こんな映画がミターイ!(4)

イラスト:デーヴ阿南
「傷だらけの天使」 Ghayal Farishtey
永遠のTVドラマを完全妄想リメイク作!!
世界展開しているボリウッド、日本に定着しないのはなぜ? 戦後間もなく貧しい日本の子供を励まそうとネルーが贈った上野公園のインド象インディラを忘れ、「アフリカ象が好きっ!」とのたまったカルマか? さて、日印を結びつけるには、やはり合作映画。世界的名シリーズの梵林正式リメイクをさっそく妄想企画してみた。
近未来。インドも第2次ドバイ・ショックに揺れるご時世、ニュー・ストリームの旗手アヌラーグ・カシャップに永遠のTVドラマ「傷だらけの天使」完全映画化を依頼。
ムンバイー繁華街グランド・ロードに位置する雑居ビルのペントハウス(実は屋上の倉庫)に暮らすオパサ(アブヘイ・デーオール/修=萩原健一)とポマードべったりの弟分アーキフ(クナール・ケムー/亨=水谷豊)は、有閑マダム・アーシャー(カルキー・コーチャリン/綾部=岸田今日子)の興信所に出入りする使いっ走り。マダムの右腕タッカル(K・K・メノン/辰巳=岸田森)が持ってきた依頼は、シンガニアー財閥の家出した令嬢シムラン(ソーナム・カプール)を連れ戻すというもの。ギャラの1ラック(約20万円)を受け取ったオパサは、何の因果かボリウッドのロシア人ダンサーを使ってダイヤモンドを密輸しているドバイ・コネクションのシンジケートに関わったばかりか、ようやく探し出したドラッグ漬けのシムランと行きがかりから逃避行。アーキフを引き連れゴアの古い農家に隠れ住むが、かりそめの生活は長くは続かなかった…。
助演は、必要以上にグラマーな秘書キラン(アイーシャー・タキア/京子=ホーン・ユキ)、狡猾な初老のインスペクター・ラーメーシュ(ティヌー・アーナンド/梅津=西村晃)、その部下にローニト・ローイ(「Udaan」)。そして、オパサの息子ムンナー(=健太)に「Tahaan」タハーン 少年とロバ(2008)のプラヴ・バンダレーを配役。
もちろん、綾部貴子愛聴の「マルヅカ」使用は映画化の条件。音楽監督にカイラーシュ+アミット・トリベディを組み合わせ、井上堯之バンドの痩せ我慢なグルーブを再現。当初はアヌラーグも乗り氣で2部作に分け、孤児あがりのオパサとアーキフの出会いを続編「宴のあとに儚い思い出を」で描く予定だったが、オイルショックに終末不安が重なった挫折感たっぷりの 年代日本をバブリーな現代インドに置き換えるのに難色を示し、バングラデーシュのバウル・ロッカー、ジェームズをフィーチャルしたTV最終話の挿入歌「一人」と、ジュフーの飛行場からプライベート・ジェットで飛び発つマダムを浮浪者となったタッカルとオパサが見送るラスト・シーンはお蔵入り…って、こんな映画がミターイやーん!
(初出:ナマステ・ボリウッド#27:2011年1月号改稿 text by KJR)