逆レビュー(4)アーティスト
ボリウッド的見地から非インド映画を鋭くレビュー。不定期連載の第4弾は現在上映中の「アーティスト」を逆レビュー!
file.4 「アーティスト」(2011)製作 トマ・ラングマン
監督・脚本・編集 ミシェル・アザナヴィシウス
出演 ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ、ジェームズ・クロムウェル
STORY
ハリウッドのサイレント映画スター、ジョージ(ジャン・デュジャルダン)は、ふとした事から知り合ったエキストラ女優のぺピー(ベレニス・ベジョ)にを施す。ふたりは心引かれながらも、ジョージがサイレント(無声映画)にこだわりトーキー(音声映画)を軽視した事からスターの座を追われ、逆にトーキーのホープとしてペピーがスターダムに昇る事となり…。
Revie-U
サイレント映画、と身構えて行くと肩透かしを食らう。タイトルバックからして扇情的なスコアが流れる。これは劇中早々に種明かしされるが、上映に合わせて劇場付きの楽団が生演奏を行う(これにストーリーを説明するカツベン=活動弁士が付くが本作では登場しない)。
ボリウッド・ファンとしては、主人公が通う撮影所キノグラフ・スタジオの風景がシャー・ルク・カーン製作・主演「Om Shanti Om」オーム・シャンティ・オーム(2007)が思い重なり妄想炸裂する事、請け合い。
余談だが、タイトルにある「アーティスト」とは、日本では画家やミュージシャンの同意語とされるが、フランス語で「artiste」と綴れば「舞台芸術家、俳優、歌手、舞踊家」を示し、北インドの英語でも同様に用いられる。
映画の要となる本作のクライマックスも「ブラックスワン」がバレエ公演を題材としながら終盤、舞踊で魅せきる事なく逃げの手を打っていたのとは異なり、実に映画の力で真っ向から勝負しており、ボリウッド・ファンとしても唸らせられるのがよい。
サイレント期とは言え映画製作物であり、ごくさりげない役にマルコム・マクダウェル(「時計じかけのオレンジ」)など通好みの役者がカメオ出演しているのも、映画ネタが王道のボリウッドに通ずる。
ボリウッド・スターに置き換えるなら、主演のジャン・デュジャルダンとベレニス・ベジョは、さしずめアクシャイ・クマールとマリッカー・シュラワトだろう。
ぜひともボリウッド版「アーティスト」を見てみたいところだ。
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