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インド映画は お祭りがいっぱい(11)ドゥルガー・プージャー

2011.08.08

早稲田大学でボリウッド映画を題材にインド学を研究している高橋 明氏による「ナマステ・ボリウッド」連載コラム。毎回、映画に登場するインドのお祭りを月1でアップしてゆきます。コラムと連動したボリウッド講座@早稲田大学も企画しています。次回、開講をお楽しみに。

11章 ガンガーの泥はガンガーに〜ドゥルガー・プージャー
(ナマステ・ボリウッド #25/2010,9月号)

ベンゴーリー映画、「Antarmahal(後宮)」(2005)、といってもジャッキーアビシェークソーハーライマー主演。ソーハーの役どころ、設定  歳の若妻。彼女がこういう修行をしていた事、知ってお得感ありだ。
後宮といっても妻二人しかいない田舎領主(ジャッキー)が植民地権力に擦り寄ろうと企てた、ヴィクトリア女王の顔をしたドゥルガー像を祀るドゥルガー・プージャー。神を畏れて神像製作を拒むお抱え彫塑師の代りに他州から呼ばれたアビーが雨季の丸2ヶ月をかけて女神像を造っていく。高温・多湿、濃密なベンガルの雨季の空気を映す画面の中、館の新妻ソーハーと彼の間に思いが生じ…勘違いも手伝って妄想たくましいアビーに対し、抑圧下、言葉も通じぬ相手に対するソーハーの心はただ汗の匂いの科白で示される。ベンゴーリー映画ならではの味だ。
アシュヴィン(9〜10月)の白月1日から9日間、ドゥルガーは神々の請託に応じ悪鬼マヒシャ・アスラと死闘を続け、ついに倒したと伝えられる。これに因んだ秋の大祭が北インド全域で様々に行われるが、ベンガルでは毎年新たな神像をガンガーの泥から造り、9日間礼拝供養した後は川に流す独特の形で行われ、ドゥルガー・プージャーと呼ばれている。単体の神像ではなく、戦勝シーンのスペクタクル像が好まれるのは縁起神話ゆえだ。
この映画では9月26日に設定されている初日、バラモン祭官たちによる開眼供養が行われるが、それまで女神の頭部は布を張られ隠されていて造った彫塑師以外その顔を知る者はない。映画はこの日クライマックスを迎えるわけだが、この後もう一箇所だけソーハーの思いを偲ばせるシーンがある。この欄の読者はきっと気づいてくれるだろうと信じる。
高橋 明(早稲田大学文学学術院非常勤講師)

ドゥルガー=シヴァの妻パールヴァティーの化身。戦い・殺戮の女神。
正式にはアーシャード後半から2ヵ月半(ベンガルの雨期は早めに始まる)。

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