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Yeh Teraa Ghar Yeh Meraa Ghar(2001)#269

2011.06.12
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!

Yeh Teraa Ghar Yeh Meraa GharYeh Teraa Ghar Yeh Meraa Ghar(君の家、私の家)★★★★☆ 01.12.12 UP/02.08.10 Re
イェー・テーラー・ガル・イェー・メーラー・ガル

原案・監督:プリヤダルシャン/脚本・台詞:ニーラージ・ヴォーラ/撮影:ジーヴァ/詞:イブラヒム・アシュク/音楽:アナン(=アーナンド)-ミリン(=ミリンド)/アクション:テヤガラジャン/振付:ラジュー・スンデラーム、ブリンダ、カーラー、ポニー・ヴェルマー/編集:N・ゴーパラクリシュナン/美術:サブー・シリル

出演:スニール・シェッティー、マヒマー・チョウドリー、パレーシュ・ラーワル、ニーラージ・ヴォーラ、ソォーラブ・シュクラー、サンジャイ・ナルヴェーカル、アスラニー、アンジャン・スリワスターワ
特別出演:ナグマー、アヌパマー・ヴェルマー

公開日:2001年10月12日(日本未公開)

STORY
村に住むダーヤーシャンカル(スニール)は、200万ルピーという負債のためボンベイの借家を売り出すべく、20年来住むサラソワティー(マヒマー)の一家を追い出そうと悪戦苦闘する。彼の友人警官O・P(パレーシュ)も駆り出されるが、サラソワティーに恋してしまい…。

Revie-U  *結末に触れています。
「ヴィラサット 愛と宿命の決断」Virasat(1997)のプリヤダルシャン監督が、「Hera Pheri(イカサマ)」(2000)に引き続き、スニール・シェッティーパレーシュ・ラーワルと組んだ軽妙なコメディ作品。

スニールはアクション・スターとしてその地位を得たが、本作では多少の立ち回りがあるものの、基本的に臆病な田舎の地主青年に収まっている。実生活ではブティック・チェーンを持つ彼が、日傘代わりのコウモリ傘と革鞄を常に離さず、しかも愛用のコウモリを襟元へ掛けて歩くのでシャツが首筋に引っ張り上がって実に野暮ったい様が笑いを誘う。

単身ボンベイへ乗り込んだダーヤーシャンカルは、事態が事態なので持ち合わせがない。そこで幼馴染みを頼るのだが、まず訪ねるのが「ビジネスで身を立てている」と言うババン(サンジャイ・ナルヴェーカル)。ところが、実は露店のシャルバットワーラー(ジュース売り)。しかも元締め(ニーラージ・ヴォーラ)がちょくちょくやって来て、彼の売り上げを霞めてゆく。それでも元締めの娘と恋仲になっていて、ボンベイで生き抜く強かさを見せる。

もう一人の幼馴染みが、ボンベイで警官業に従事するオーム・プラカーシュ。扮するは、主演のひとりパレーシュ・ラーワルである。Phir Bhi Dil Hai Hindustani(それでも心はインド人)(2000)やNayak(英雄)」(2001)など老け役ないし敵役が多くなった彼だが、本作では口髭も凛々しい精悍なインスペクター役。テルグ映画界のメガスター、チランジーヴィーがボリウッドに招かれて撮影された「The Gentleman」(1994)でも頭を丸める熱血警官を演じていた記憶が蘇る。

と言っても、O・Pが熱を入れるのは、ダーヤーと対立するサラソワティー。彼は彼女一家に圧力をかけ、友人を助けなければならないところ、可憐なサラソワティーに恋してしまうのだ。しかも、あのパレーシュが、バラの花一輪片手に愛を囁くミュージカル・ナンバルhusate ho rulate hoまで用意されている! ただし、メルヘンちっくなセット撮影は、あくまでO・Pのセンスの無さを表していることに留意したい。

さてヒロイン、サラソワティー役はマヒマー・チョウドリーである。
Lajja(恥)(2001)でも例の絶叫ぶりが披露されたが、本作でも本領発揮とばかりガンガン喚き立て、スニールもタジタジになるほど。氣の強い女を演じさせたら、当代一だろう。

ところが、ハイテンションなのは、マヒマーだけではないのだ。ボリウッド・スターにはシャー・ルク・カーンゴーヴィンダのように早口を売りとするスターが確かにいるが、作品全体のトーンがすべてアッパーなわけではない。

ところが、本作ではダーヤーシャンカルはもちろん、あらゆる登場人物がハイテンションで捲し立て、否が応でも生き馬の目を抜く大都会ボンベイの姿を見せつけ、どこか他のボリウッド映画とは一線を画する印象なのである。日本映画で言えば、イタリー流自己主張を身に付けた増村保造作品にあたるだろうか。

唯一ゆったり気味にしゃべるのが、サラソワティーの伯父ママ・カールー役のソォーラヴ・シュクラー。その代わり、奥の部屋に居座ったダーヤーを威風堂々とした押しで威圧する。暖色ライティングが煌々とする夜間シーンで、彼の磨き抜かれたつるっぱげがキラキラと輝いて見えるのが可笑しい。撮影のジーヴァは、確信犯であろう。

