こんな映画がミターイ!(1)

イラスト:デーヴ阿南
「Adomi Hard Hai~メーレー・ピャーリー・バヘン」
チャンドゥニー・チョウク版「男はつらいよ」
世界展開しているボリウッド、日本に定着しないのはなぜ? 戦後間もなく貧しい日本の子供を励まそうとネルーが贈った上野公園のインド象インディラを忘れ、「アフリカ象が好きっ!」とのたまったカルマか? さて、日印を結びつけるには、やはり合作映画。世界的名シリーズの梵林正式リメイクをさっそく妄想企画してみた。
20年前、親父にