Break Ke Baad(2010)#291
「Break Ke Baad(別れの後で)」★★★
ブレイケー・バード
製作:クナール・コーフリー/原案・監督:ダニーシュ・アスラム/原案・脚本・台詞:レーヌカー・クンズル/撮影:アンドリュー・メネゼス/作詞:プラスーン・ジョーシー/音楽:ヴィシャール&シェーカル/背景音楽:ヒテーシュ・ソニック/プロダクション・デザイン:ミナル・D・ラート/編集:アナン(=アーナンド)・スバヤー
出演:イムラーン・カーン、ディピカー・パードゥコーン、シャルミラー・タゴール、ナヴィン・ニスチョール、リレッテー・ドゥベイ、シャハナー・ゴースワーミー、ユディシュタル・ウルス、パルザン・ダストゥール
公開日:2010年11月26日(日本未公開)

(c)Kunal Kohli Productions, 2010.
STORY
幼馴染みのアーリヤー(ディピカー)とアブヘイ(イムラーン)は、アーリヤーの豪州留学を機にブレイク・アップ。しかし、想いを残すアブヘイが豪州に押しかけ…。
Revie-U
伯父アーミル・カーンのプロデュース作「Jaane Tu…Ya Jaane Na(知ってるの? 知らないの?)」(2008)で本格デビューを果たしたイムラーン・カーン第5作。
撮影年は2008年、設定は2009年とややリリース(封切り)が遅れた分、恋人だけにフォーカスされた10年代のカップル映画とはやや異なり、多少、家族が絡むストーリー。

(c)Kunal Kohli Productions, 2010.
<ブレイク・アップ>がテーマとなっていることなど、ディピカー・パードゥコーンがヒロインを務めた「Love Aaj Kal(ラヴ今昔)」(2009)が連想されるのもインパクトに欠ける。
ランビール・カプールに比べ押しが弱いイムラーン、等身大のヒロインにはあまり向かないディピカーとの組み合わせが化学反応せず、ヒットに結びつかなかったようだ。
ただ、オープニングから映画ネタがオンパレードで楽しめる。
冒頭、幼年時代のアブヘイとアーリヤーが出会う映画館で上映されているのはアニル・カプール主演「Mr,India」Mr,インディア(1987)。アムリーシュ・プリー演ずる伝説の首領モギャンボーの台詞をふたりはそらで覚えていて、これが別れ難い結び付きとなる。
続く小学校場面、宿題を忘れて廊下に立たされたアーリヤーがウォークマンもどきをかけてひとり踊るのは、マードゥリー・ディクシトがブレイクした「Tezaab(酸)」(1988)のメガヒット・ナンバル「ek do tin…(1、2、3…)」。
さらに中学時代、アブヘイが眺めているのが、伯父アーミル主演「Jo Jeeta Wohi Sikander 」勝者アレクサンダー(1992)のポスターで、イムラーン自身がアーミルの子役として出演しているレアネタ。
そのメモラブル・ナンバル「pehla nasha pehla khumar(初めての恋、初めての酔い)」(ウディット・ナラヤン)が流れ、アーリヤーが机をお立ち台にするのは、オリジナル・ナンバル中にあるまくれ上がるスカートの再現。
そして映写室からふたりで見入るのは、シャー・ルク・カーン N カジョール主演「Kuch Kuch Hota Hai」何かが起きてる(1998)におけるサマーキャンプでの再会スケッチ。
これがクライマックスへのネタバレともなるのだが、さらにポイントなのはイムラーンの少年時代に扮しているのが「KKHH」の星を数える子役パルザン・ダストゥールだということ。
製作は「Hum Tum(僕と君)」(2004)などの監督クナール・コーフリー。「メリー・ポピンズ」(というよりラーニー・ムカルジーのキャラクターからして「コメットさん」?)を翻案した「Thoda Pyaar Thorda Magic(少しの愛と少しの魔法)」(2008)がフロップに終わったせいか、プロデューサーとして徹した初の作品となり、これまで助監督を務めてきたダニーシュ・アスラムを監督に起用。
サポーティングは、アブヘイの父親に往年のマイナー・スター、ナヴィン・ニスチョール。母親に「たとえ明日が来なくても」Kal Ho Naa Ho(2003)の過熟女リレッテー・ドゥベイ。次女イラー・ドゥベイが「Alisha」(2010)のサブリードでデビュー済み。
アーリヤーの母親がサイーフ・アリー・カーンの実母シャルミラー・タゴール。往年の人氣女優という設定そのままに艶やかな様を見せる。
そして、後半の舞台となる豪州のシェアハウス・オーナーが「Rock On!!」(2008)のシャハナー・ゴースワーミー。さほどうるさく絡まないのが残念。

(c)Kunal Kohli Productions, 2010.
アーリヤーの「ブレイク・アップ宣言」にもひるまずシェア・ハウスに居残るアブヘイとDVDを観ている場面で、アブヘイの食べかけピッツァをアーリヤーが口に運びかけてそっと戻すのは、<共食>関係が解除され<不浄>な行為となるため。それでいてアブヘイが居眠りした後に氣氣としてアーリヤーが食べてしまうのは、女優になりたい建前とは裏腹に彼に氣を残しているから。
ボリウッド映画において幼馴染みのカップルが神聖化されるのは、幼児結同様、そこに不純な恋愛が関わらない純粋さ故。
一方、本作では酒と煙草もたしなみ自分の夢に向かって果敢に進むヒロインに対して、ヒーローはと言うと<家庭料理>の腕を振るい、幼い頃からの彼女への想いを通し続ける。
この裏返しが今どきのボリウッドとしての狙いだったのだろう。

(c)Kunal Kohli Productions, 2010.
もっとも、イムラーンは本作のアブヘイ同様、長きに渡る恋を貫き、2010年1月に婚約、2011年1月に挙式している。