＋43号記事紹介「ボリウッドで知るイスラーム文化」 : 日本で唯一のボリウッド情報誌：Namaste Bollywood《インド映画》

＋43号記事紹介「ボリウッドで知るイスラーム文化」

2015.12.12

12月12日（土）、本日よりイスラーム映画祭2015が渋谷ユーロスペースにて開催され、南アジアからはパキスタン映画「Khuda Kay Liye」神に誓って（2007）が13日・15日・17日に上映。ボリウッドの名優ナスィールッディーン・シャーが出演しているが、ボリウッド映画にも多くイスラームを題材にした作品があり、ボリウッド映画を紐解くキーワードとしてもイスラームは欠かすことが出来ない。そこで、「ボリウッド映画におけるイスラーム文化」を読み解いた「ナマステ・ボリウッド＋43号」もこの機会にぜひ一読ください。

+43号では、７ページに渡ってボリウッド映画に登場するイスラーム文化・服装・お守り・作法などを詳しく解説！

＋43号巻頭特集「ボリウッドで知るイスラーム文化」
３カーンはイスラーム信者だった
裕福な両親の下、日々愛されて過ごすヴィール（サルマーン・カーン）。あるセレモニーで、遠くムンバイーからやって来た男達に襲われる。実は、国境紛争で戦死した息子の遺灰を川へ撒く際に負傷し記憶を失った彼が流れ着き、ヒンドゥー的な解釈から息子の転生として受け入れ暮らしていたのだった。真相を知ったヴィールは、本当の自分を探すためムンバイーに赴くが、なんとマフィア撲滅に協力していたムスリム（イスラーム信者）のアリーだった！
この「Tumko Na Bhool Paayenge（君を絶対忘れない）」（2002）は、ボリウッドに馴染んだ人ほど、祝祭ナンバー「mubarak Eid mubarak（イード、おめでとう）」でレース編みの白い丸帽ターキーヤを被って踊るサルマーンに奇妙な感覚を抱いた事だろう。何しろそれまで、初期の「Sanam Bewafa（愛の裏切り）」（1991）１作を除いてプレームやラージ等、ずっとヒンドゥー役を演じて来たからだ。サルマーンはじめ３カーンと言われるトップ・スターは皆、ムスリムながら映画の中では毎回ヒンドゥーを演じ続け、それまでアーミル・カーンがカナダ合作「1947：Earth」1947：大地（1988）、シャー・ルク・カーンはタミル映画ベースの「Hey Ram（神よ）」（2000）ぐらいしかムスリム役を演じた事はなかった。
ヒンドゥーが大多数（現在では人口の８割）のインドだけに、往年のスター、ディリープ・クマールも俳優デビュー（独立前の1944年）するにあたって生誕名ムハンマド・ユスフ・カーンからヒンドゥー芸名を名乗る必要があった。ムスリム名でそのままスターになったのは、故フェーローズ・カーン（1960年デビュー）からだと言われる。
1947年、インドは英国から東西パキスタンと分離独立したが、国内に残ったムスリムに優遇処置を執り、ボンベイで作られるヒンディー語映画も血で血を洗った民族闘争の記憶を避けるようにしばらくは宗教色を廃した無国籍映画のような傾向にあった。しかし、90年代前後からヒンドゥー・ナショナリズムが激化し、印パ対立の緊張感が高まるにつれ、露骨にパキスタンを悪と描く安手のアクション映画が作られるようになったが、また一方でムスリムとの融和を説く作品も製作された。
武器密輸シンジケートを追うアーミル主演「Sarfarosh（命懸け）」（1999）では、警部補サリーム（ムケーシュ・リシ）がムスリム故に冷遇されていると嘆き、アーミル扮するヒンドゥーの警視監と対立する。出自と職業身分制度を持つヒンドゥーに対し、イスラームは神の下に平等を説くが、南アジアへ伝播するにつれ、西方出自の「アシュラーフ（貴人）」と改宗者「アジュラーフ（下層民）」に区別され、しかもイスラーム共和国として建国したパキスタンでも当初こそ「ムハージル」と呼ばれる移民が力を発したが、次第に先住４民族が主権を獲得するようになり、「Sarfarosh」では「避難民」と差別され続けた反動からガザル歌手（ナスィールッディーン・シャー）がより自国民になるべくISI（軍情報部）に係わって悪事に手を染めていた。

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では、そのイスラームとは何か？　「Sarfarosh」の中で先のサリームがモスクで祈りを捧げた後、シンジケートの一味から「何故ムスリムなのに味方に付かない？」と接触を受け、逆に「ムサルマーンの意味を解っているのか？」と問い質す。「唯一無二の神に従う者だ」との返答に「それだけではない。ムサルマーンとは、ムッサ・アスラーマ・イマーン。どんな時でも正しくあり、確信は揺るがず、花のように純粋な人だ」と正すのだ。
（すぎたカズト）

以下、続きの７ページ分の特集記事は、「ナマステ・ボリウッド＋43号」をご覧下さい。
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