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Lahore(2010)#299

2011.08.03
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!

Lahore「Lahore」★★★
ラーホール

製作:ヴィヴェーク・カトカル、J・S・ラーナー/原案・脚本・台詞・監督:サンジャイ・プーラン・スィン・チョハーン/脚本・台詞:ピユーシュ・ミシュラー/脚本監修:リディ・ラーニー・アスターナー/撮影:ニーラーブ・コゥール/作詞:ジュネイド・ワシ/音楽:M・M・カリーム/背景音楽:ウェイニー・シャープ/アクション:トニー・レオン・シウ・ハン、モハムマド・アスラム/スポーツ・コンサルタント:ロバート・ミラー/プロダクション・デザイン:ケストー・モンダル/衣装デザイン:ローヒト・チャトゥルヴェディ/編集:サンディープ・スィン・バジェリー

出演:アーナーハド、シュラッダー・ダース、スシャント・スィン、ケリー・ドルジ、ソォーラブ・シュクラー、ムケーシュ・リシ、ニルマール・パンディー、シュラッダー・ニガム、アーシーシュ・ヴィダヤールティー、K・ジーヴァ
客演:ファルーク・シャイク、ナフィサー・アリー

公開日:2010年3月19日(日本未公開)126分
ヒューストン映画祭:作品賞
National Film Awards:助演男優賞(ファルーク・シャイク)

STORY
キック・ボクシングのインド代表となったディール(スシャント)は、国際マッチでパキスタン代表ヌール(ムケーシュ)のキックを受け、死亡。クリケット選手だった弟ヴィール(アーナーハド)が弔い合戦に挑むこととなり…。

Revie-U
チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ」CC2C(2009)でボリウッド市場に乗りこんだ米ワーナーは、縮小する日本市場を尻目に拡大するインド映画市場には参入し続け、本作も配給作の1本にあたる。
2007年頃、ボリウッドでもスポーツ映画ブームに沸いたが、兄弟が弔い合戦に挑むのは、Yamla Pagla Deewana(阿呆に馬鹿に恋狂い)」(2010)に先駆けてダルメンドラデーオール兄弟が父子共演を果たした「Apne(身内)」(2007)同様の展開でもある。

ボリウッド的に好感が持てるのは、ゼロ年代初頭までは活躍していた名(迷)脇役たちがこぞって出演していることだろう。
第1幕でスポットを集めるのは、ディール役スシャント・スィンJungle(2000)のゲリラ・リーダー役で注目されたものの、Knock Out(2010)など残念な印象が続くが、本作でも期待通りに早々の<殉死>となる。

対戦相手となるパキスタン代表は、Sarfarosh(命懸け)」(1999)、Khiladi 420(偽闘士)」(2000)のムケーシュ・リシ。全盛期?より10年ほど経つだけに、選手役としては分が悪いものの、その分、温かい人柄が滲み出た表情が佳い。

インド側のトレーナー補佐にスラムドッグ$ミリオネアソォーラブ・シュクラー

ディールの対戦相手で後にパキスタン戦にも参戦するのが、モデルから偽反戦映画の愚作「Tango Charlie」(2005)の凶悪なゲリラ役でデビューしたブータン出身のケリー・ドルジ。崩れた肉体と、本人の野太い声とは異なるダビング(アテレコ)が痛々しい。

パキスタン側のキック・ボクシング協会のトップにディル・セ 心から」Dil Se..(1998)のテロリスト役、サブヤサッチ・チャクラワルティー(バンゴーリーはチャクラボールティー)。
パキスタン側のエージェントに「女盗賊プーラン」Bandit Queen(1994)、Hadh Kar Di Aapne(恋はぶっちぎり)」(2000)、One 2 Ka 4(1足す2は4)」(2001)のニルマール・パーンディー。惜しくも本作の公開直前、2010年2月に他界。
パキスタンの大物政治家にアーシーシュ・ヴィダヤールティー等、パキスタン側に悪役顔を並べているように見えて、インド側の政治家にもDarwaza Bandh Rakho(ドアを閉めとけ)」(2006)の藪睨みジーヴァを配役。

主演のアーナーハドは、これがデビュー。キックボクサー役に相応しい、まるで弁当箱を並べたようなシックスパックを持つものの、役者としてパッしないのが残念だ。

一方、本作でNational Film Awards:助演男優賞を物にしたのが、トレーナー役のファルーク・シャイク「Umrao Jaan」踊り子(1981)で、かのレーカーの相手役を務めたものの、その後、凡庸な道を歩み、Maya(マヤ夫人)」(1993)でも新人のシャー・ルク・カーンに喰われ、近作「Accident on Hill Road」(2010)ではセリーナー・ジャイトリーに轢かれ全編苦悶し続けるという受難な役が彼の近況そのものに思えてならなかったが、本作で見せる風合いもこれまでの結晶か。

また、ディールとヴィールの母親役に「Life in a…Metro(大都会)」(2007)でダルメンドラと老いらくの恋を演じたミス・インディア女優。作り込んでいたGuzaarish(要望)」(2010)とは異なり、ナフィサー・アリーがこれまたしっとりとした様を見せる。
マレーシアで開催される国際マッチに向かうディールに邪視除けのティカ(黒)を施そうとするが「子供じゃないんだから」と嫌がられ、結局、息子を失うこととなる。

キック・ボクシングとタイ・ボクシング・スタイルをミックスした殺陣師が中国映画界のトニー・レオン・シウ・ハン。アーナーハドを中国に送り込んでトレーニングを行うが、キックとは言えボクシング映画でワイヤー・アクションがあるのは、好みの分かれるところ。

重厚な背景音楽は、Gangaajal(ガンジスの聖水)」(2003)を手がけるインド在住の白人音楽家ウェイニー・シャルペーによる仕事で、「ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女」、「パッション」等のヴォーカリスト、リスベス・スコットをフィーチャルしたテーマ曲が感動的。

アーナーハド同様、本作がデビューとなるのが、脚本・監督のサンジャイ・プーラン・スィン・チョハーン。演出はそれなりだが、マレーシア、パキスタン・ロケを敢行するメジャー・プロジェクトを勝ち取った手腕は心強い。

単なる印パ対決映画に留まらず、ヒロイン、シュラッダー・ダースがパキスタン・チームに関わる精神分析医でありながら、対パキスタン戦で兄を失ったインド人のヴィールに心惹かれてゆく構図と、絶命させてしまった対戦相手の弟との再戦で見せる分かち難い繋がりが印パに重なり胸を打つ。
これも脚本・台詞で参加したTere Bin Laden(ビン・ラーディンなしでは)」(2010)、Lafangey Parindey(無頼の鳥)」(2010)のピユーシュ・ミシュラーに負うところが大きい。

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