国境にかけるスクリーン/特別編5
パキスタン女性映画の挑戦~『Bol』への道
すぎたカズト
『口述』
こうした流れを踏まえ、満を持して放たれたのがショーアイブ・マンスールの監督第2作『Bol(口述)』だ。
これまではボリウッドの俳優を重要な役柄に迎える事で作品を高めていたが、本作ではそれはなく、むしろボリウッドで重用されているパキスタン人歌手のアーティフ・アスラムを主人公の恋人役に配置し、パキスタン映画の興行記録を塗り替えたという。
劇中にアーティフとヒロインのステージ・ソング・シーンがあるものの、意外にも本編は暗く沈鬱なテーマを扱う。開幕早々、向き合ったアーティフと主演女優のフマイマー・マリックを横位置から捉えたキャメラ・アングルが移動するや、ふたりの間に鉄格子が存在しているという映画的イメージに舌を巻く。
このフマイマー演ずる長女ザイニブが殺人犯として起訴され、死刑執行の直前、集まったマスコミの前で真実を「口述」する構成となっている。
一家はセパレーションによりデリーから移って来た古式の薬屋で、鎧戸を重く閉じた生活をし、家にある文明の利器と言えばラジオくらい。それでいて、厳格な主ハキームは子作りに励み、7人の姉妹をもうけた。末っ子に男が生まれたものの、産婆らしき女が「見かけは男だが、中身は女」と言うところからして<フタナリ>だったのだろう。さっそくヒジュラーを連れて来る始末だ。
姉達同様、幽閉されて育ったこの末っ子サイフィは、長じて悲運に見舞われる。家族の手配でトラック絵師の下で見習いとなるもたちまち粗野なトラック運転手たちによって陵辱されたばかりか、これを恥じたハキームによって絞殺されてしまうのだ。
話はさらに続く。サイフィの死に腐心を抱いた警官から賄賂を無心され、大金が要り用となったハキームは、かつて毛嫌いした郭の元締めチョウドリーを頼る。そこでハキームが女ばかりの子種である事を見込まれ、踊り子ミーナーを孕ます取り引きとなる。結局、この事が長女ザイニブの有罪に繋がるのだが、ここでは深く触れないでおこう。
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