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Aisha(2010)#284

2011.07.02
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!

Aisha「Aisha」★★★★
アーヱーシャー

製作:アニル・カプール、アジャイ・ビジュリー、サンジーヴ・K・ビジュリー、レア・カプール/監督:ラージシュリー・オージャー/脚本・台詞:デーヴィカー・バガット/台詞:リトゥー・バーティア、マヌリシ・チャッダ/撮影:ディエゴー・ロドリゲス/音楽&背景音楽:アミット・トリヴェディ/作詞:ジャーヴェード・アクタル/配役監督:アミター・セーへガル/編集:スレーカル・プラサード/プロダクション・デザイン:シュルティー・グプテー/衣装デザイン:クナール・ラーワル、ペルニア・クレーシー/振付:テレンス・レウィス、カレン・ボーラニー、アシュレイ・ロボ、フェーローズ・カーン/VFX:フルーツ・ワークス/

出演:ソーナム・A・カプール、アブヘイ・デーオール、アヌーラーダー・パテール、サイラス・サフカル、イラー・ドゥベイ、アルノダイ・スィン、アムリター・プリー(新人)、リサ・ヘイドン(新人)、アナン(=アーナンド)・ティワリ、M・K・ライナー、ヴィドゥシー・メーヘラー、サミール・マルホートラ、ユリ、マスード・アクタル

公開日:2010年8月6日(年間21位/日本未公開)126分

Aisha

(c)Anil Kapoor Films Company, 2010.

STORY
デリーに住むハイソなお嬢様アイーシャー(ソーナム)は、いつも女友だちに囲まれているが、やたらと自分で思ったカップルに仕立てあげようとするのが玉に瑕。それでいて、幼馴染みのアルジュン(アブヘイ)がNY帰りの彼女を連れ歩くことからジェラシーが湧き…。

Revie-U
スラムドッグ$ミリオネアで国際的なキャリアを獲得し、「ミッション:インポッシブル」の第4作「Ghost Protocol」が全世界リリース(封切り)待機中のアニル・カプールによる愛娘ソーナム・A・カプール主演プロデュース作。
題材は、アイシュワリヤー・ラーイ主演Bride & Prejudise(2004)に続くジェーン・オースティン原作のボリウッド映画化にあたる。

しかしながら、相手役が<ニュー・ストリームのニュー・ヒーロー>アブヘイ・デーオールサニー N ボビー・デーオールの従兄弟)とあって、Dev.D(2009)や「Road, Movie」(2010)で見せたダウナー系のアブヘイと、ヒップなソーナムとではスクリーン・ケミストリーが核分裂しそうに思えたものだが、これが意外なほど、なかなかに佳い。

なにしろオープニングからして、軽快なガールズ・ロック・チューンby the wayに乗って、クラクションを喚かせ道行く一般車を蹴散らし、ブランド物のゴージャスなアクセサリーで飾られたイエロー・ビートルが暴走。結婚式の会場に乗り付け、煌びやかなインド衣装に身を包んだソーナムが降り立つや作品世界が確立していることが伝わるのだ。

Aisha

(c)Anil Kapoor Films Company, 2010.

アブヘイも、これまでの世を疎んだ氣怠い<ストレンジャー>ではなく、ファミリー・ビジネスをしっかりこなすエグゼクティヴ。役どころとしては、デビュー作「Socha Na Tha(考えてなかった)」(2005)系で、ポロもタンゴも難なくこなすエスタブリッシュメントらしさがしっかりとにじみ出ているのがさすが。

さて、ソーナム扮するアイーシャー。欧州ブランド・コレクターのオシャレ道楽なだけでなく、ドローイング、ガーデニング、クッキング、ヨーガにも勤しむ真のセレブ。友だち思いの性格もながら、唯一大きな欠点が。
それは、憐れみからやたらとカップル作りのプロジェクトが好きなこと。そう、ジェーン・オースティンの「エマ」現代インド版なのだ。

Aisha

(c)Anil Kapoor Films Company, 2010.

このアイーシャーのターゲットとなるのが、女友だちのシェファリー。ミドル・クラスで鈍臭い彼女をハイソに仕立て上げ+クラブで遊びまくり(その費用は524万7643ルピー=944万5757円…オンリー。庶民レベルの物価換算で5000万円! さすがにクレジットカードの使い過ぎに父親も怒り心頭)、アッパー・クラスながら野暮なランディール(原作のエルトンに相当)になんとかくっつけようと試みる。

しかし、彼女のプロジェクトに叛旗を翻したのは、親友のピンキーだった。犬猿の仲に思われたランディールと、あることから意氣投合してしまう。
この<あること>とは、ランディールがR・D・バルマンDonyeh mera dilなど往年のフィルミー・ヒットメーカー。そのリスペクト具合はJhankaar Beatsを参照のこと)好きと判って。これがボリウッド的には好ポイントの脚本術と言える。

