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Aankhen(2001)#036

2010.09.03
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!
Aankhen(2002)

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Aankhen(盲点/原題直訳は目の複数形)02.07.27/02.07.31追記 ★★★★★
アーンケーン

原作:ショーバナー・デーサーイー「Andhalo Pato」/脚本・監督:ヴィープル・アムルトラール・シャー/ストーリー・脚本:アーティーシュ・カパーディアー/撮影:アショーク・メーヘター/作詞:プラスン・ジョーシー、ニティン・ラーイーカル、プラヴィーン・バラドワージ/音楽:ジャティン-ラリット/音楽・背景音楽:アーディーシュ・シュリワスターワ/振付:アフムド・カーン、レモ/アクション:アッバース・アリー・モーグル/編集:シュリーシュ・クンデール

出演:アミターブ・バッチャン、アクシャイ・クマール、スシュミター・セーン、アルジュン・ラームパール、パレーシュ・ラーワル、アディティヤ・パンチョリー、アジート・ヴァチャンニー、シュリーヤス・タルパデー
ゲスト出演:ビパーシャー・バス
特別出演:カシュミラー・シャー
公開日:4月5日(年間国内トップ4ヒット!/日本未公開)

STORY
ヴィラスラーオ・ジェファーソン銀行の重役ヴィジャイ・スィン・ラージプート(アミターブ)は、その直情的な性格故、解雇されてしまう。復讐を誓い、銀行強盗を画策するヴィジャイが思いついたのは、3人の盲人を使った銀行強盗であった!

Revie-U *結末には、触れていません。
その昔、獰猛なドーベルマン犬に銀行を襲わせる「ドーベルマン・ギャング」(1972=米)というトリッキーな映画があったが、本作もこれに次ぐ驚くべきアイディアである。

冒頭、重役会議でヴィジャイの話が昇る。彼に敵対するバンラージは、ヴィジャイを「パーガル」だと罵る。カットバックで警備員たちの前の立つヴィジャイ。一人の警備員の持つ携帯電話が鳴り、叱責された彼は追い出される。この程度のことでヴィジャイはクレイジーと言われるのか?
と思いきや、次のエピソードでは老婆の払い戻し金を誤魔化した行員を裏通りの人込みヘ雪崩れ込んでまで徹底的に殴り倒す。
このクレーン・ショットを多用したモブ・シーンも臨場感が溢れ、立ち回るアミターブ・バッチャンは、「黒いダイヤ」Kaaka Patthar(1979)におけるシャトルグン・スィナーとの乱闘シーンを思い起こさせる。かつては絶対的ヒーローであったビッグBだが、今日は彼自身敵役を大いに楽しんで演じているという。

この一件で、ヴィジャイは解雇。彼は銀行に対して復讐心を抱くが、金庫に忍び込むにしろ警備が厳し過ぎる。思い悩む彼の目に飛び込んだのが、なんと盲人学校での人間ピラミッドだった!
祭の練習で、目の見えない盲人たちを抜群の指導力で導き空中高く吊った土瓶を割らせるトレーナーが、スシュミター・セーン扮するネーハー・シヴァースタ。
さて、ヴィジャイは自分の計画にネーハーを引き込むにはどうするか? 前のシーンに登場していた彼女の末弟ラーホール(Rahul=ラーフルだが、聞き取りのカタカナ表記ではラーホールが最も近い)を誘拐し、ネーハーに有無を言わさず取引に応じさせるというわけだ。このように、展開は到って早い。

続いて銀行強盗のメンバーに選ばれた3人の盲人が紹介される。
すなわち、サッカー選手を夢見ながらも幼い頃に視力を失ったアルジュン・ヴァルマー(アルジュン・ラームパール)。アコーディオンを片手に巧みな口上で物乞いして歩くイリヤース(パレーシュ・ラーワル)、新婚旅行中に事故で花嫁と視力を失ったヴィシュワース・プラジャーパティー(アクシャイ・クマール)。
モデル出身のアルジュンは、本作でようやくヒットに恵まれた。キャリアが浅い分、生真面目なキャラクターにマッチ。イリヤース役のパレーシュは、ボリウッドきっての名優のひとり。癖のある芝居は絶品!
そして、この3人の中で最も異彩を放つのが、アクシャイだ。登場のミュージカル・ナンバル「gustakhiyan」では、ラフティング、アイススケート、ロック・クライミングと抜群な運動神経を見せつける。ヴィシュワースは最も最近盲人になったのだが、五感ならぬシックス・センスが発達した設定になっていて、これが各ポイントでのアクセントになっている。

