カタックを語る。#18
「Devdas」(2002)でマードゥリー・ディクシトに振付を施したインド人間国宝Pt.ビルジュ・マハラジ師に直接師事したインド宮廷舞踊家、佐藤雅子女史(みやびカタックダンスアカデミー主宰)による「ナマステ・ボリウッド」連載コラム。華麗な舞踊について月1でアップしてゆきます。
カタックを語る。
#18 魅惑の衣装〜Umrao Jaan(2006)
(ナマステ・ボリウッド#20号/2009年9月号初出)
インドのバザールで女性を狂喜させるもの。それは街中に溢れる華やかな色彩だ。服屋に行けば色とりどりのサリーやスーツが並び、布屋に行けばあらゆる模様の布が手に入る。祭りや祝いの前、オーダーメイドで服を作る時、女性達は布屋に足繁く通い、思う。今度はどんなデザインで作ろうか。何色を合わせようか。そうして店の主人に値引き交渉をしながら、店の奥に置いてあるザリ・ワークの布(金糸を織り込んだ布)をちらちらと見ながら財布を覗き込み、深い溜息をつくのだ。あまりにも高価な布は通常の家庭では結婚式の時ぐらいしか着ることを許されない。いやお金持ちだったら別だ。パーティーに着ていくことができる。
祭りの時に着たシルク・サリーをクリーニングに出す時、彼女達は店にかかっている他の女性達のサリーを物色する。自分が持っているサリーより美しい色かどうか。もし、自分が着ることができたらどんなに素敵だろう。そんな女性達の願いを如実に受け入れている映画が「Umrao Jaan」(2006)だ。リッチなカルチャーを受け継ぐコルカタ出身の新進気鋭のデザイナーがアイシュの衣装を担当している。3000着の候補の中から選ばれたドレス達は、時代考証や灼熱の風土環境は無視され、ひたすらアイシュが高貴で美しく見える高価な布で作られている。
3曲目の赤いザリ・ワークの布は、昔は、羽のように軽く丈夫な絹布に細い金糸の刺繍が華やかに舞っていたという。天女の羽衣を思い出した。当時の衣装を纏えば、どんな踊り子も羽が生えたように踊れるに違いない。
佐藤雅子/インド宮廷舞踊家。1995年渡印、インド人間国宝Pt.ビルジュ・マハラジ師に直接師事。師の許しを得て、2005年帰国。みやびカタックダンスアカデミーを設立し、2008年、東京都千代田区麹町に専用スタジオをオープン。古典のカタック・クラスの他、ボリウッド・カタック・クラスも併設中。
★佐藤雅子さんの師匠Pt.ビルジュ・マハラジ師が本年5月に来日し、東京・大阪で公演が行われます。詳しい情報は、公演特設サイトにてご確認ください。
http://birjumaharaj.miyabi-kathak.com
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