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インド映画はお祭りがいっぱい(8)ローリー

2011.05.09

早稲田大学でボリウッド映画を題材にインド学を研究している高橋 明氏による「ナマステ・ボリウッド」連載コラム。毎回、映画に登場するインドのお祭りを月1でアップしてゆきます。コラムと連動したボリウッド講座@早稲田大学も企画しています。次回、開講をお楽しみに。

8章 めでたいぜ 陽気なパンジャブに一陽来復/ローリー
(ナマステ・ボリウッド #22/2010,1月号)

冬至は太陽が一番低い軌道をとる日だ。この日から太陽は反転して中天時の高度を上げていき、<光の春>をもたらす。古来わが国でも<一陽来復>と称し、これをまつり、春を先取りする習俗は各地に見られる。
インドにも冬至にまつわる儀礼は多いが、映画に多く登場するのは、パンジャーブ地方のローリーだろう。冬至から3週間後の1月13日の夜に行われる。当然ながら太陽暦による祭りだ。そこに住む人々の陽気さ、熱さゆえか、パンジャーブはボリウッド映画に欠かせない舞台のひとつだ。またこの祭、隣接するハリヤーナー地方以外では行われない独特の祭りであることで、パンジャーブ文化のアイデンティティーそのものと考えられているようだ。
「Veer-Zaara(ヴィールとザーラー)」(2005) のsong4lodi(ローリー)」シャー・ルクに導かれインドの大地を心に刻んだプリーティーが、その夜さらにパンジャーブの心を知るという大切な場面でこの祭りが取り上げられている。夜、大きな焚き火がたかれ、収穫祭の供物となる新穀が何種類か盛られ、お菓子の用意もととのった祭場は、大地も色粉で荘厳されている。シャー・ルクの両親(アミターブヘーマー・マーリニー)の儀礼的?夫婦喧嘩で演出された男女対抗型のダンスが意外にリアルだ。この地方の踊りは本来男女別型で、伴奏する太鼓も異なる。そのうちの男踊りがバングラ、男踊り用太鼓がドーラクなのだ。
しかし、この欄の読者は気が付いているかもしれない。前日、この二人は雨の中、下着まですっかり濡らされたり**ティージ(ブランコ祭り)で踊るプリーティーをシャー・ルクは夢見心地で見ていたはず。映画に設定された季節はあくまで愛の季節、雨季なのだ。ローリーは1月。季節があわない事など百も承知で、パンジャーブの心を伝えるならこれと持ち出された大サービスの大嘘がこのシーン。大嘘やよし、いざ楽しまん!
高橋 明(早稲田大学文学学術院非常勤講師)

他の地域(というより南も含めほぼ全国的に)では、翌日の昼(1月14日)に大きな祭りを行う。マカル・サンクラーンティ(タミルではポンゴル)だ。太陽が目に見えて高度を上げ始める日であり、秋蒔き穀物の収穫祭でもあることは当然ながら共通。夜祭とそれをいろどる大きな焚き火こそパンジャーブのアイデンティティー。

**ミーラー・バーイー(15世紀)の詩をラサ(情感)表現のため引用。訳語は、美莉亜「ミラバイ訳詩集」(名古屋・東京/2005)より。

*追記 2011,05,12
5月28日(土)開催のボリウッドお茶会@西早稲田auntにて、高橋明先生の「ボリウッド補習」を行います。ご興味のある方は、ぜひご参加ください。

Veer Zaara

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