Nanhe Jaisalmer(2007)#296
「Nanhe Jaisalmer」2011.07.19 ★★★★
ナンネー・ジャイサルメール
原案・脚本・台詞・監督:サミール・カルニク/原案・脚本:エクラヴヤ・スィン・バーティ/脚本・台詞・助監督:アシーム・アローラー/撮影:ビノード・プラダーン/作詞:サミール/音楽:ヒメーシュ・リシャームミヤー/背景音楽:モンティ/振付:ピユーシュ・パンチャル/美術監督:スニール・ニグヴェーカル/ボビー・デーオールの衣装:タンヤー・デーオール/編集:サンジャイ・サンクラー
出演:ドウィジ・ヤーダウ(新人)、プラテークシャー・ローンカル、シャラート・サクセーナー、ビナー・カク、ラージェーシュ・ヴィヴェーク、ルシター・スィン、ヴィヴェーク・シャイク、スクヴィンダール・チャハル、アーディル・ラーナー、ローケーシュ・パンディット、スディル・クマール、カラン・アローラー、ヴィクラント・タークル、アムリーシュ・シャルマー、アルン・クマール
特別出演:ヴァトサル・セート
公開日:2007年9月14日(日本未公開)
シカゴ国際子供映画祭:子供評議賞

(c)Eros Entertainment, 2007.
STORY
ナンネー(ドウィジ)は、ジャイサルメルのキャメルボーイ。観光客から覚えた各言語を駆使してガイドをしては、母と姉を養う。勉強は大嫌いながら、ボリウッド・スターのボビー・デーオール(彼自身)が大好き。そんなある日、ジャイサルメルにボビーが撮影でやって来て…。
Revie-U
いかにもインドらしく、ボリウッド・スターをリスペクトした作品は、過去にも若きジャヤー・バードゥリー(現バッチャン。アミターブ夫人にしてアビシェークの母)がダルメンドラ本人にゾッコンとなってしまう「Guddi」(1971)などが作られて来たが、本作ではダルメンドラの次男ボビー・デーオールが彼自身として登場。

(c)Eros Entertainment, 2007.
主人公となるのは、ラージャスターン州ジャイサルメルでラクダをひいて観光ガイドとして身を立てる少年ナンネー。大のボビー・ファン。彼主演のカルト・ヒット作「Soldier」(1998)が野外上映された晩など、寝ている姉を起こしてボビー宛のファン・レターを書かせる。が、サインは指紋の捺印。
ナンネーは観光客に取り入り、欧州各言語を巧に操る利発な少年ながら、ホテル・オーナーのマダムが開く夜間学校での勉強にも身が入らない。自分では読み書きが出来ないために、いつもボビーの記事を何度も何度も読みかえさせるのだ。
そんなある日、新作「Yaar(マブダチ)」を撮影中のボビーがジャイサルメルを訪れ、ナンネーと交友を深める。
ナンネーは勉強も仲間も疎み過剰にボビーへ入れ込むが、ボビーに諭され、少しづつ成長してゆく。
ナンネー役がデビューとなったドウィジ・ヤーダウは、その利発ぶりが感動を呼ぶ。

(c)Eros Entertainment, 2007.
もちろん、本作の魅力はボビー・デーオールを抜きには語れない。90年代終盤、マネー・メイキング・スターであったボビーはゼロ年代に入るとヒット作に恵まれないマイナー・スターに転落したと思われそうだが、独自のポジションを焦らず歩み、リスペクト作である本作に続き、「Dostana(友情)」(2008)ではアビシェーク&ジョン・エイブラハムの<主演>を食うチャームを発揮、それはデーオール父子共演のメガヒット「Yamla Pagla Deewana(阿呆に馬鹿に恋狂い)」(2011)に結実する。
監督のサミール・カルニクも、そんなボビーに入れ込んだひとり。
ヴィヴェーク・オベローイ N アイシュワリヤー・ラーイ共演「Kyun! Ho Gaya Na…」(2004)で監督デビューするも、2作目にあたる本作でボビー・デーオールに入れ込んで以来、最新作「Yamla Pagla Deewana」まで4作連続ボビーを起用。ボビー魂は、ナンネーが口ずさむ「humko sirf tumse pyar hai(僕だけが君を愛す)」はボビーとトゥインクル・カンナーのWデビュー作「Barsaat(雨季)」(1995)のロマンス・ナンバルからも感じられる。
(もっとも、オープニングでサルマーン・カーンに献辞の与えられているところから、当初はサルマーン主演で企画されたか? 2作目「Heroes」ではサルマーン兄弟も重用されていることからサルマーンにも傾倒していると推測)。
識字率の低いインドだけに「Kitaab(本)」(1977)などの系統に連なる啓蒙文化映画であり、監督サミールの信条である「信じること」がインド人の持つ幻影感と見事に融合して綴られる。
サポーティングは、ナンネーの母に「Iqbal」(2005)、「Dor」運命の糸(2006)のプラテークシャー・ローンカル。
片時も酒瓶を離さないリキシャーワーラーにシャラート・サクセーナー(野外上映で観る「Soldier」には彼自身も悪役として出演)。穏やかな優しさに満ちた芝居が佳い。
夜間学校の仲間に「What’s Your Raashee?(君の星座は何?)」(2009)の占星術師兼私立探偵役ラージェーシュ・ヴィヴェーク。
マダムに想いを寄せるボンクラ役に「Gadar(暴動)」(2001)のヴィヴェーク・シェーク。
そのマダム役が「Maine Pyaar Kyun Kiya(私はなぜか愛を知った)」(2005)で鮮烈デビューを飾ったビーナー・カクが出演。子供想いの氣品あふれるマダム役が板に付いている。
また、青年となったナンネーを、アイーシャー・タキアとWデビュー作デビューしたヴァトサル・セートがカメオ出演。本作で久々にスクリーン復帰を果たした後、サミールの次作「Heroes」(2008)など徐々に出演作を増やし、米TVムービー「チーター・ガールズ3 in インド」にも出演。

(c)Eros Entertainment, 2007.
音楽は「Radio」(2009)のヒメーシュ・リシャームミヤー。シンガーとしても絶頂期にあった破竹系サウンドだけでなく、彼の持ち味でもあるリリカルなナンバルも提供。ソーヌー・ニガムによる主題歌「nanhe yaar」は耳に残り、「Devdas」(2002)のモンティによる背景音楽も心地よい。
そして、何よりジャイサルメルの砂漠と町並みが美しい。
カマガニ・ドースト!
*追記 2012,07,20
ボビー・デーオールの<彼自身>役でのゲスト出演はパンウッド(パンジャービー映画)「Nalaik」(2005)があり、ジェントルな様がなかなかよい。
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