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カタックを語る。#07

2011.04.04

kathak

みやびカタックダンスアカデミー

Devdas(2002)でマードゥリー・ディクシトに振付を施したインド人間国宝Pt.ビルジュ・マハラジ師に直接師事したインド宮廷舞踊家、佐藤雅子女史みやびカタックダンスアカデミー主宰)による「ナマステ・ボリウッド」連載コラム。華麗な舞踊について月1でアップしてゆきます。
カタックを語る。
#07 インドの思い出〜サーランギー
(ナマステ・ボリウッド#09号/2007年12月号初出)

それは何処かで聴いたことのあるような音色である。柔らかで奥行きがあり、何かしら懐かしさを感じる、かすれたような物悲しい擦弦楽器あの音色は、遙か西方の見果てぬ大地をなで吹く風の音のようでもある。その楽器…サーランギーと初めて出会ったのは、国立舞踊学校カタック・ケンドラの教室だった。
日本へ戻ってきて教室を開き、発表会やイベントの伴奏をプロのミュージシャンにお願いすることが多いが、サーランギーの演奏家には未だお会いしたことはない。カタックといえばサーランギーなのだが…。
そこで思い余って、渡印することにした。師匠に頼んで楽曲を作っていただき、ミュージシャンを4名雇い、スタジオレコーディングを行う。スタジオはいつものTスタジオ。録音当日は朝から深夜まで缶詰状態になる。日を改めてミキシングを行い、日本に戻る日の夕方、ようやく私の手元にDATのテープが届いた。
日本に戻って聴いてみると、あの何ともいえない懐かしい音色が全曲に満遍なく入っていた。焦がれてやまない音色が聴いていると、まるで悠久の時間が流れているかのようだ。しめしめ、これで皆、踊りが上手くなるに違いない、と密かに確信を持ってみたりする。微笑が自然にこぼれてきた。踊り手にとって、上質の音楽はこの上ない至福なのだ。

佐藤雅子/インド宮廷舞踊家。1995年渡印、インド人間国宝Pt.ビルジュ・マハラジ師に直接師事。師の許しを得て、2005年帰国。みやびカタックダンスアカデミーを設立し、2008年、東京都千代田区麹町に専用スタジオをオープン。古典のカタック・クラスの他、ボリウッド・カタック・クラスも併設中。

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