Mili(1975)#257
「Mili」ミッリー ★★★★
製作:N・C・シッピー/製作・監督・編集:リシケーシュ・ムカルジー/
原案・脚本:ビマル・ダッタ/台詞:ラヒ・マスーム・ラーザー/撮影:ジャイワント・R・パタレー/作詞:ヨーゲーシュ/音楽:S・D・バルマン/美術:アジート・バナルジー/振付:ゴーピー・クリシャン/衣装デザイン:シャリニー・シャー
出演:ジャヤー・バードゥリー、アショーク・クマール、アミターブ・バッチャン、ウシャー・キラン、シュバー・コーテー、スレーシュ・チャトワル、アルナー・イラーニー、ランジート、ネイナー・アプテー、アールティー、シャハナー、チャンドラ、アラビンド、ナンディター・アラス、ゴーピー・クリシャンズ・スクール
カメオ出演:アスラーニー
STORY
家族から愛される健氣なミッリー(ジャヤー)は、団地の最上階に住む酒飲みの青年シェーカル(アミターブ)に惹かれる。彼女や幼い子供たちとの交流からシェーカルは心が癒され始めるが、その矢先、ミッリーは…。
Revie-U *結末にやや触れています。
離陸するエア・インディア機を見上げる老父(往年の美顔スター、アショーク・クマール)の語りから始まる。一家は当時まだ目新しかっただろう、高層建築の集合住宅に住んでいて、若きジャヤー・バードゥリー演ずるタイトルロールのミッリーは家族はもとより住民や子供たちから愛される若き女子大生。
そんな彼女だが、ある日、ミッリーは妙にピリピリして家に戻り、自室へ籠もってはベッドに泣き伏せる。近所の子供たちや女連中から帰宅したばかりの父まで揃って彼女の異変にあたふた。が、これは掴みの悪戯。彼女は父親が優しく声をかけるのを待って、笑いだすのだ。
ミッリーはいつも笑顔を絶やさない明るい性格で、周囲から愛されているキャラクター。そう言えば、プリティー・ズィンターが未婚の母となる「Kya Kehna!(なんと言っても!)」(2000)でも前半、彼女を愛して止まない家族の姿が描き込まれていたのを思い出す。
一方、屋上のテラスに面したペントハウスに住むアルコホリックの<高等遊民>がいる。深夜、オープンリールのテープデッキでガザル(イスラーム音楽の恋愛歌)を大音量で流し、アルコールに浸るシェーカルこそ、若きアミターブ・バッチャンの役どころ。
ミッリーが苦情を申し立てに行くと追い出され、子供を引き連れて再度シュプレヒコール攻撃をかけるのだが、この時、激怒したシェーカルに子供のひとりが「氣をつけて、ミッリー! この人は銃を持ってくるわ。だって、お父さんがお母さんを撃ち殺した人よ」と口を滑らす。シェーカルは心優しき青年だが、それがトラウマとなっていて、今は両親の遺産を食い潰しながら、アルコール漬けの日々となっていたのだった。
天真爛漫で快活な娘ぶりを見せるジャヤー・バードゥリーは、アミターブ・バッチャン夫人。ふたりはすでに1973年に結婚していて、翌年にはアビシェークを出産。 「Sholay」炎(1975)の未亡人役と同年公開とあって、中学生にしか見えなかった「Guddi(お人形さん)」(1971)とは異なり、娘役はやや厳しいが珍しく舞踊シーンを披露。
監督のリシケーシュ・ムカルジーは、小粒映画の名匠。かのグルザールともよく監督/脚本のコンビを組み、小市民をみつける2時間サイズの小品を多く手がけた。
ジャヤーは、このリシケーシュ作品で常連ヒロインを務めた。
また、アミターブもリシケーシュ作品で磨かれ、本作でも荒削りながら物悲しい青年を好演。
こうしてシェーカルは、ミッリーや子供たちと交流することで癒されてゆく。しかし、ミッリーの運命はあまりにも短く…。
ミッリーという役名がMil(みつける・探す)から来ており、果たして彼女は何をみつけたのか。