン、ヒマーニー・シヴプリー、シャクティ・カプール、ナヴニート・ニシャン、モーニーシュ・ベール、スプリヤー・カールニク、ウパスナー・スィン、ラザック・カーン、シモン・スィン
公開日:2002年2月15日(上半期トップ10ヒット!/日本未公開)
STORY
就職面接に出かけたプージャー(カリシュマー)は、同じく面接へ来ていたシヴ(アビシェーク)に社長令嬢を装い彼を追い返してしまう。無事就職できたものの、後から上司に就任したシヴに嘘がばれ、そのまま結婚! 幸せな新婚生活が始まったかと思いきや、なにかとシヴに女の影が付き纏い・・・遂にプージャーは離婚を申し立てる。デリーからボンベイへ移ったプージャーは、ふとしたことから映画スターのラージ(アクシャイ)の秘書となり・・・。
Revie-U
冒頭、アビシェーク・バッチャン扮するシヴが、就職祈願のために寺院を詣でる。祈るというより、シヴァ神に対して半ば文句を言ってるのだが、なにかとパッとしないアビシェーク自身が自分の不人氣を嘆いているように思えてならない(苦笑)。
シヴのキャラクターは、社長令嬢と思い込んだプージャーにかなりしつこく付き纏い、ほとんどストーカー。「Josh(激情)」(2000)が上映されてる映画館まで押しかけて、お構いなしにしゃべりまくる。いわゆる「ウットウシイ印度人」像。
例によって第1幕はツカミなので、大して意味のない行き当たりバッタリのコメディ・スケッチが続く。
「Hum Tumhare Hain Sanam(私はあなたの愛しい人)」(2002)同様、早々にふたりは結婚。カリシュマー・カプール演じるヒロイン、プージャーが結婚して彼女の名字もカプールになってしまうのが、ちょっと可笑しい。
さて、新婚早々のシヴは、やたらと女難続き。義兄夫婦とプージャーのサプライズ・バースディーを練りに遊園地へ行けば、大観覧車に謎の美女レイラーと相乗りの最中に停電。結局、彼女の誕生日をすっぽかして、朝帰り。しかもレイラーの落とした腕時計を彼女にプレゼントにしてしまう。それがバレたぐらいはまだ可愛い方で、スイスへハネムーンに出かければ大学時代の友人メグナーと再会。行きがかり上とはいえ、彼女と一夜を共にしてしまう!
遂にキレたプージャーは、彼を訴えて離婚を勝ち取る。
インドでバツイチの女性となれば前途多難に思われるが、心機一転、ボンベイへ移った彼女は、ファッション・デザイナーの友人ネーハーの勧めで、なんと映画スターのラージの秘書となる!
このラージがスターの身でありながら、寂しい独身生活を送っており(もちろん、家族はいるが)、いつしかプージャーに想いを寄せ、北インドの高級避暑地ナイニータールのロケ先で結婚式となる・・・。
ところが、このホテルのマネージャーがシヴだった! デリーでの仕事もジェネラル・マネージャーだったので、傷心のシヴが同じマネージャー職を探して転職していたというわけ。インド映画にしては意外に辻褄が合っている。
アビシェークは、どうも「陽氣な若者」向きではない。女難コメディならサルマーン・カーンあたりが適役なのだが、いかんせんアビシェークでは単なる無神経なだけに見えて仕方ない。スッ裸に毛布一枚包まってピョンピョン跳びはねるスイスの別荘シーンは、そのアホらしさが妙に似あっていたが・・・。
しかし、忘れた頃に現れる第3幕でのシリアスな役柄は、かつての「怒れる若者」アミターブ・バッチャンを彷彿とさせるものがある。もっとも思い沈むだけが取り柄では、いかにビッグBの御曹司とはいえ今後のボリウッドで生き残れるか問題だ(ちなみにスモールBと呼ばれている)。新作「Shararat(悪戯)」(2002)がリリースされたばかりだが、こちらも見事に大コケだった。
対するカリシュマーも、久しぶりの新作である。「Zubeudaa(ズベイダー)」(2001)での演技が評価され、Film fare Awards受賞となったものの、興行面では低迷。このところ映画雑誌でのグラビア露出度も少なく、妹のカリーナー・カプールの陰に隠れてなんとなく物寂しい昨今である。
そんな中、ひとり氣を吐いているのが、ラージ役のアクシャイ・クマール。「Dil To Pagar Hai(心狂おしく)」(1977)同様のセカンド・ヒーローだが、ほとんど特別出演のノリでスター役を楽しんでいる。
当然ながら、エンディングは予想通りの展開。
