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それでも心はボリウッド!#04「King Uncle」(1993)

2011.04.18

King Uncleそれでも心はボリウッド!〜梵林心象風景
#04「King Uncle」(1993)
監督:ラーケーシュ・ローシャン

一代で巨万の富を築いたアショークは、実直一点張りの犬も喰わない堅物男。妹が兄の腕に飾りを施す慣わしラクシャー・バンダン(兄妹祭)のラーキー(お守りの結び)も時間の無駄とみなし、弟も愛想を尽かして家を出てしまう。そんなアショークだけに出張先の山村でも武骨な様が孤児達にからかわれる。
紆余曲折の末、ひとりの孤児がアショークの屋敷へ紛れ込む。薄汚れた悪戯小僧とおぼしきは、実は可憐な少女であった。行きがかり上、無碍に追い出すことが出来なくなったアショークは、無垢なる少女との交流を通して、心の澱を氷解する。
いつもはダンディで名高いジャッキー・シュロフが効率第一の堅物アショークを、デビュー仕立ての若々しいシャー・ルク・カーンが姉思いの弟を、そして、愛くるしい少女をDDLJ(1995)でカジョールの妹に扮しているプージャー・ルパレールが好演。
もっとも、この映画、まったくのオリジナルではなくシャンミー・カプール主演「Janglee(野蛮人)」(1961)の仕立て直し。
原版では、実直一点張りのシャンミーが雪景色の残るシムラーでひたすら愛らしいサイラー・バーヌーに出会って、彼女の天真爛漫さから一転、情熱的な愛の使者となる。
観客もそれを知っていて、アショークの秘書が通院のために遅刻したり、雪の残るラーニーガルに出かけたり、山小屋での逗留など本作をバージョン違いとして楽しむ訳だ。監督ラーケーシュ・ローシャンの手腕は緩いが、敬愛が伝わって味わい深い。
1本1本が独立した別の作品として機能する多くの国の映画と異なり、インドの、それもボリウッドの映画は1つ1つが有機的に結び付き、映画の世界と観る者の心を広げてやまない。

(初出:2007年12月 ナマステ・ボリウッド9号掲載改稿/KJR)

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