Dil Ne Phir Yaad Kiya(2001)#264
Dil Ne Phir Yaad Kiya(心がまた疼き出す) 01.11.08 ★☆
ディル・ネー・ピル・ヤード・キヤー
製作:マンスール・アフムド・シッディークィー/監督:ラージャート・ラーワイル/脚本:ラージュー・サイガル、S・M・アハレー、サンディープ・ボーミック/台詞:ジャーヴェード・シッディークィー、ボールー・カーン、アマン・ジャフェリー/撮影:H・ラクシュミーナラヤン/音楽:アーデーシュ・スリワスターワ、ウッタム・スィン/詞:サミール/背景音楽:アンジャン・ビスワース
出演:ゴーヴィンダ、タッブー、プージャー・バトラー、ファラーズ・カーン、ヴィネイ・アナン(=アーナンド)、キラン・クマール、サダーシヴ・アムラープールカル、ムスターク・カーン、グッディー・マールティー、ティクー・タルサニア、ラザック・カーン、デーネーシュ・ヒングー、ヴラージェーシュ・ヒラジー、サンジャイ・ゴーラディア
公開日:2001年9月7日(日本未公開)
STORY
アメリカに留学していたラーホール(ヴィネイ)は、夢の中で美しい女性にキスされる。ムンバイーに帰ったラーホールは、夢で見た美女ソニア(プージャー)が旅行代理店へ入るのを見る。一念発起したラーホールは、彼女が参加するモーリシャス旅行のツアーコンダクターとなって、彼女と結婚。モデル・エージェンシーも始め、順風満帆に見えたものの、トップモデル、ロクシュニー(タッブー)を獲得したことから不吉な展開となる。と言うのも、彼女は一目惚れしたプレーム(ゴーヴィンダ)を事故で失い、精神を病み、プレームを想わせるラーホールに付き纏い、彼の妻ソニアを殺そうとする…。
Revie-U *結末に触れています。
謎が解けた。
コメディ・スターNo.1、ゴーヴィンダ主演作にしてはムンバイー第1週の客入りが18%(!!)と異常に低く、ボリウッド・レビューでも黙殺されており、長らく不思議に思っていたのだ。オープニングのクレディット・ビリングでもゴーヴィンダ、タッブーが筆頭に来るものの、彼らが登場するのは、なんとインターミッション直前! それも一瞬とは、どういうことだ?!
そう、これはゴーヴィンダ主演ではなく、彼の甥っ子ヴィネイ・アナン(=アーナンド)の再デビュー主演作なのであった。しかも実質ヒロインは地味なプージャー・バトラーとあって、これでは誰も観に行かないはず。前半の団体旅行メンバルに錚々たる個性派脇役が並んでいるが、当然、彼らで客が呼べるわけもない。リリース前に、これらの情報が知れ渡っていたのだろう。アムリトサルなど1週間に101人(?!)というのも頷ける。
義理堅いゴーヴィンダは、たまにこういうことをするようで、往年のスター、デーヴァナン(=デーヴ・アーナンド)久々の監督・出演作「Censor」(2001)もゴーヴィンダ主演扱いながらコケていたのが、実はこういう理由だったと思われる。
それにしても、ストーリーテリングが陳腐。
前半のモーリシャス団体旅行はゴーヴィンダ主演「Hadh Kar Di Aapne」(2000)、後半、モデル役のタッブーが主人公夫婦にストーキングするのは「Pyaar Tune Kya Kiya..(君に恋をした…)」(2001)の流出したプロットをイタダキ。タイトルソングの甘ったるいメロディーが全編貼り付けっ放しというのも、ゴーヴィンダ主演「Albela(美しききまぐれ)」(2001)を思わせる。
しかし、錯乱したウルミラー・マートンドカルがナイフを振り回し、最後は精神病院に入ったまま、という救いのない「Pyaar Tune Kya Kiya…」のエンディング同様、タッブーが拳銃をプージャーに突きつけ、逆に射殺されてしまうオチとは…。
果たしてプロデューサーたちはこんなネガティヴなアンハッピーエンドを用意しておいて、最初のデビューでカスリもしなかったヴィネイを再び売り出そうと思ったのだろうか?
本編の内容及びクオリティに反して、カナダ(カルガリー、エドモントン)、ロンドン、モーリシャスと海外ロケしまくり。特にモーリシャス・ロケはツアー客に扮した俳優たちも完全に慰安旅行のノリだ。
メンバルはと言うと、ティクー・タルサニア&グッディー・マールティのジャンボ級夫妻、ホテル内の備品泥棒が目的のムスターク・カーン、ラフ過ぎるサダーシヴ・アムラープールカル、酔っ払いの演技が臭いヴラージェーシュ・ヒラジー、一人ノリノリのラザック・カーン、ビーチでビキニを撮りまくるカメラオヤヂのデーニーシュ・ヒングー。
また、ラーホールの父親役にキラン・クマール、銀行融資係に「Mann(想い)」(1999)のケタケタ笑いサンジャイ・ゴーラディアがキャスティングされている。
今回、一番の災難は、お飾りヒロインのタッブー。
インターミッション直前になってようやく登場する彼女は沈欝な表情を隠せず、「なんでこんな仕事受けちゃったんだろう・・・」という後悔がありありと感じられる。ナショナル・アワード受賞歴を持つ彼女にしては損な役回りで、観てる方も何故彼女がヴィネイにぞっこんとなるのか、納得出来ない。
設定上は、精神科に通うロクシュニーがラーホールに初めて会った時、自殺しようとしたところを早口で救ってくれたプレームを重ね合わせしまうからなのだが、それもヴィネイがゴーヴィンダの甥っ子という理由からなので、本編の中の世界観だけでは受け入れられないのだ。
ヴィネイ・アナンは、「Lo Main Aagaya」(1999)でデビュー。陽氣なただの兄チャンという印象で、ゴーヴィンダ譲りのなかなか軽やかなダンスを見せるものの、肝心のコメディの演技が浮ついている。しかし、すでにアーミル・カーンとの共演作「Dil Kya Cheez Hai」、ジャッキー・シュロフと「Mulaqwaat」がアナウンスされており、今後もコネで出続けるのだろう…。
そうそう、ゴーヴィンダはタッブーとのミュージカル・シーン2曲+アルファ計正味15分の出演。特別出演と謳った方がスマートであったのではないだろうか?
*追記 2011,06,02タイトルは、ダルメンドラとヌータン(カジョールの伯母)主演「Dil Ne Phir Yaad Kiya」(1966)からの借用。
さて、本作は駄作ながら、ソーヌー・ニガムとアルカー・ヤーグニクがプレイバックするタイトルソングは実に心地よい。
ヴィネイはその後、数本の映画に出演して引退? もちろん、スターになれず。