タイトルからして、ダーヤーとサラソワティーが恋に落ち「君の家とか、私の家とかでなく、ふたりで仲良く住みましょう」となるオチは予想出来る。が、その前にひと捻りあるのがニクイ。

O・Pがサラソワティーに恋したことを知ったダーヤーは、彼女の母を口説き、ふたりの縁談をまとめようと画策する。彼女が家持ち男と結婚すれば、当然家から出てゆくことになるからだ。ところが、この話がご破算となる。O・Pの姉がサラソワティーを精神病院で見かけた、と言うのだ。

ここで、母親から意外な事実が明かされる。彼女は結婚式の当日、父親を誤って感電死させてしまったのだ。そして、傷心のサラソワティーはしばらく入院生活を送っていたというわけである。それを知ったダーヤーは、無理強いして彼女一家を追い出す氣になれず、すごすごと村へと戻る。

だが彼の奮闘も虚しく、家屋は競売に賭けられた後で、一家揃って住み慣れた家を出なければならないのはダーヤーの方となる。仕方なくボンベイへと舞い戻った彼だが、サラソワティーの一家が立ち去ったことを知り、彼女を探し出そうとする。

果たしていつ頃からダーヤーは彼女を愛していたのか、サラソワティーを哀れんだだけではないのか? しかし、そのような推測は大した意味を持たない。インドの恋愛は結婚から始まるから。

ありきたりのオチながら快く思えるのは、なによりニーラージ・ヴォーラによる氣の利いた脚本とプリヤダルシャンの軽妙な演出センスにあるだろう。言ってみれば、意外にもべったりとギー臭くないのである。

本作はプリヤダルシャンが以前に作ったマライアラム映画のリメイクと言う話だが、ヒンディー化にあたって、つまりニーラージの手により大幅に改訂されているようだ。大抵のボリウッドの監督たちと違い、「ヴィラサット」はじめプリヤダルシャンは農村へのまなざしを持っているように思えるのだが、どこかソフィスティケートされたコメディセンスを感じた。

また、ダンサー役にナグマーが特別出演している。

*追記 2002,08,10
再見して、まず感心するのはマヒマーの芝居である。大抵、ボリウッドのスターはしっかりとした技量を持っているが、本作でのマヒマーは微妙な表情を巧みに伝えている。

例えば、第1幕。ダーヤーシャンカルが悪名高きインドの警官を傘に立ち退きを求めて来たと知ったサラソワティーが契約書を手に警察署を訪ねて掛け合うシーン。はじめ高飛車だったO・Pが女の涙に弱いとみるや、大泣きしてみせる。その一瞬の捉え方…。

そして、警察のジープで送り届けられ、勝ち誇ったようにダーヤーシャンカルを見やるその表情…。

もちろん、これは脚本・演出(編集)・役者の三位一体があってこそであり、ニーラージの脚本も大いに称賛しなければならない。

朝方、いきなり乗り込んで来たダーヤーシャンカルに、サラソワティーが苛立つのは単に立ち退きの問題だけではない。その前日、バスが来なかったために遅刻し上司に嫌みを言われるシーンが用意されており、そのストレスが彼女へのエモーションを増幅させる仕掛けとなっている(ちなみに、インドの女性は無用なトラブルを避けるため男性の上司に睨まれないよう腐心する、と言われる)。

その一方で、ニーラージはデカぼくろメイクの胴元役で登場し、ダーヤーシャンカルに投げつけたダイナマイトを愛犬がくわえて彼を追いかけ、爆発すれば髪の毛逆立ちという古典的なギャグ・シーンを演じてみせる。

スニールも垢抜けないダーヤーシャンカルという役どころながら立ち回りとなると、香港映画を手本とするアクション俳優たちと互角にからみ、その素早い動きには舌を巻くほどだ。

こう書くと、恋ありギャグありアクションありの典型的な大仰マサーラー映画に思われそうだが、初回レビューにも書いた通り、プリヤダルシャンの演出は極めて軽やかでクドクないのである。マハラジャ・エクスプレスのシェフの手による洗練された田舎風料理とでも言おうか。

このへんは、一般に知的水準が高く、単なる娯楽映画をよしとしないマラヤーラム語圏の観客に鍛えられた手腕なのだろう(余談になるが、プリヤダルシャンはしばしば自作のマラヤーラム語作品をボリウッド・スターに置き換えてヒンディー版のリメイクを行っており、「ムトゥ」のオリジナルとされる「Thenmavin Kombathu」のヒンディー版に「Saat Rang Ke Sapne(七色の夢)があるという)。

富豪映画を好む北インドの観客相手ではまずまずの興行に留まったが、日本におけるインド映画マーケットの裾野を広げ定着させてゆくには本作のような小粒でピリリとした佳作が最適と思だろう(もし配給会社にその氣があればだが)。

*追記 2011,06,12
プリヤダルシャンは、コウモリ傘を欠かさない野暮ったい主人公を「Khatta Meetha(酸いも甘いも)」(2010)でアクシャイ・クマールに引き継がせている。

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