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インド映画は お祭りがいっぱい(15)ラクシャバンダン

2011.12.05

早稲田大学でボリウッド映画を題材にインド学を研究している高橋 明氏による「ナマステ・ボリウッド」連載コラム。毎回、映画に登場するインドのお祭りを月1でアップしてゆきます。コラムと連動したボリウッド講座@早稲田大学も企画しています。次回、開講をお楽しみに。

15章 キッチュなお守りに妹の力のせて〜ラクシャバンダン
(ナマステ・ボリウッド #29/2011,7月号)

「インドは独立したが、三色旗の下、人民の奴隷状態はなくなったか。現実に我々は貧困の奴隷、疾病の奴隷であり続け、失業の増加と物価の高騰の恐怖に支配されている…」社会派の映画ではない。愛国心と娯楽の王道映画「Farishtay(天使たち)」(1991)のメッセージだ。ポリオの少年を抱いて車道を横断するダルメンドラヴィノード・カンナーをロケに集まった人々もろともに撮った冒頭シーンに重なるタイトルが10言語で示されるのも熱い。物語の大枠は「ラーマーヤナ」、主人公キャラの見立てはハヌマーンクリシュナという超正統派作。インド版「妹(いも)の力」の祭り、ラクシャバンダンの扱いも直球勝負だ。
今日も今日とて酒場で悪と喧嘩の二人、「妹が腹をすかして怒っている」とご注進される。女性中心の祭は断食を伴うものが多いが、ラクシャバンダンは昼前にでもそれを終わらせる事ができる祭。兄にラーキーと呼ばれる飾り紐のお守りを右手首に巻いてあげ、兄からプレゼントを受ければ儀礼は終わるからだ。家に駆けつけた二人は叔母さんたちにプレゼントをしてシカトの振り、妹も怒った振り。nATak (お芝居)と台詞にもあるがこれが当時の直球演出。「妹よ、この絆は血に因るのではなく愛によるもの…この絆はこのお守りがヤワじゃないように壊れはしない…神様は別だけど、私の一番はお兄様…」歌も祭の意味を語って熱い。供物の紅粉でティーカーを施し、お守りを巻き、供物盆の灯明を二人の前で回し(aarti)、供物の菓子を二人に自らの手から食べさせる妹。
この場合ひとつの菓子を二人に半分ずつ食べさせているが、これは「酔いどれ天使とミルク天使」兄弟の友朋愛(dosti)の熱さを表している。

高橋 明(早稲田大学文学学術院非常勤講師)

ラクシャ(お守り)バンダン(むすぶ):サーワン(7月)の満月の日(雨季の始まり)に行われる。

お知らせ次回のボリウッド講座@早稲田大学は、2012年1月14日(土)午後1時〜3時、36号館581教室の開講予定。その後、ナマステ・ボリウッド新春オフ会を行います。詳細は、しばしお待ち下さい。

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