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Love in Japan(2006)#275

2011.06.21
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!

Love in JapanLove in Japan 06.09.09 ★

製作総指揮:ハネ・ミチヨ/製作・監督・アクション:アクラーム・シャイク/原案・脚本・台詞:ファイズ・サリーム/台詞:ナイーム・イジャズ/撮影:スシール・チョープラ/音楽:シカンダル・カーン/美術:モーフド・イリヤース/アクション:メフムード・バクシー/振付:ヴィッキー・カーン/編集:ヴィノード・パタック

出演:ラージパル・ヤーダウ、モーシン・カーン(新人)、メグミ(JAPAN)、ティクー・タルサニア、ウパスナ・スィン、ムスターク・カーン、ラージ・シュリワスターワ、ケートキー・ダヴェー、サーナー・シャイク、ボビー・カーン、フィローズ・カーン、テージ・サルプ、サンジヴァ、シャクティ・カプール
友情出演:ユクター・ムキー
公開日:不明(日本未公開)

STORY
ボリウッドのC級監督CD(ラージパル)は、マイナー女優バルカー(ウパスナー)の熱烈なファンであるNRIのティクー(ティクー)をたらし込んで日本ロケのD級映画製作に漕ぎ着けるが…。

Revie-U
どうも日本とインド映画との関係は、本家「Love in Tokyo」(1966)は置いておくとしてもサブカルおバカ映画扱いの「ボンベイtoナゴヤ」Aye Meri Bekhudi(公称1997/日本公開は2000年。1993年制作、撮影は91年)やタミル映画のラジニカーントが受けるなど、ボリウッド・メジャーの本筋とは違う流れになっているが、無論、本作もそんな懸念などお構いなしに作られている。

しかし、キャストを見ると今やジョニー・リーヴァルを凌駕する勢いで引っ張り凧となっているラージパル・ヤーダウを主軸に、ヒロイン女優役にSarfarosh(命賭け)(1999)のウパスナー・スィン、スポンサー役にティクー・タルサニア、キャメラマン役にGadar(2001)のムスターク・カーンコリオグラファー(振付師)に自身のコメディDVDも発売されているラジュー・スリワスターワ、アンダーワールドのドンにシャクティ・カプール、CDの大家さんに「たとえ明日が来なくても」Kal Ho Naa Ho(2003)でサイーフ・アリー・カーンが赤面していたグジャラーティー母役ケートキー・ダーヴェー、そして特別出演のゲスト・ダンサーは、ミス・ワールド1999ユクター・ムキーをフィーチャル。

と、超低予算映画には信じられない豪華?なキャスティングにまず驚かされる。

(まあ、ボリウッドのスター以外は恐ろしいほどギャラが安く、シャクティやラザック・カーンにしてもメジャー大作の合間を縫ってZ級女盗賊映画「Meri Ganga Saugandh」にもせっせと出演して日銭を稼いでいるのだが)

で、本作のヒーローとなるのが、ケータキー扮するミセス・メーヘターの息子ロッキー役のモーシン・カーン。日本ロケにフォーカス・プラー(キャメラのサード・アシスタント。ピント合わせ担当)として参加するも、撮影は進まず、ドラッグ密輸のインディアン・シンジケートに巻き込まれる、という展開。

モーシンは映画同様、毎日ラジカセでダンスを磨いていたのか、ステップも軽く、アクションもそつなくこなし、どことなく若きアクシャイ・クマールを彷彿とさせる。ナイーヴなマスクといい、近場に居れば日本人女性からも熱い視線を集めるのだろうが、今後大成するかどうかは疑問。いつか、アッキー並のスターになった時、本作のカルト度がどっと上がることだろう。

そして、クレジットがセカンド・ビリングとなるヒロイン?メグミ(JAPAN)は、見るからにまったくのド素人。ルックスや演技力についてはノー・コメントと言う他ない。ユクターのバックグラウンドで踊るような振りをする日本人水増し要員としてもチラリと参加(実はここから大抜擢!?)。

この怪しげな日本人無名キャストは、我らがミトゥン・チャクラワルティーの日本ロケ作品「Aakhri Badla」(1990)に通じる配置か?!

謎が謎を呼ぶ本作であるが、監督のアクラーム・シャイクは「ボンベイtoナゴヤ」のアクションを担当とのこと。他に「Jalwa」(2005)や「Shortcut」(2006)などのマイナー作品を手がけているようだ。

ただし、演出面はというと、評価外。

特にモーシンとメグミのパートは、スタッフの質からしても学生映画程度の仕上がりでしかない(農道カー・スタントに使われた中古車3台はなんと仮ナンバーのまま!)。

ムンバイーの室内撮影はC級映画の標準として許容範囲で、日本ロケのミュージカル・ナンバルもよく出来ているのだが、この落差は一体どういうわけか? 日本ロケの色調がカットごとに乱れているだけでなく、編集もいきなりつたなくなってしまうのだ。

ただ、「Jalwa」にはChingaari(閃光)(2006)のコリオグラファー、ガネーシュ・アチャルヤーが特別出演していたり、本作でもラージパルやユクターなどの出演を取り付けていることからも、ボリウッド中枢とコネがあるのは確かのよう。

フィルミーソングはオリジナルを作成する予算がなかったのか、はたまた往年の名作へのリスペクトなのか、どれも懐メロ・ナンバル(そのまま使用)となっていて、それはそれで心地よかったりする。

オープニング・タイトルバックと、モーシンがひとり浮かれて踊るナンバーは、本家「Love in Tokyo」より名曲japan〜love in tokyo(曲:ジャイキシャン-シャンカル)の臆面もない借用!

