Jaani Dushman(2002)#289
Jaani Dushman:Ek Anokhi Kahani(命敵:奇譚篇) 02.10.14 ★★★★
ジャーニー・ドゥシュマン:エク・アノーキー・カハーニー
製作・脚本・監督:ラージ・クマール・コーフリー/ストーリー:ラジンデール・スィン・アーティーシュ/脚本:ナヴィーナ・バンダーリー/台詞:K・K・スィン/撮影:トーマス・A・ザビエル、ダモダール・ナイドゥー/詞:サミール、デーヴ・コーフリー、ニティン・ライカル/音楽:アナン(=アーナンド)-ミリンド、アナン・ラージ・アナン/音楽・背景音楽:サンディープ・チョウター/振付:ガネーシュ・アチャルヤー、ボスコー-カエサル/アクション:ティヌー・ヴェルマー、アッバース・アリー/SVX:ゴーヴァルダン・ヴィグラハム/美術:スニール・スィン、パワン・ヴェルマー/編集:クク・カッコー、ディリープ・ダラーク
出演:サニー・デーオール、アクシャイ・クマール、スニール・シェッティー、マニーシャー・コイララ、アーフターブ・シヴダサーニー、アディティヤ・パンチョリー、シャラード・カプール、アルシャード・ワールシー、ラジャート・ベディ、シッダール、デーニーシュ・ヒングー、キラン・クマール、ジョニー・リーヴァル、ウパサナー・スィン、アトュール・アグニホートリー、キラン・ラトール、モーヒニー・シャルマー、アムリーシュ・プリー
公開日:2002年8月16日(年間14位/日本未公開)
STORY
カラン(サニー)と恋人のデヴィヤー(マニーシャー)は、キャンパスの仲間にレエプされて自害を図る。そして、彼女の前世ヴァサンダラーの恋人である蛇の精カピール(ムニーシュ)が、デヴィヤーを見殺しにした連中を次々と殺害してゆく…。
Revie-U
冒頭の結婚式シーン。アクシャイ・クマール、スニール・シェッティーはよいとして、ランバー(ダイエットの成果が出て、以前より<少し>スリムに)、「Mujhe Meri Biwi Se Bachchao(私を妻から救って)」(2001)のアルシャード・ワールシー、「Kyo
Kii…Main Jhuth Nahin Bolta(なぜなら…私はウソは申しません!)」(2001)のシャラード・カプール、アディティヤ・パンチョリー、アーフターブ・シヴダサーニー(しかも普段着)、プレイバック・シンガーのソーヌー・ニガムと、B級っぽいメンツが続々登場。なにしろ、花婿役が「Ansh(分け前)」(2002)のラジャト・ベディだ。
サブヒロインが、「Yaadein(思い出の数々)」(2001)で三姉妹役だったキラン・ラトール、ジョニー・リーヴァル出演「Yeh
Mohabbat Hai(これが愛だ!)」(2002)のモーヒニー・シャルマー(彼女だけ現場音)。
これに、顔見せサポーティングとして、デーニーシュ・ヒングー、キラン・クマール、ジョニー&ウパサナー・スィンの「Badal(雲)」(2000)コンビ、「Hum Tumhare Hain Sanam(私は君の愛しい人)」(2002)のアトュール・アグニホートリー、スター・トレーナーのケヴィン・パッカードなどなど。そして、トドメが学長神父役のラージ・バッバル!
この冒頭で、花嫁と初夜を勤しみに部屋へ消えた花婿ラージェーシュが、突然窓を突き破って墜落死! シャラード扮するヴィクターが記念写真を現像してみると・・・なんと、花嫁の姿が写っていない!! そう、これは「Raaz(神秘)」(2002)に続く心霊物??
そして、マニーシャー・コイララが現れ、彼女が「回想する」回想シーンとなる…。
マニーシャー演ずるデヴィヤーは女子大生。ところが、学友のラジェーシュとマダンに恨みを買って、彼らにレエプされそうになる。これを助けに突如現れるのが、サニー・デーオール扮するスティディのカラン!! 例によって、人間機関車ぶりを発揮し、レエプ未遂犯のふたりを懲らしめる。
ところが、許しを乞うふたりを認めようとしないデヴィヤーが、キャンパス仲間から例の「インド式論法」連射により逆バッシングされてしまうのだ。もちろん、ラージェーシュらが性根を入れ替えるははずもなく、デヴィヤーをおびき出し再度、彼女をレエプ完遂してしまう!!
マダン役のシッダールは「Baazigar(賭ける男)」(1993)ではヒロインに想いを寄せるインスペクター役だったものの、最近では「Pitaah(父)」(2002)でも年端もいかない少女をレエプするなど、この手の役柄が続く。
実は、その少し前のシーンで、デヴィヤーは妙な歌声を聴くなり寮から抜け出しては縄文杉の如き大木から抜け出た蛇の精(!!)にして前世の恋人(!!!)カピールに再会していたのだ。
はじめ彼女は彼の言葉を信じなかっため、過去世のヴィジョンを見せられるのだが、ここでクレオパトラ風衣装&CGI合成ナンバー「aja(おいで)」となる(サウンドもなかなかキッチュ)。
カピールと彼女の前世ヴァサンダラーが岩の上で踊っていると(ふたりのうちどちらかが重かったため?!)岩が崩れ、洞窟の中で瞑想していたリシ(聖仙)をケガさせてしまい怒りを買うのだ!
一挙にヒンドゥー神話の世界へシフトしてしまうのにも驚かされるが、なんと、このリシ役がアムリーシュ・プリー!!
