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カタックを語る。#05 Salma(1985)

2011.01.17

みやびカタックダンスアカデミー

Devdas(2002)でマードゥリー・ディクシトに振付を施したインド人間国宝Pt.ビルジュ・マハラジ師に直接師事したインド宮廷舞踊家、佐藤雅子女史みやびカタックダンスアカデミー主宰)による「ナマステ・ボリウッド」連載コラム。華麗な舞踊について月1でアップしてゆきます。

カタックを語る。
#05 優美なる麗人~「Salma(1985)
(ナマステ・ボリウッド#07号/2007年8月号初出)

ラーホール出身のラーマナンド・サーガル監督によって作られたSalma(1985)は、極彩色が常識とされるヒンディー映画の中でも異彩を放つ。ヒロインであるラクナウからの歌姫役はパキスタン出身のサルマー・アガー。ペルシアの血をひいているのか、色が白く、そして時折、琥珀色にも見える、澄んだ蒼い瞳を持つ薄幸の美女は、インド人特有のやや過剰な表現はあまり得意とせず、シンプルな演技が身上だ。詩を愛する乙女、サルマーが歌う歌、踊る踊りは情感に溢れ、瞳は純粋な心を物語っている。「イノセント」という言葉が最も似合う美女である。
20世紀初頭、タワーイフ達は慶事に招かれ、歌舞を披露することが多かった。人気のタワーイフは賞賛されるが、しかし、社会的な地位は低い。サルマーも例に漏れず、貴人との恋は常に哀しみが伴った。
サルマーの衣装や装飾品、小物のセンスが素晴らしい。繊細で、たおやかだ。踊り子の衣装に金糸・銀糸系が多いのは彼女の肌の色が格別に白いためだろうか。青い薄絹のアンガルカを着こなし、銀細工のジュエリーを身につけて品良く優雅に歌い踊る様を観ていると、まるで自分がメイフィルの中にいるような錯覚に陥ってくる。テクニック重視の舞踊ばかり観てきたせいか、このような落ち着いた歌舞が観たかったのだ、とも切に思う。人間バランスが重要ということか。

佐藤雅子/インド宮廷舞踊家。1995年渡印、インド人間国宝Pt.ビルジュ・マハラジ師に直接師事。師の許しを得て、2005年帰国。みやびカタックダンスアカデミーを設立し、2008年、東京都千代田区麹町に専用スタジオをオープン。古典のカタック・クラスの他、ボリウッド・カタック・クラスも併設中。

Salma

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