Meenaxi(2004)#262
「Meenaxi(三都物語)」★★★☆
ミーナークシー
製作:ライマー・ファイザー・フセイン/原案・台詞・作詞・監督:M・F・フセイン/原案・台詞・脚本・共同監督:オワイス・フセイン/撮影監督:サントーシュ・シヴァン/作詞:ラーハト・タンドーリー/音楽:A・R・ラフマーン/振付:ヴァイバヴィー・メルチャント、アスタード・デブー、レアーナー・チッタリスティー、パップー-マロー、レモ/美術:シャルミスター・ローイ/特殊メイク:ミッキー・コントラクター/編集:A・スリーカル・プラサード
出演:タッブー、ラグヴィール・ヤーダウ、ナディラー・バッバル、クナール・カプール(新人)、シャラード・サクセーナ
公開日:2004年4月2日(日本未公開)
Screen Awards:撮影賞(サントーシュ・シヴァン)
Zee Cine Awards:美術監督賞(シャルミスター・ローイ)/撮影賞/現像賞
STORY
古都ハイデラーバードの旧家に暮らすナワーブ(ラグヴィール)は、遅筆で知られる人来作家。新作の執筆に取りかかった彼の前にミナークシー(タッブー)と名乗る謎めいた女性が現れ…。
Revie-U
2004年度制作のアート系小品だが、これがまずもって楽しめる作り。監督はM・F・フセインといって、インド美術界の大家。かのマードゥリー・ディクシトをモチーフにインド女性画を作品を発表し続け、さらに彼女をヒロインに迎え「Gaja Gamini」(2000)を作ったほどの入れ込みよう。本作も当然、マードゥリーをイメージキャストしていたというが、彼女が結婚して引退してしまったために断念。
代わりに選ばれたのが、かのタッブー。例のぶっきらぼうな台詞まわりで登場、段取りなしの雑な芝居に見えて時よりはっとするような表情を見せる。踊りの方もやる氣がある時とない時のばらつきがあるように感じられるのがまた彼女らしくて微笑ましい。
ミッドナイト・ブルーのプレーン・サーリーに包まれた彼女はマードゥリーに勝さるとも劣らず目を引き、ダンス・ナンバル中の黒いサーリーから覗ける逞しい腕が大いにそそる。
ストーリーはというと、ある売れっ子作家ナワーブにミーナークシーと名乗る謎めいた女が現れ、彼に新しい小説をせがむ。ナワーブは近場の人間をモデルに創作し始め、劇中のヒロインとしてもタッブー扮するミナークシーがこれを紡いでゆく。
劇中のヒーロー役に抜擢されたのが、「Range De Basanti(浅黄色に染めよ)」(2006)のクナール・カプール。下町のしがない自動車修理工だが、劇中劇では凛々しい好青年を演じる(ただし、アテレコ。「Paap」のジョン・エイブラハムと同じダビング・アーティスト)。
その後は、ブレイクするでもなくそこそこのサブリードで好演しており、シャー・ルク・カーンとの共演作「Don 2」(2011)が期待。
目を見張るのは、撮影のサントーシュ・シヴァン、美術のシャルミスター・ローイ、それに音楽のA・R・ラフマーンと若手コレオグラファーが多数投入されていることだろう。
一部、アート系らしい小規模な撮影を感じさせるシークエンスもあるものの、本作の要であるミュージカル・シーンともなると、まさしく<絵>を見るように美しい。色鮮やかに施されたフレームは、ボリウッドならではの心地よさ。
サブ・タイトルの「tale of 3 cities」とあるように、現実シーンのハイデラーバード、劇中シーンのジャイサルメール、欧州ロケのチェコ共和国の<三都物語>でロケされているばかりか、ポスト・プロダクションもムンバイー、ハイデラーバード、チェンナイの三都でなされている。
ところで、本作がユニークであるのが、主人公となるナワーブ役が「Peepli Live」(2010)のラグヴィール・ヤーダウであること。これがなかなかにダンディでよろしい。クレジットもタッブーに続くセカンド・ビリングとあって、彼の代表作には間違いなし。
サポーティングは、「Bride & Prejudice」(2004)の大女ナディラー・バッバル。
「Tumko Na Bhool Paayenge(君を絶対忘れない)」(2002)以降、「Saathiya(伴侶)」(2002)など父親役へシフトした銀髪シャラート・サクセーナの顔触れが嬉しい。
M・F・フセインの演出は手練れているとは言い難いが、ボリウッドらしい妄想力とイスラーム文学志向が味わい深い。