こんな映画がミターイ!(3)

イラスト:デーヴ阿南
「Aaya Barsaat」雨季が来た
サルマーン×アイシュ、幻のリメイク作?!
世界展開しているボリウッド、日本に定着しないのはなぜ? 戦後間もなく貧しい日本の子供を励まそうとネルーが贈った上野公園のインド象インディラを忘れ、「アフリカ象が好きっ!」とのたまったカルマか? さて、日印を結びつけるには、やはり合作映画。世界的名シリーズの梵林正式リメイクをさっそく妄想企画してみた。
今回は、聖林の秀作を梵林完全リメイク作戦! 1936年の英領インドを舞台にした20世紀FOX 作品「雨ぞ降る」The Rains Came(1939)を「雨のランチプール」(1955)に続く3度目のリメイクとして、Fox Indiaのローカル・プロダクトで妄想企画。
若きインド人医師ラーマ(タイロン・パワー)は、英国未亡人エドウィナ(マーナ・ロイ)と恋に落ちるが、地震による洪水の後、町は疫病が流布する。看護婦となって尽くすエドウィナが誤って患者の使用したグラスで水を飲んでしまい自身も疫病に伏すという悲恋物語。洪水場面はモノクロ映画ながら70年代のパニック映画をも凌ぐスケールで、「オズの魔法使い」を追いやってアカデミー賞特殊効果賞を受賞しただけあり、デジタルで逃げた感のあるFox配給「マイ・ネーム・イズ・ハーン」MNIK(2010)の衣装返しにぴったり。感染を自覚したエドウィナがラーマからのキスをためらうのもインド映画のセンサー(検閲)に符合するし、彼女の発病を知ってうろたえるラーマに対して、前半の主人公であるプレイボーイのトムが「君が新しいインドを支えなくてどうする! 今、やれることを尽くすのだ」と諭す場面はヒンドゥー聖典「バガヴァッド・ギーター」におけるクリシュナのアルジュン激励を踏襲しており、ボリウッド・リメイクには打ってつけ。
ヒロインは冷たげな美形マーナ・ロイにその面影が重なるアイシュ、ヒーローにはターバン姿が凛々しい若きタイロン・パワーのカーボンコピーに思えるサルマーンへオファー。前半の主人公トム役にはジョージ・ブレントの雰囲氣を引き継ぐアッキー、その恋人ブレンダ・ジョイスにはこれまた骨格が瓜二つなトゥリープ・ジョーシー*(母がレバノン人のハーフで、ややカトリーナー顔)というベストな配役。セットや衣装など当時としてはかなり忠実に再現されていたものの、舞踊や音楽となると西洋風そのままであったため、これを覆すべく「Devdas」(2002)のPt.ビルジュ・マハラジを招きアイシュに宮廷舞踊カタックの華麗な振付を依頼。もちろん、音楽監督にはA・R・ラフマーン、監督には歴史大作で真価を発揮するアーシュトーシュ・ゴーワリカルを起用。製作費はインド映画史上最高の150カロール(15億ルピー=27.6億円。物価換算で138億円)を投入の予定が、やっぱりサルマーン×アイシュの配役が叶わず企画流れに…って、こんな映画、ミターイやーん!
(初出:ナマステ・ボリウッド#26:2010年11月号改稿 text by KJR)
*トゥリープ・ジョーシー:デビュー作「Mere Yaar Ki Shaadei Hai(友達の結婚)」(2002)がウダイ・チョープラー共演のためフロップし、日陰道を歩くが米資本「Nischay Kar Apni Jeet Karoon」(2010)など徐々に上昇中。