カタックを語る。#15
カタックを語る。
#15 恋は怖れを超える〜Mughal -e-Azam(1960)
(ナマステ・ボリウッド#17号/2009年2月号初出)
贅を凝らして創られた映画「Mughal-e-Azam(偉大なるムガル帝国)」(1960)。独立後のインドで、K・アーシフ監督がカタックダンスの愛好家だったに違いないと思われることを表す曲目がある。サリーム王子への愛を疑われたアナールカリーが、潔白をかけて宴の間で歌う「pyar kiya tho darna kya(恋し畏怖なし)」だ。曲の冒頭で、マドゥバラーによって踊られる、速い旋回とフットワークで魅せる踊りは、インドの両面太鼓パカワジのボール(ヴォイス・パーカッション)を伴う。パカワジ・ボールで踊られる踊りは、カタック・ナトゥワリ・ヌリッタ中、「パラン」というダンス・アイテムに属し、舞台にて通常、終演前近くのハイライトシーン、つまり一番速い速度(ドゥルット)にて踊られるものだ。曲の冒頭部にパカワジ・ボールのダンス・アイテムを入れ込むことによってアナールカリーのサリーム王子への思いがどれだけ強いかという高まりを表し、美しくも勇ましい歌舞に入るだろうという観客の期待を裏切らない。
当時、宮廷で演奏される花形のパーカッション楽器はパカワジであった。パカワジ・ボールで踊られる踊りを師匠から与えられることは、ダンサーにとってたいへん名誉なことである。監督は、アナールカリーが如何に素晴らしい舞踊手であるかということを、この演目で如実に示している。
衣装の素晴らしさも目が離せない。宮廷内の高級娼婦達の中でも特別に高い地位にある女性に与えられる宝石と羽飾りのついたトーピー(帽子)が、この上もなく美しい。
佐藤雅子/インド宮廷舞踊家。1995年渡印、インド人間国宝Pt.ビルジュ・マハラジ師に直接師事。師の許しを得て、2005年帰国。みやびカタックダンスアカデミーを設立し、2008年、東京都千代田区麹町に専用スタジオをオープン。古典のカタック・クラスの他、ボリウッド・カタック・クラスも併設中。
song promo by Shemaroo Entertainment.
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