ユクターが登場する映画内撮影ナンバルは1曲目が、デーヴァナン(=デーヴ・アーナンド)主演「Jewel Thief」(1967)よりhonton pe aisi baat(曲:S・D・バルマン/歌:ブピンデールラター・マンゲーシュカル)。50th Filmfare Awardsでもラーニー・ムカルジーのパフォーマンスで登場ナンバルに選曲されていた。

某商店街アーケードで踊る2曲目が「Caravan」(1971)よりジーテンドラがトライバルのバンプ、アルナー・イラーニーに言い寄られるdilbar dil se pyaare (詞:マジュローフ・スルタンプリー/曲:R・D・バルマン/歌:ラター・マンゲーシュカル)。

ユクターの踊りはまずまずで、並みの若手女優よりよっぽど身体が動く。色香もじゅうぶんとあって、それだけにミス・ワールドの栄光から転落したような寒々しさを感じてしまう。印・パ・UAE合作「Market」(2003)を怪我のため降板した不運が本作への出演につながっているのだろうか。

(その他、大してフィルモグラフィが伸びない理由は、やっぱり身長180cmのせい?! シャー・ルク・カーンとの共演はまずムリ。バックダンサーより頭ひとつデカイ)。

モーシンがこれまた別のインド人女優サーナー・シャイクと某遊園地内で踊るナンバーは同じく「Caravan」より、アーシャー・ボースレーFilmfare Awards 女性プレイバックシンガー賞を受賞したヘレンの悩殺ナンバルpiya tu ab to aaja

マヒマー・チョウドリーを思わすサーナーはフェロモンたっぷりとあって、せっかく日本ロケまで呼んだのであれば、無名の日本人をヒロインに立てるよりサーナーの方がよっぽど映画の出来も上がっていただろうにと思うと非常に惜しまれる。

これらのミュージカル撮影は、ボリウッド観光地ロケのセオリーに則った、人止めしないスタイルには好感が持てるが、街頭ロケに不慣れな日本の通行人はいちいち驚いたりするなどリアクション過多で興を殺ぐことこの上ない。

ユクターのフィーチャー・ナンバルは衣装変えも用意されており、どうも本編とは別撮りのスケジュールと出資枠であったようだ。

一方で、ラージパルら主要キャストは来日すらしなかったようで、すべてムンバイーのセットや室内撮影(カンナー・ハウス)となっている。その屋敷がある設定のインディアハウス(JAPAN)は崖っ縁に建つ住宅だったりと、「天国と地獄」(1963=東宝)へのオマージュか。

シャクティは、「Shaadi Karke Phas Gaya Yaar」(2006)で見せた情感迫る芝居とはまったく異なり、ボリウッド俳優の芸域の広さを感じさせる。もちろん、終盤「サヨナラ〜、サヨナラ〜」と踊るのは、「Love
in Tokyo」におけるアーシャー・パレークのキモノ・ナンバルsayonara sayonaraからの引用。

脚本は垢抜けないものの、ラージパルの役名CDがチャックラダーリーで、正式名がデーヴェーンドラダーリーでDVD、父親がラクシュマンダーリーでLDというギャグは可笑しくてよい。だが、せっかくの名も後半に密輸絡みでマクガフィンとなる「CD」と大してリンクせず、活かしきれていないのが残念。

ヴィッキー・カーンの振付も低予算であるにも関わらず、巧みな工夫が為されていて感心してしまうし、モーシンら若手のアクションも真剣であるのだが、それだけでは面白くならないのが映画製作というもの。

世界各国を凱旋するボリウッド・メジャー「Krrish」(2006)や「Kabhi Alvida Naa Kehna」さよならは言わないで(2006)のフィーバーを他所に、07年の日印交流年をひっそりと迎えようする前、寝た子を起こすかのように「チャンドラムキ」Chandramukhi(2005=タミル)が劇場公開されてしまったりする状況の中、またも本作の出没でサブカル路線にインド映画の扱いが流れてしまいそうなのは大いに心苦しい。

このように日本でボリウッドの本流が定着しないのは、長きに渡ってインドを軽視して来た日本のカルマによるものか。同じ東アジアでも、韓国ではイムラーン・ハシュミー主演ではあるが「Gangster」(2006)が大々的にロケを行っているというのに。

注:「チャンドラムキ」は、10年以上前のモーハンラール主演「Manichitrathazhu(宝の小箱)(1993=マラヤーラム)のリメイク。「ムトゥ」Muthu(1995=タミル)もプリヤダルシャン「Thenmavin
Kombathu」
(1994=マラヤーラム)が原版。

*追記 2006,10,15
キャメラマン役ムスターク・カーンは、ゴーヴィンダの新作「Sandwich」(2006)でもキャメラマンを演じている。また、コレオグラファー役ラジュー・スリワスターワは、12th Screen  Awardsにタクシーワーラーのキャラで登場し、司会のディヤー・ミルザーとの掛け合いでアミターブ・バッチャンの物真似を見せていた。

*追記 2011,06,21
ケートキー・ダーヴェーは、ラージパル・ヤーダウ主演Hello Hum Lallann Bol Rahe Hain(ハロー、おいらラーッランだけど)」(2010)で再共演している。

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