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それでも心はボリウッド! #02「Chori Chori」(2003)

2011.02.21
Chori Chori

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それでも心はボリウッド!〜梵林心象風景
#02「Chori Chori(こっそりと)」(2003)
監督:ミラン・ルトリア

クシーは天涯孤独の身。生き馬の目を抜くデリーを女の細腕で生き抜いて来た。とは言っても、宿舎付きの仕事を失う。
思いついたのが、パーティーの仕事で知り合ったランヴィールの新居。そこは、彼が求婚に失敗したこともあって建築中のまま。山中の一軒家だけに、こっそり住み着くにはびったり。
風光明媚なシムラーを訪れたクシーは、うっかりランヴィールの<嫁>を名乗ったばかりに彼の家族と出くわし、持ち前の愛嬌からすっかり慕われるようになる。ランヴィールはランヴィールで、意中のプージャーへ鞘当てとして、この田舎芝居を取引する。
孤児ながらのびのびと育ったクシーをラーニー・ムカルジーが溌剌(はつらつ)と、ランヴィールをアジャイ・デーヴガンが好演し、清楚な香りを放つソーナーリー・ベンドレー扮するプージャーが交差する小品。
インド映画には、詐欺師が親戚になりすまし、いつしか一家と離れがたい結び付きとなる秀作がひとつの定石となっている。
結婚式。ランヴィールに心を移したクシーは芝居の幕引きを怖れ、部屋に閉じこもってしまう。彼女が孤児だと知ったランヴィールの家族が皆揃って、優しく説き伏せる。この時の祖母の台詞がいい。
「今日から私はあの子の祖母じゃないの、あなたのお祖母ちゃんよ。ここにいるのは、誰の父親でもないの、あなたのお父さんよ」
こうして彼女は、クシー(喜び)を得る。
インドから遠く離れたこの国で、結婚と言えば、家族の結びつきでなく、男女の思いつき。希薄な人間関係の中、都会の沙漠で孤立奮闘する現代日本人にとって、インドの大家族が持つ温かさは、時にヴァーチャルな心地よさをもたらす。

(初出:2007年6月 ナマステ・ボリウッド6号掲載/KJR)

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