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ブック・レビュー file.2「3 idiots」シナリオ本

2010.12.14
3 Idiots screenplay

書肆なゆた屋

「3 idiots The Original Screenplay」
OM Books International, 2010
English-Hindi / 230×180×30mm / 430 pages
書肆なゆた屋/3000円(2010年9月現在/送料別)

このところ映画脚本の出版が続く中で、ゼロ年代トップ1ヒットとなった3 Idiots」3バカに乾杯!(2009)の脚本がソフトカバーで加わった。英語のト書きにヒンディー台詞(デーヴァナーガリー表記)と英訳が併記されている。その他、キャラクター設定についてのキャスト・インタビュー、16ページに渡ってカラー・スチルもたっぷり掲載。秀逸なのは、原案・脚本・監督のラージクマール・ヒラーニーが学生時代を振り返って、分離独立ですべてを失った父親が裸一貫で起こした事業を手伝いながら公認会計士の道に進みつつも、演劇に傾倒し、FFII(国立映画テレビ研究所)へ入学した青春時代を綴っている点であろう。かつて日本も敗戦により焦土と化した国土を復興させ、奇跡の高度経済成長へと至ったが、まさしく現在のインドもそれに等しい状況にあり、「3 Idiots」が未来を担う若者へのメッセージとして作られたことが解る。
ゼロ年代において最も成功した監督のひとりであるラージクマールだが、FFIIの卒業直後から華々しい成功への道が敷かれていたわけではない。映画産業にまったく関わりのない家系に生まれ、90年代は映画編集やプロモ制作などずっと日陰道を歩んで来た。彼は言う、「細い道(遠回り)を選ぶことを恐れるな。信念があれば、必ずたどり着く」と。
(ナマステ・ボリウッド #25 2010年9/10月号初出)

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