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はやわかりボリウッド(5)

2011.04.13
Namaste Bollywood

Namaste Bollywood #13

世界的な潮流となっているボリウッド。しかし、どういう因果か、日本はこの流れに乗れず、また国内でも未だ「インド=オヤジと美女が急に踊り出す変なB級映画」という刷り込みが拭えない状況にある。そこで、キング・オブ・ボリウッドことシャー・ルク・カーン主演作5本が怒濤の勢いで劇場公開/映画祭上映された2008年の「ボリウッド・ベスト」特集号より「はやわかりボリウッド」を5夜連続で再録してゆきます。
(text by すぎたカズト/ナマステ・ボリウッド#13 2008年10月初出改訂)

Kites The Remix

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娯楽の王様は国力のバロメーター
インドは世界一の映画王国として知られ、2007年の制作本数は1100本を突破! しかし、タミル語、テルグ語など各地方の主流言語によって映画界が分かれており、20以上の言語を合わせての話。最大数を放つヒンディー映画も年間250本と、実は日本映画の劇場公開作と大差がない。その中でも映画雑誌にもネットにも情報が上がって来ないC級D級は置いといて、数ある映画賞に関わり、年間トップ50にランクされるメジャー作品こそ、真のボリウッドと言える。 これを支えているのが、インド文化圏の家族主義からなる世代を超えた市場だ。近年、若者のヒンディー語離れ=英語への傾倒が進む一方で、相変わらず盛んなのが懐メロ・フィルミーソングのカバー・リミックス。昭和30年代を舞台にしながら懐メロがBGMとして用いられることのなかった「フラガール」の日本映画界とは大いに異なる。世代が分断されていない健全な市場を持つことは、映画に厚みや予算をもたらす。これが躍進するインドの強みであろう。
かつてインドを押さえ、世界一の制作本数を誇った日本映画(人口対比でも断トツ!)が斜陽化するに及び「映画が娯楽の王様であるのは、娯楽が少ないから」と嘯かれた。経済成長と共に娯楽が多様化し、映画が娯楽の中心であることは後進国のようにさえ聞こえる。
しかし、ハリウッドは一大エンターテイメント産業であるが、決して世界に遅れを取っているわけではない。むしろ映画を中心としたエンターテイメント産業は国力のバロメーターと言えよう。

 

Bride & Prejudice

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アメリカはボリウッドがお好き!
2001年に作られたヒングリッシュ映画(インド産英語映画)「Bollywood Calling」を受けて、在カナダ女性監督ディーパー・メーター「Hollywood/Bollywood」(2002=加)を制作。以降、北米市場でボリウッド・ブームという流れが起きている。日本でもDVD発売された「踊るマハラジャ N.Y.へ行く」The Guru(2002=英米仏)は、まったくの米国資本。アイシュワリヤー・ラーイ「ベッカムに恋して」のNRI女性監督グリンデール・チャダに見初められて、「高慢と偏見」を原案にしたBride & Prejudice(2004=米・印) で世界進出。「Marigold」(2007=米・英・印)の監督は100本以上のボリウッド映画を研究して念願のサルマーン・カーンを主演に獲得、という大のボリ好き。
こうした背景には、ヒッピー・ムーヴメントでインド文化に開眼し、ダンスも愛好するアメリカ文化の土壌があってのことだろう。「American Blend」(2006=米)では、アヌパム・ケールがカタック・ダンサーである白人女性と国際結婚。黒人の恋人を持つ娘も母の舞踊教室でアメリカ人たちとカタックを習い、練習の終わりには師匠の足下にプラナーム(敬愛の儀礼)しては、ビーチで「Chak De!(ぶちかませ!)」と叫ぶ。ボリウッド・カフェで働くインド系料理人がヒスパニックの同僚と文化的衝突を繰り返しては友情を深める描写も興味深く、まさにアメリカン・ブレンド。
インドの新興富豪アニル・アンバーニーが英米の映画館を買い占め、年間20〜30本の映画製作に乗り出す計画がある。遅かれ早かれ、数年後にはボリウッド/ハリウッドの波が日本にも押し寄せて来るはず。その時に、うろたえることのないようにしたいものだ。

 

2010年には200スクリーンで全米公開したKites the Remix」カイト(2010)がインド映画として初の全米オープニング・トップ10入りを果たした。

はじめてのボリウッド(1)
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That's Bollywood 2000's

ゼロ年代のボリウッドを1冊に凝縮!

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