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インド映画は お祭りがいっぱい(13)ヒンドゥーの結婚儀礼(4)

2011.10.03

早稲田大学でボリウッド映画を題材にインド学を研究している高橋 明氏による「ナマステ・ボリウッド」連載コラム。毎回、映画に登場するインドのお祭りを月1でアップしてゆきます。コラムと連動したボリウッド講座@早稲田大学も企画しています。次回、開講をお楽しみに。

13章 英雄色を好むで裏技あり〜ヒンドゥーの結婚儀礼(4)
(ナマステ・ボリウッド #27/2011,2月号)

某セメント会社のもしもCMにされていた(もちろんインドの話)「Parineeta(妻)」(2005)。憎みあっている兄弟の家を隔てていた壁を打ち壊すシーンは確かに感動の見せ場だ。しかしこの映画最大の見所は、冒頭近く訪ねてきたサイーフに気づいたヴィディヤーが鏡の前でシンドール(粉紅)の小箱を取り出し自らビンディヤーを施すシーン。額のビンディーだけでなく髪の分け目にも紅を注すことは妻である事の徴標(しるし)とされ、その誇りとも悦びともいわれる。 晴れて妻として再会できると帰国した矢先、サイーフが他の女性と結婚しようとしているというよくわからない状況のもと、その不安や疑念を抑えて自信と誇り、悦びと恥じらいをもって…という演技に注目。それをサイーフは他人の妻になったものと誤解して激怒。事情はこれに続く長い回想で明らかになるのだが…肝心なのはヴィディヤーが心の問題としてではなく世間にも認められるべき完全な妻、制度的にも結婚している女として振舞っている事だ。
結婚はバラモン祭官主導の儀礼を経なければ認められないとされるが、クシャトリア(武士)階級には例外がある。ガンダルヴァ婚と呼ばれる恋愛結婚とラークシャサ婚という略奪婚が認められていて、第2第3婦人にはこれで結婚する事が奨励されさえする。互いの愛欲の満足を願う男女が結婚を誓い、花輪(首飾り)を互いの首に掛け合えばガンダルヴァ婚は成立する。ヒンドゥー教の基本理念を説く「マヌ法典」で権威付けられている事だ。
どうやって彼らが結婚したのか、映画で確かめていただきたい。彼らがクシャトリアである事は始めのナレーションで述べられる彼らの姓、Rai(王)で確認できる。
高橋 明(早稲田大学文学学術院非常勤講師)

ビンディヤーはビンディーの複数形。
もち、アイシュワリヤーのラーイも。

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