国境にかけるスクリーン/特別編2
パキスタン女性映画の挑戦~『Bol』への道
すぎたカズト
『沈黙の水』
それなりに成長してきたパキスタン映画の中でゼロ年代以降、海外でも注目を集めた作品と言えば、まずスイス・ロカルノ国際映画祭優秀賞を受賞した『Khamosh Pani(沈黙の水)』(2004)だろう。
ムハンマド・ジア=ウル=ハクの軍事政権がシャリーア法廷を設置した1979年、パンジャーブ州の片田舎チャルキーで、音楽をこよなく愛していた青年サリームはイスラーム原理主義に染まってゆく。母親アイーシャーはその事で懸念を深めるが、実はスィクの一家に生まれ落ちた彼女はパーテーション(印パ分離独立)の際、殺戮を避けるため清らかなまま命を絶つべく身内から井戸への投身を強いられながらも逃げ出し、イスラーム教徒として生き残った過去を持っていた。
母親の出自を知ったサリームはさらに原理主義へ傾倒し、やがてアイーシャーは井戸に身を投げる決意をする。即ち、彼女にとって続いていたセパレーションを終わらせるために。後年、サリームは原理主義の指導者となるが、このTVインタビューを街頭で見る元恋人の視点から彼の純化が屈折した反動である事を暗に示す。
監督はカラチ出身、米ニューヨークにて映画と政治学を学んだサビハー・スマル女史でドキュメンタリー映画を手がけた後、本作に着手した。主演となる母親役は、ボリウッドの名優アヌパム・ケールの後妻で当時女優業に復帰したばかりのキロン・ケールだ。
「ある日、パキスタン出身の映画監督でデリーに在住し、スリランカ人と結婚したという女性から大したお金は払えないが」と出演依頼の電話がかかって来たという。自身もインド領パンジャーブ州出身であるキロンは「女性の問題はどこも同じ」と快諾しての出演となった(サリームの恋人役もまたインド人女優が演じている)。
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