その脚本は米「ボーン・スプレマシー」のインド側助監督を務めた、ランビール・カプール N ディピカー・パードゥコーン「Bachna Ae Haseeno(可愛い娘チャン、ご用心)」(2008)のデヴィカー・バガット
監督は米「Badger」(2002)にてカリフォルニアのオジャイ映画祭で受賞し、ヒングリッシュ「Chaurahen」(2007)などを手がける新鋭ラージシュリー・オージャー。アイーシャー=ソーナムの初々しさと愛らしさを嫌みなく引き出している演出はお見事。
アミット・トリヴェディの音楽も、Udaan(飛翔)」(2010)など<ニュー・ストリーム>全開だった頃、つまりはどこかガレージ・スタジオ風な曲作りを超え、ボリウッドのプロフェッショナル音楽監督としての<生産音楽>を量産できるようになった成長が感じられる。
また、作詞を手がけるジャーヴェード・アクタルは、<ボリウッド作詞の御大>というポジションにあるが、ガールズ・ロックby the wayでは続いて<on the way>、さらにKuch Kuch Hota Haiなどの<Hai(です/ます)>で韻を踏む若き感性には感嘆してしまう。

サポーティングは、親友ピンキー役が「たとえ明日が来なくても」Kal Ho Naa Ho(2003)のセクシー熟女リレッティー・ドゥベイの娘イラー・ドゥベイ。「ムーミン」のミー顔で、これからのサブリード女優に食い込んで行きそう。
十人並みの容姿でアイーシャーに振り回される一方、男と見れば誰にでも舞い上がってしまうミドル・クラス女子、シェファリー役(ハリエットに相当)が、これでデビューのアムリター・プリー。コメディエンヌぶりも見事で、Stardust Awards新人演技賞を受賞。

Aisha

(c)Anil Kapoor Films Company, 2010.

アルジュンの行くところ必ず姿を見せ、アイーシャーがジェラシーを感じるアールティー役が、これがデビューとなるリサ・ヘイドン。スーパーモデルだけあって、すらりとした長身とミステリアスな雰囲氣の持ち主で、さらにホーム・パーティー場面にて地声の古典歌唱を披露。ミドル・クラスのシェファリーがヨーガの素養を持たない(たしなむ余裕がない?)のに対して、アッパー・クラスの優雅なる暮らしぶりが感じられる。

ミドル・クラスと言えば、シェファリーの「伯父の友人の息子」というソォーラブ役のアナン(=アーナンド)・ティワリも目も引く。「Udaan」のヘタレ・チンピラ、Kites」カイト(2010)の友人と異なり、見るからに人の良さそうな凡人役がいい。

アイーシャーに想いを寄せながらも袖にされるランディール役(フィリップ・エルトンに相当)が、VJ出身のサイラス・サフカルRang De Basanti(浅黄色に染めよ)」(2006)の終盤でアーミル・カーンらにラジオ局を占拠される時、RJしているのが彼。
本作ではアイーシャーに手渡したミルチ・スプレーでアイーシャーから撃退されてしまう不運なキャラクター(苦笑)を好演。

そして、サヤ当て男ドゥルーウとなるのが、「Mirch」(2010)のアルノダイ・スィン。スィクらしい大柄な身体に鍛え上げた筋肉が自慢なのか、登場場面といい、かつてのサルマーン・カーン以上に意味なく半裸を見せるのはいかがなものか。耳が大きく開いたユニークなマスクからして、純然たるヒーロー路線は難しく、本作のようなサブリードで真価を発揮して欲しいところ。

冒頭で熟年結婚する美しき伯母役(アナに相当)に「Utsav(祭り)」(1984)でレーカーに向こうを張って麗しいところを見せていたアヌラーダー・パテール。かの名優アショーク・クマールの孫娘らしく、年齢を重ねながらも実に魅力的。
その結婚相手(ウェストンに相当)がWhat’s Your Raashee?(君の星座は何?)」(2009)、「Kites」のコワモテ俳優ユーリ。アイーシャーの紹介ナレーションでアイパッチを悪戯書きされたスキンヘッド+口髭顔は、まさに丹下段平。ぜひ「あしたのジョー」実写版にキャスティングして欲しかった。今回は大した出番がないのが残念。

Aisha

(c)Anil Kapoor Films Company, 2010.

本作は名作文学の映画化ということもあるが、メインリードのふたりに絡んだ取り巻きたちのキャラクターが実に生き生きと描かれ、添え物キャラクターに終わっていないのが素晴らしい。イラー・レッディ、アナン・ティワリはじめ配役も絶妙で、ゼロ年代後半に入ってハリウッド式に<キャスティング・ディレクター>を重視して来た功績を認めない訳にはいかない(逆にハリウッドでは彼らの権限が強くなり過ぎている嫌いがある)。

Aisha

(c)Anil Kapoor Films Company, 2010.

何よりの見どころは、やはりソーナムそのもの。15名に及ぶデザイナーズを着こなし、メイクアップもキメた美貌は、かのレーカーに迫る麗しさ。
エンディングのウェディング・ナンバルで見せる古典の振付も氣品があるだけに、もっとダンス・ナンバルに挑戦して欲しいものだ。

 

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