Aashiq(2001)#267
Aashiq(愛しき人)01.03.31 ★★★★
アーシュク
製作:アニル・シャルマー/監督:インドラ・クマール/脚本:ラジーウ・カウル、プラフール・パレーク/脚本協力:ノシール・カタウ/台詞:アンワール・カーン/撮影:ハルミート・スィン/美術:ビジョン・ダースグプタ/作詞:サミール/音楽:サンジーウ・ダルシャン/振付:ラージュー・カーン、アフムド・カーン、ロリ・ポップ/背景音楽:シャシ-プリータム/アクション:アッバース・アリー/編集:サンジャイ・サンクラー
出演:ボビー・デーオール、カリシュマー・カプール、アヌパム・ケール、ラーホール(=ラーフル)・デーヴ、ジョニー・リーヴァル、アンジャン・スリワスターワ、スミター・ジャイカル、ディナー・パータク、ムリナール・クルカルニー、アショーク・サラーフ、ムケーシュ・リシ、ナーシル・カーン、ヴラージェーシュ・ヒルジー、カシュミラー・シャー、ヴィールー・クリシュナン
公開日:2001年1月26日(日本未公開)
STORY
仲間の駆け落ちを手伝った学園のヒーロー、チャンドゥ(ボビー)は、プージャー(カリシュマー)に見初められ、あらゆる場所で電話呼出を受けるモーレツアタックにより彼女と恋に落ちる。が、プージャーは仲間の裏切りから人身売買組織に拉致され…。
Revie-U
冒頭、人身売買マフィアが目撃した主婦を焼き殺すというショッキングなオープニングから一転、前半はボビー・デーオールに恋にしたカリシュマー・カプールが電話攻撃(あらゆるところで、電話で呼び出す)を仕掛ける恋の駆け引きがメイン。もちろん、ダンス・シーン満載だ。モデル出身のラホール(=ラーフル)・デーヴが怪奇なまでの悪役を演じ、「Jungle」(2000)で女盗賊で新境地を開いたカシュミラ・シャーが踊り子役で登場。
「Humra Dil Aapke Paas Hai(私の心はあなたのもの)」(2000)もそうであったが、場面によって作品のトーンがまったく変わるため、欧米映画の規準からすると正直言って何を楽しめばいいのか判らなくなるだろう(苦笑)。
何しろ、ボビーは警官(ムケーシュ・リシ)、マフィア(ラホール)と二重対立の上、ムケーシュは追跡中にビルから落下し、ジョニー・リーヴァルの花嫁を<小人(CGIでなく)>にしてしまうのだ!!!!
さらにマフィアに刺され苦悶するボビーが見る波打ち際で愛を交しあうふたりの映像がカットバックするミュージカル・ナンバルは、シュールを超える。
ストーリーとしては完全に破綻している上、「ゴッドファーザー愛のテーマ」をディスコ演歌風にアレンジしたデュエット・フィルミーソング「tum kya jaano dil(君は心を知ってるの?)」がまた絶品。これが純愛を謳い上げた「Mann(想い)」(1999)のインドラ・クマール作品かと思うと、氣分はもう迷宮。
*追記 2011,06,07
オープニングは、人身売買組織の全貌。敵役となるラーホール・デーヴはこれがデビュー作ながら、売られる娘の母を灯油で焼き殺すというショッキングな登場スケッチ。しかもジングルはショッカーの怪人を思わせる雄叫び。
このホラー・テイストから一転、<ドリーム・ガール>カリシュマーがボビーに押しまくる学園物が基盤となるばかりか、すかさず「Raja Hindustani」(1996)の女装怪優ヴィールー・クリシュナンをフィーチャルしたダンス・ナンバルへと突入するなど、さすが<マサーラー・カルトの巨匠>インドラ・クマール監督。
インドラのワルノリはこれに収まらず、終盤、なんとジョニー・リーヴァルが花嫁共々、小人にデジタル圧縮され、前年にスーパー・デビューを果たしたリティク・ローシャンの「Kaho Naa…Pyaar Hai(言って…愛してるって)」(2000)のタイトルナンバルを踊る始末!
リティクはカリーナー・カプールがヒロインを務めたトゥシャール・カプールのデビュー作「Mujhe Kucch Kehna Hai(私に何か言わせて)」(2001)や「Tera Mera Saath Rahen(おまえと俺は一連託生)」(2002)でも同様に引用パロディされていたほどだから、そのブレイクぶりの凄まじさが解ろうというもの。
さて、バックスコアを手がけるシャシ-プリータムは、ソロ音楽監督として「Dhoom(騒乱)」(2004)でブレイクする前は「Daman(制裁)」(2001)やジート-プリータムとしてデュオを組んでいたプリータム・チャクラワルティーか? アビシェーク・バッチャン N ラーニー・ムカルジー主演「Bas Itna Sa Khawab Hai…(夢はほんのこれだけ…)」(2001)〜「kya hua(どうした?)」の仕立て直し、で実にプリータムらしい(と言うか、リリース(公開)日からすると本作が先行)。
その他も、S・ワンダー「I jusy say I love you」なども流用されていることから、CD未収録の「愛のテーマ」もプリータムの仕事だろうか。
路面を移動ショットで映し出すオープニング・タイトルバックは「ニキータ」への敬愛?
こうした引用演出だけでなく、カリシュマー扮するプージャーの誕生日に夜空へ打ち上げ花火で「Happy Birthday〜」と描く(デジタル処理)のは、シャー・ルク・カーン主演「Rab Ne Bana De Jodi(神は夫婦を創り賜う)」(2008)に先駆ける。
この感動を狙った場面で堂々と他の作品「Dhadkan(鼓動)」(2000)の大看板をバックに臆面もなく撮影してしまうのも映画愛に満ちたボリウッドらしい懐の広さ。
映画愛といえば、ボクシングの練習シーンでボビーにパンチを当てた友人が「ブルース・リー、ジャッキー・チェン、シャー・ルク・カーン、サルマーン・カーン…」と調子に乗っているところをノックダウンさせたボビーが「ダルメンドル!」と言い放つのもよい(「Yamla Pagla Deewana(阿呆に馬鹿に恋狂い)」参照)。
インドラ監督作「Beta(息子)」(1992)のプロローグに続き、「Kitaab(本)」(1977)などの名物女優ディナー・パータクが姿を見せているのも嬉しい。