【+43号記事紹介】連載コラム「革命のダンス―映画が社会を変える」(1)高倉嘉男
「ナマステ・ボリウッド+43号」記事紹介
革命のダンス―映画が社会を変える
高倉嘉男
ヒンディー語映画界は21世紀の初頭に劇的な変化を経験した。映画の「産業化」という法制的な改善や、マルチプレックスの普及という施設設備面での革新などが変化の原動力となり、ヒンディー語映画はかつてないほど多様化し、質を向上させた。テレビやビデオの普及によって、一時的に「持たざる者の娯楽」に陥った映画館での映画鑑賞は、一転して「クール」な行為となり、都市在住中産階級の特に若者が映画館の中心的なパトロンとなって映画産業を支えるようになった。それに応えるように映画界も若者をターゲットにした作品作りに尽力した。インドの人口の半分は25歳以下の若者が占める。映画が若者の心を捉えるようになったことで、映画が社会に与える影響力も増大した。それに呼応するように、映画はたとえ商業映画であっても果敢に社会の中に題材を求め、人々に何らかの社会的メッセージを送るようになった。映画は今まで以上に如実に社会を反映するようになり、政治や社会を動かすほどの力を持った映画も出始めた。この連載では、00年代から10年代にかけて観察された、ヒンディー語映画とインド社会の間の相互影響と、それによって引き起こされたと考えられる革命的な社会情勢変化を追って行く。また、伝統的にはヒンディー語映画の本拠地はムンバイーであるが、この連載の主な舞台となるのは首都デリーである。これは、この期間にデリーがヒンディー語映画界においてプレゼンスを増したことと密接に関係しており、そのことについても随時触れて行きたいと考えている。
第1回
ジェシカ・ラール殺人事件
革命の種は20世紀末に蒔かれていた。
1999年4月29日から30日未明にかけて、南デリーのレストラン、タマリンド・コートでジェシカ・ラールという女性が殺害される事件が発生した。いわゆるジェシカ・ラール殺人事件である。
ジェシカは1965年1月5日生まれのモデルで、デリーの社交界ではよく知られた人物であった。この日、タマリンド・コートの女主人ビーナー・ラマーニー主催のパーティーが開かれていた。ビーナーはファッション・デザイン、作家、レストラン経営などを手掛けるデリー社交界の花形で、南デリーのハウズ・カース・ヴィレッジをファッション・ハブに育て上げた張本人でもある。パーティーの名目はビーナーの夫の送迎会だったとされる。
以下、コラム本文は、「ナマステ・ボリウッド+43号」をご覧下さい。
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プロフィール:高倉嘉男(たかくら よしお)/別名:アルカカット。1978年、愛知県豊橋市生まれ。東京大学文学部卒。デリーのジャワーハルラール・ネルー大学でヒンディー語博士号を取得。インド在住歴11年。ウェブサイト「これでインディア」、ブログ「バハードゥルシャー勝」管理人。今回、リストアップした「デリー派」監督の作品では、イムティヤーズ・アリー監督の「Jab We Met(私たちが出会った時)」(2007)を高く評価。
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