国境にかけるスクリーン/特別編3
パキスタン女性映画の挑戦~『Bol』への道
すぎたカズト
『ラームチャンドはパキスタン人』
これに続く系譜が、やはりカラチ出身の女性監督メヘリーン・ジャッバルによる『Ramchand Pakistani(ラームチャンドはパキスタン人)』(2008)で、セパレーション後もパキスタン領に留まったヒンドゥー教徒にスポットを当てている。
ヒンドゥーであるがパキスタン人の少年ラームチャンドがささいな事で国境(ところどころ白い石が置かれただけの、ただの大地)を越えてしまった事から一家に長年の災難が訪れる。つまり、ラームチャンドと彼を捜しに行った父親がインドの刑務所に投獄されてしまうのだ。
スイス・フリブール国際映画祭で評価されたこの作品も主人公のひとりとなる母親チャンパー役に、ボリウッドのアート系女優ナンディーター・ダースを起用しつつ、インドの女性刑務官カムラー役にはタンザニア生まれのパキスタンTV女優マリア・ワスティを据えている。インドとパキスタンの女優を逆転して配役する事で、パーテーションという問題をより鮮明化している訳だ。
先の『Khamosh Pani』(2004)を監督したサビハー・スマルとメヘリーン・ジャッバルは共に女性監督であるが、男性優位な社会にあって国際的に高い評価を勝ち得た事と、インド/パキスタンという国境問題を優に超えてしまう制作スタンスであるのは、ふたりが共に海洋文化の中継地であったカラチ出身であり、米国留学で映画製作を学んでいるためだろう。特にメヘリーンの場合、大物政治家でもある父親ジャーヴェード・ジャッバルがパキスタン初の英語映画『Beyond the Last Mountain(原題はMusafir=旅人)』を制作し、1976年にボンベイ国際映画祭へ出品している事も大きい。
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