インドの恋愛は結婚から始まる、と言われるが、プージャーはシヴから「俺と結婚しろ」と言われれば「あら、まあ!」とすぐに結婚し、ラージがその氣で結婚式を段取れば花嫁衣装を着込んでしまうし、いざ結婚式の真っ最中に愛を熱唱するシヴが乗り込んでくればウンともスンとも言わないでそのままヨリを戻してしまう。そのへんの意志があまりにも薄弱であるが、マサーラー映画の脚本としてはこの程度で充分ということか。
サポーティングには、プージャーの兄にモーニーシュ・ベール、ジョン・キューザック似の妻に「Yaadein(思い出の数々)」(2001)のスプリヤー・カールニク。
ラージの父に、シェーカル・カプール風髭メイクのカーダル・カーン。今回は台詞を担当せず、出演のみ。ラージのお付は、チンニー役のシャクティ・カプール(「Raja Babu」を思わせるメイク)と、マリア役にヒマーニー・シヴプリーが珍しくも洋装で登場(クリスチャン役だから)。この3人、役者であるから当然であるが、ラージの結婚式なのに花婿が急遽シヴに変わって戸惑う芝居をきっちりしてるのがイジラシイ。
冒頭の面接シーンに登場する門番役にラザック・カーン、新婚早々のシヴを誘惑する牛乳売りに「Sarfarosh(命がけ)」(1999)のウパスナー・スィン。デザイナーのネーハー役が、ナヴニート・ニシャン。
シヴの友人メグナー役は、「Ek Rishtaa(関係:愛の債券)」(2001)でアクシャイの妹プリィヤ、「時に喜び、時に悲しみ」K3G(2001)でルクサールを演じたシモン・スィン。
製作のスニール・ダルシャンと監督のダルメーシュ・ダルシャンは兄弟。「Jaanwar(獣)」(1999)以降、どちらもアクシャイとカリシュマーがお氣に入りのようで、「Raja Hindustani(ラージャー・ヒンドゥスターニー)」(1996)、「Dhadkan(鼓動)」(2000)、「Ek Rishtaa」など、4作品で主演に起用している。毎回、マサーラー感覚あふれる演出に好感が持てたものの、今回は散漫な印象を受けた。
上半期はかろうじてトップ10に留まったが、年度末にはズルズルとランク外に落ちるだろう。
*追記 2006.03.03
結婚したものの家を追われたヒロインが自力で生計を立てるべく秘書となり、そのボスに惚れられてしまう……という構造は、シュリーデヴィー主演「Chandni(チャンドゥニー)」(1989)を下敷きにしている。親友を頼ってデリーから転居したり、スイス・ロケがあったり、セカンド・ヒーローが花を持たせるところなど骨格が見て取れる。ただ、離別の原因が夫の浮氣でしかも裁判で争うアレンジがいかにも現代的。
*追記 2006.04.30
停電によって、乗りあわせた夜の観覧車で女と一晩過ごしてしまう浮氣のシチュエーションは、若きキラン・クマール主演「Aaj Ki Taaza Khabar」(1973)からの継承。これによって妻が家を出てゆこうとする時のナンバル「mujhe meri biwi se bachaao」が「Mujhe Meri Biwi Se Bachaao(私を妻から救って!)」(2001)のタイトルに使われている。
*追記 2007.01.23
スイスの別荘で、アビシェーク・バッチャンとシモン・スィンが一夜を明かすシーンで、濡れた服を乾かす間、ふたりが毛布に包まって見詰めあってしまうシーンは、「Shakti(力)」(1982)にて父アミターブ・バッチャンがスミター・パテールと初めて契りを結ぶシーンに符号。ただし、賢明なるアミターブは、毛布に包まったままぴょんぴょん飛び跳ねたりはしていない。
*追記 2010.09.05
タイトル「Haan…Maine Bhi Pyaar Kiya(はい、私も愛を知りました)」は、サルマーン・カーンの出世作「Maine Pyar Kiya(私は愛を知った)」(1989)からの派生。
もうひとつのパターンが、サルマーン自身の主演作「Maine Pyaar Kyun Kiya(私は愛をなぜか知った)」(2005)。
「Pyar」に「a」が追加されているのは、「Kaho Naa…Pyaar Hai(言って・・・愛してるって)」(2000)あたりからの傾向。
ちなみに近年はローマナイズのスペル遊びが加速して、アッキー主演の「Heyy Babyy」(2007)や「Action Replayy」(2010)、サルマーン主演「Dabangg」(2010)のようなケースが増えている(誤植でなく)。