Home » はじめてのボリウッド, コラム

はやわかりボリウッド(4)

2011.04.12
Namaste Bollywood

Namaste Bollywood #13

世界的な潮流となっているボリウッド。しかし、どういう因果か、日本はこの流れに乗れず、また国内でも未だ「インド=オヤジと美女が急に踊り出す変なB級映画」という刷り込みが拭えない状況にある。そこで、キング・オブ・ボリウッドことシャー・ルク・カーン主演作5本が怒濤の勢いで劇場公開/映画祭上映された2008年の「ボリウッド・ベスト」特集号より「はやわかりボリウッド」を5夜連続で再録してゆきます。
(text by すぎたカズト/ナマステ・ボリウッド#13 2008年10月初出改訂)

My Name is Khan

レビューを読む

マサーラー映画は幕の内映画にあらず!
ロマンス、コメディ、アクション、そしてハッピーエンド。これがマサーラー映画の常道とされる。日本映画の黄金期を振り返ってみると、高倉健のシリアスなやくざ映画にも由利徹などのコミックリリーフが必ず登場して肩の凝りを解してくれたもの。この手の作りは「幕の内弁当のような」と揶揄された。しかし、マサーラー映画の由来はスパイスの調合にあり、単に娯楽の要素が何品も盛り付けされていればよいというものではなく、醍醐味はそのスパイス加減にある。
例えば、この夏、特集上映される「たとえ明日が来なくても」Kal Ho Naa Ho (2003)は、家族の葛藤から始まって前半はロマンスやコメディ、ミュージカルでぐんともり立てる。それがあってこそ、後半、哀愁への落とし込みが成立する。
本来、インドのスパイス料理は身体への薬膳。ジャンル映画が確立して久しい欧米映画は、病氣の患部だけを治療する西洋医学のようなもの。東洋医学は直接患部へアプローチするのではなく、身体全体を取り扱う。良質のマサーラー映画は、東洋的マッサージのように身体に備わったあらゆる感情の要素をもみほぐし、心へずんと迫るのだ。

 

Taxi No.9211

レビューを読む

オトナが愉しめるオシャレ映画が流行。!
経済発展に伴いマルチプレックス(シネコン)の普及が進んだことで、ボリウッドと言えども急速にジャンル化している。
「Johnny Gaddaar(裏切りジョニー)」(2007) は、タランティーノばりのスタイリッシュかつ奇抜なクライム・スリラー。
いち早くターリバーン崩壊後のアフガンに乗り込んで全編ロケを敢行した非ミュージカル「Kabul Express」(2006) は、ジャーナリスティックなテーマを含んだ秀作。同じくジョン・エイブラハム主演の「No Smoking」(2007)ともなると、カルトな迷宮映画!
昨年秋に本国公開された映画女優物の「Khoya Khoya Chand (消えゆく月)」(2007) では、50〜60年代の撮影所をまるでハリウッドのレトロ映画のようなムードある趣で制作。これなど日本の映画ファンでもそそられることだろう。
くわえて流行を見せるのは、小粒映画。笑いと涙にほどよくスパイスをまぶしたオトナのカップルがくつろいで観られるオシャレな作りが特徴で、かつてのマサーラー映画が街道沿いのダーバー(大衆食堂)とすれば、カロリー控えめ、あっさり風味にアレンジした都会の小粋なレストランと言えよう。
これら非ミュージカルの中間映画でも、予算を割いて1曲はプロモーション用にミュージカル・クリップを作成してくれるのが、嬉しい心遣いである。

はじめてのボリウッド(1)
はじめてのボリウッド(2)
はじめてのボリウッド(3)
はじめてのボリウッド(4)
はじめてのボリウッド(5)
はじめてのボリウッド(6)

はやわかりボリウッド(1)
はやわかりボリウッド(2)
はやわかりボリウッド(3)
はやわかりボリウッド(4)
はやわかりボリウッド(5)

That's Bollywood 2000's

ゼロ年代のボリウッドを1冊に凝縮!

関連する記事

タグ: ,