インド映画はお祭りがいっぱい(1)ディワリ
早稲田大学でボリウッド映画を題材にインド学を研究している高橋 明氏による「ナマステ・ボリウッド」連載コラム。毎回、映画に登場するインドのお祭りを月1でアップしてゆきます。リアル・ボリウッド講座も2010年10月16日(土)に開講!
1章 ディワリには子供たちが帰ってくる
(ナマステ・ボリウッド #15/2008,11月号)
この夏、ボリウッドベストで観たスクリーンの印象も新たな「家族の四季」Kabhi Khushi Kabhie Gham…(2001)。記憶のなかの兄(シャー・ルク)との約束を果たし成長したリティックがディワリの休暇で帰ってくる。しかし祭りの準備にあわただしくも華やいでいるはずの家が何故かしずんでいる。何かが、誰かが足りないのだ。余生の短いことを感じて、シャー・ルクが家を出た事情を話し始めるおばあさん(父方の祖母)。その話も、華やいだディワリの儀礼の最中ようやく帰ってきて家族に喜びをもたらしたシャー・ルクの思い出から始まる。各々が持つターリー(供物盆)に乗せられたたくさんの灯明、豪邸の階段や2階廊下の手摺に並ぶ小さな灯明の色調が美しい。(現実のインドは電飾ディワリになって久しい。)
Diwali はdIpAvalI (灯明の列)というサンスクリット語がヒンディー化した形で、灯明による家の荘厳(宗教的意味をこめて飾ること)が中心の祭りであることを示している。家の荘厳にはマリーゴールドの花輪なども用いる。カールティカ月(10月)の新月の夜*、ガート(沐浴場)からは真っ暗な川面に灯明が流される。微かな水音とあまりに小さい灯・・・この情感とは逆に街では爆竹や花火が喧しい。
この日はお金の神様、ラクシュミー女神の祭りでもあり、商人は新年度の大福帳をおろし、消費者は新しい一張羅を買って着初めをする。もちろん家族全員にわたって初めて幸せというもの・・・これに貧富の別はない。。
高橋 明(早稲田大学文学学術院非常勤講師)
*起源は西欧のハロウィンと同根とされる祭りだ。ハロウィンは太陽暦化され10月31日に固定されたが、ディワリはこの近くの本当の新月の日に、昔ながらに行われている、と覚えよう。ちなみにハリウッドの「ハロウィン」は、この日が偶然本当の新月と重なったため?本物のブーギーマンが現れる、というお話。