こうしてデヴィヤーは前世を思い出すが、同時に現世ではカランというスティディがいたことをも思い出すのであった。慌てて寮に戻った彼女の部屋へまたもCGIのコブラが侵入。顔だけがモーフィングでカピールとなり、しばし会話が続くのだが、ここでブッ飛ぶのが蛇と会話してる最中に電話が鳴り、彼女が平然と電話へ出てしまう演出。もう日常と非日常が平然と交差するところがスゴイ!!!!
そんなわけで、デヴィヤーが自害してしまうとマニーシャーの出番はほぼ終わり、代わりにカピールが「見殺しにした連中」に復讐してゆくわけだ。
このカピールに扮するのが、ムニーシュ・コーフリー。なかなか丹精な顔立ちで、体格もよく、バイク・テクもまずまずで、難なくアクションをこなすものの、しかし、それだけの印象。
しかも、登場時の衣装がムキムキマン風、復讐モードはバットマン風にチェンジ(というか、ロングコートの仮面ライダー)。何故か、首を動かす時に米「ロボコップ」風SEが入る。
その上、自由自在に変化するところなど米「T2」のT-1000。リキッドメタル弾抜け&復活あり、お馴染み米「マトリックス」の弾避けあり、米「M:I-2」のバイク・ターンあり、と「リターナー」(CX・東宝)の向こうを張るイタダキぶりだ。
これらに見るようなハイテクVFX、ワイヤーワークなどの最新テクニックが惜しげもなく使われる一方、美術の出来が「マタンゴ」(東宝映画)級なのがフリーキー。
製作・脚本・監督を兼ねるラージ・クマール・コーフリーは、ベテラン監督のはずであるが、全般的に状況・位置関係・時間軸を無視した思いっきりC級な演出力なのに唖然とさせられる。
彼は、1979年にスニール・ダット主演で同名の作品を手掛けており、今回は「Ek Anokhi Kahani(アメージング・ストーリー)」とサブタイトルを付けていて、よほど自作に思い入れがあったのだろう。
かなり意外だったのは、サニーとアッキーが<共演」>していることだ。本作でもアクションを担当したティヌー・ヴェルマーなど、「サニーはアクシャイはゼッタイ共演しない!」と、自分の監督作品「Maa Tujhe Salaam(母なる女神よ、汝に礼拝を)」(2002)のインタビューで断言し、わざわざアッキーをキャスティングから外していたほどだ。
そんなわけで、今回はふたりが同じシーンを共有してはいない。アクション監督や撮影監督が2人立てられているところをみると、サニーのパートのみティヌーが担当し、それ故、彼の人間機関車ぶりが発揮されているのだろう。
そんな撮影状況と脚本のお粗末さが手伝って、各エピソードは分断されていて、さながらオムニバス映画のような印象を受ける。
稚拙なキャメラワーク&間の悪い編集に興が削がれつつも、ミュージカル・ナンバルとなると、これがなかなか! サニー&マニーシャーを(出演者の)ソーヌーとジャスピンデール・ナールラーがプレイバックする押しまくりのファンキー・ナンバル「chal kuriye」など、否が応でも盛り上がってしまう。
ちなみに、サニーの弟役であるソーヌーは子役出身で、ここ数年、俳優として本格デビューしたくてしたくてしょうがなかったらしいのだが、演技は子役時代そのまま。もちろん、自らプレイバックしたナンバル「jaaneman tu khud hai」も用意されている。
クライマックスは、もちろん「M:I-2」&「T2」の死闘再現。アクシェイも惨死、サニーも串刺しとなるものの、ラージ・バッバル扮する学長神父の祈りが神に通じ、キリスト教、ヒンドゥー、イスラームのシンボルが三位一体化し、サニーを復活させる!!! これによりカピールは2つに引き裂かれるのだ。
「祈り好き」なヒンドゥーは大いにエキサイトしそうだが、「神は唯一アッラーのみ」とするムスリムとしては、この場合、どう受け止めているのだろうか? いつも気になる点である。
もう一点。よ〜く考えてみると、カピールとデヴィヤーは連携して復讐(憑依)しているのだから、カランとカピールの死闘において、デヴィヤーが現世(というか、最前世)のスティディであるカランに対して気持ちが揺らぐなどしてもよさそうなものだが、どうもラージ・クマール・コーフリーはそこまで氣が回らなかったようだ。
興行的には惨憺たる結果に終わった……かと思いきや、11位に喰い込む健闘ぶり!
カルト度も高く、こんな作品こそ東京ファンタでオールナイト上映して頂きたいものだが、そうなると「インド映画=おバカ映画」の公式化が更に加速するので、やっぱり望まないでおこう。
*追記 2007,07,18
ラージクマール・コーフリーの監督作「Nagin(雌蛇)」(1976)でも冒頭のパーティーで集まった男たち、スニール・ダット(サンジャイ・ダットの父)、フェーローズ・カーン(ファルディーン・カーンの父)、ヴィノード・メーへラー(レーカーの元夫)、カビール・ベディ、アニル・ダワン(デヴィッド・ダワンの兄)、サンジャイ・カーン(ザイード・カーンの父)らが蛇の精ジーテンドラ(トゥシャール・カプールの父)を殺したことから、その恋人リーナー・ローイによって次々と殺されてゆく……というまったく同じ展開。
女優陣もレーカー、ムンターズ、ヨギーター・バーリー(ミトゥン・チャクラワルティーの妻)、プレーマー・マラヤン、ニーラム・メーへラー、アルナー・イラーニー(インドラ・クマールの姉)とやたら豪華。B級なストーリーのわりにマルチスターを組むところも本作と同じ。コーフリーの演出も大枠は据置であることがわかる。