第2幕前半は、盲人たちの銀行強盗トレーニング・シーン。
ヴィジャイの豪邸内に作られたVJ銀行そっくりのインドア・セットで行われる。ここは小高い丘の上にあり、ヴィシュワースたちは逃げ出すことができない。人里離れた空間で強盗のトレーニングというと、「エントラップメント」(1999=米)を思い出されるが、本作の原作は1992年に初演されたグジャラート語演劇。考えてみると、盲人たちのトレーニング・シーンは実に舞台向きであり、オリジナルの芝居でもここが要であったのだろう。
このトレーニング・シーンではネーハーだけが彼らと接して、ヴィジャイの存在は「ない」ことになっているのだが、異様に感覚が研ぎ澄まされたヴィシュワースが、黙って見守るヴィジャイの「存在」をしばしば嗅ぎ取ってしまうのだ。そんなヴィシュワースを、Ajnabee(見知らぬ隣人)(2001)でFilmfare Awards敵役賞を受賞したアクシャイが演じるのだから、実にスリリング!
当初、ネーハー役にはラヴィーナー・タンダンが予定されていたそうだが、結果的に見ると芯が強く見えるスシュミターで正解。

それにしても、ボリウッド・スターたちの演技力には感嘆させられてしまう。スターという看板が決して邪魔になるようなことはなく、ストーリーテリングを倍増させる芝居なのだ。スシュミターは言ってみればミス・コン上がりだし、アルジュンはポッと出の新人(それもモデル出身)。誰かが足を引っ張っても可笑しくないところなのだが・・・。これはインド人が役に成りきりやすいからか、演出が巧みだからか? 大いに気になるところでもある。

監督ヴィープル・アムルトラール・シャーは、舞台の演出からTVソープオペラのディレクターへ転進。これが監督デビュー作というからまたも驚かされる。脚本も兼ねているが、原作の舞台劇に室外の芝居を単純に追加して3時間の作品に水増ししたわけではなく、観客のエモーションへ視覚的に訴える映画的技法を熟知しているシナリオ作りにも感心してしまう。

当然ながら、本番の銀行強盗では大番狂わせとなる。しかし、これは序の口。本作の白眉はボリウッドの常識を覆す二重三重のどんでん返しが用意された第3幕なのだ!
ここから先は、各自、自分の<目>と耳で堪能して欲しい。しいて言えば「バウンド」(1996=米)をゴージャスにしたような展開か??

旧態依然としたマサーラー映画をイメージしていると面喰らうだろう。現段階におけるボリウッド・トップレベルにあり、日本人の一般映画ファンも充分楽しめる出来栄えになっている。ネタ切れのために外国映画ヒット作のリメイク権を臆面もなく買い漁っているハリウッドが、すぐにでも欲しがるような作品だ(トム・クルーズあたりか?!)。2000年問題をインド人プログラマーの力で乗りきったアメリカだけに、ハリウッドの救済をボリウッドが担う日も近い?!

サポーティングには、ヴィシュワースの花嫁レーナーとしてゲスト出演しているのがビパーシャー・バス(ミュージカル・ナンバーのみ)。アクシャイとは「Ajnabee」でアブナイ夫婦を演じたばかりとあって、観客へのサービス・キャスティングと言えよう。ちなみに、ビパーシャーは主演作Raaz(神秘)(2002)がひと足先にリリースされ、本年上半期トップ1ヒットとなっている。

第3幕で登場するインスペクター役に、アディティヤ・パンチョリー。ちょっといつもと違うインテリ風の役作りがお見事!(監督のセンスだと思うが)。
ヴィジャイと対立する重役バンラージに、Hum Saath-Saath Hain(みんな一緒に)(1999)のアジート・ヴァチャンニー
また、CCバーで繰り広げられるミュージカル・ナンバルchalka chalkaには、ゲストダンサーとしてカシュミラー・シャーをフィーチャル。まさにのんべえたちの女神!

あと、アーディーシュ・シュリワスターワエニグマ風BGMも佳し。

*02.07.31追記
上半期トップ2ヒットをキープしつつ、じわじわとトップ1の「Raaz」に迫っていた本作であるが、7月12日リリースのDevdas(デーヴダース)(2002)にわずか2週間でトップ2の座を蹴落とされてしまった。

*07.10.20追記
パレーシュ・ラーワル扮するイリヤースを楽しげに迎える駅のチャイワーラー役が、運命の糸Dor(2006)のシュリーヤス・タルパデー。端役ながらアテレコでないのが嬉しい。

*10.09.03追記
ネーハー役がラヴィーナーからスシュミターに交代したのは、前年、アクシャイがトゥインクル・カンナーと結婚したから。それまで浮き名を流したラヴィーナーやシルパー・シェッティーとは共演しなくなった。ラヴィーナー共演作では「Police Force」(2004)があるが、撮影は2001年以前。その後、ラヴィーナーは引退。シルパーは「Life in a…Metro」(2007)での演技が評価されたが、ゼロ年代では他に主だった作品は少なく、ヒロイン女優としては不遇に終わった。
監督ヴィープル・アムルトラール・シャーの妻は、「Gandhi My Father(ガンジー、わが父)」でガーンディーの妻を演じ東京国際映画祭にて主演女優賞を獲得した シェーファリー・シャー。
挿入歌「ghustakhiyan hain」をプレイバックしているのは、「モンスーン・ウェディング」の花嫁役 ワスンダーラ・ダース。「たとえ明日が来なくても」Kal Ho Naa Ho(2003)の「it’s time to the disco」もプレイバックしている。

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