Family(2006)#304
Family/2006 ★★★★
製作:ケーシュー、AB CORP ltd/台詞・脚本・監督:ラージクマール・サントーシー/原案:シャクティマン/脚本:シュリーダール・ラガーワン/台詞:ティグマンシュー・ドゥーリアー/撮影監督:アショーク・メーヘター/作詞:サミール/音楽・背景音楽:ラーム・サムパト/振付:ボスコー&カエサル/プロダクション・デザイン:カムレーシュ・クマール/美術監督:ニティーシュ・ローイ/アクション監督:アッバース・アリー・モーグル/編集:シャーム(サリー)サルゴーカル
出演:アミターブ・バッチャン、アクシャイ・クマール、ブーミカー・チャーウラー、アールヤマーン(新人)、スシャント・スィン、ナンディニー(新人)、アンジャン・スリワスターワ、バールティー・アチレーカル、シェーナズ・パテール、ルジュター・デーシュムーク、マスタル・アリー・ハッジ、スニール・グローヴェル・ノワズ、ヴィヴェーク・マダン、アルジュン・ラージ・二ルーラー、カーダル・カーン、ラーザ・ムラード、シヴァ・ナトラジャン、グルシャン・グローヴェル
公開日:2006年1月12日(日本未公開)

(c)AB Corp Ltd. 2006.
STORY
屋台の料理人シェーカル(アクシャイ)は、ふとした縁で女医カヴィター(ブーミカー)と恋に落ち、結婚する。しかし、アンダーワールドとのトラブルに巻き込まれ他界。愚弟アールヤン(アールヤマーン)は、復讐を誓いアンダーワールドのドン、ヴィレン(アミターブ)へと挑む…。
Revie-U
日本ではボリウッドの魅力がなかなか浸透しないのは、やはり公開数が少な過ぎるため。圧倒的な製作本数(と言っても、全インド映画で年間1000本。内、ボリウッド=ヒンディー映画は200本と全体の5分の1。さらに見応えあるボリウッド・メジャーとなると年間50本程度だろうか)を誇るだけに、せめて10本ほど特集上映なり、CSやレンタルDVDでボリウッド・シャワーを体感させたいところ。
そんなボリウッドの底力を感じさせるのが、本作。年間28位と映画史には縁のない平凡な動員ながら、これがなかなかに佳い。

(c)AB Corp Ltd. 2006.
ジャケットからするとアミターブ・バッチャン主演のマフィア物に思えるが、始まってみると、前半は料理人に扮したアクシャイ・クマールと女医ブーミカー・チャーウラー(「Tere Naam」)のラヴ・ロマンスが中心。
肩の凝らない氣さくなテイストで満喫させてくれる。アッキーが佳いだけにジャケットになぜ配置されていないのか、氣になっていると、実は前半のみの特別出演扱い。インタルミッション(休憩)直前、彼の葬式場面となり、愚弟とアミターブのハードな戦いに一転する。

(c)AB Corp Ltd. 2006.
ブレイク寸前のアッキー、出番は少ないが女医役のブーミカーも実に愛らしい。古風な顔立ちからか、ボリウッドでは芽が出ず、「Gandhi My Father」ガンジー、わが父(2007)以降は南インド映画界に戻ってしまったのが惜しまれる。
しかし、ヤンチャな愚弟役のアールヤマーン(新人)が、ぱっとしない為のが玉に瑕。
監督のラージクマール・サントーシーは「Ghayal(傷ついた者)」(1990)等、男臭い美学を粗いタッチで描き続けて名を成すも女性映画「Lajja(恥)」(2001)でどこか勘違いを見せるなど深作欣二に通じる。
歌謡と背景音楽音楽担当のラーム・サムパトは、あまり有名ではないが、この夏話題になったイムラーン・カーン主演「Delhi Belly」(2011)に登庸されるなど、ここに来て昇り調子と言える。女性の賛美歌ヴォーカリーズを多用しているのは、「Main Hoon Na(私がいるから)」(2004)からの継承。
日本では、なにかと「インド映画は長い」と言われるが、邦画もかつては2本立てが盛んで、どちらかが堅ければ、もう一本は柔らかめ、と同じ色が重ならないように番組が組まれていたものだ。
ボリウッドもインタルミッションを挟んで、前半と後半がまったく毛色が異なる「一粒で二度おいしい」作りがセオリーとされていた。

(c)AB Corp Ltd. 2006.
そういう懐かしさを感じさせる構成に加え、役名ヴィレン=Villain(悪役)の通り、恫喝シーンなどアミターブならではの凄みが味わえ、至福。インドが誇るトップスターの地位を独走してきた彼は、単なるカリスマだけでなく、追随を許さない高い演技力を持った名優であることを再認識させてくれる。
さらに終盤に向かうにつれ、タイトルの「家族」という核心に迫ってゆく展開、前半の設定がまるで抜け落ちてしまう作品も多い中で、ブーミカー演じるヒロインがなぜ女医に設定されていたか、という脚本術にも唸らせられる。怒濤の勢いで生産されるボリウッドは、まさに宝の山。映画史に左右されない自分だけの宝との遭遇は、フィルミーサーラー(映画狂)の醍醐味であろう。
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