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カタックを語る。#10

2011.07.18

http://miyabi-kathak.com/

Devdas(2002)でマードゥリー・ディクシトに振付を施したインド人間国宝Pt.ビルジュ・マハラジ師に直接師事したインド宮廷舞踊家、佐藤雅子女史みやびカタックダンスアカデミー主宰)による「ナマステ・ボリウッド」連載コラム。華麗な舞踊について月1でアップしてゆきます。

カタックを語る。
#10 チェスをする人〜The Chess Players
(ナマステ・ボリウッド#12号/2008年4月号初出)

インド宮廷舞踊カタックダンスの衣装に時代の変貌と共に失われていったものがある。その代表的なものが、裾がスカートのように広がるパンタロン式パジャマの上にすっぽりと胴着を被り、長いドゥパッターで頭を覆うペシュワー・スタイルだ。肌は一切見せない。ムガル帝国時代終焉から英国統治時代にかけてリッチなモスリムのマハラジャ達に愛された踊り子達のスタイルは、インド独立後、印パ戦争を挟んで、多くのモスリムがパキスタンやバングラデシュへと逃れた後に徐々に国内で消滅していく。

巨匠Pt.ビルジュ・マハラジによって再現された、カタックの黄金時代を偲ぶことができるダンスをサタジット・レイ監督の「Shatranj Ki Khiladi」チェスをする人(1977)にて観ることができる。踊り子はインド随一の踊り手サスワティ・セン。当時、最高の芸術として賞賛されていたカタック・ダンスの中のトゥムリをナワーブ(太守)・ワージド・アリー・シャーが堪能するシーンだ。当代最高の師匠であり、詩人でもあり、現在でも多くの信奉者を持つビンダディン・マハラジによって書かれた詩を、美しい旋律に乗ってサスワティ女史が情感たっぷりに美しく舞う。クリシュナとラーダの物語をナワーブの前で、モスリムの衣装で踊っているのが何ともいえず印象的である。ヒンドゥーとイスラームの融合の歴史をここにみることができる。インドの力強さにペルシアの優美さがブレンドされ、絶妙なハーモニーが醸し出されている。モスリムの贅沢な好みにおいて、インドはペルシアであり、ペルシアはインドであったのだ。

佐藤雅子/インド宮廷舞踊家。1995年渡印、インド人間国宝Pt.ビルジュ・マハラジ師に直接師事。師の許しを得て、2005年帰国。みやびカタックダンスアカデミーを設立し、2008年、東京都千代田区麹町に専用スタジオをオープン。古典のカタック・クラスの他、ボリウッド・カタック・クラスも併設中。

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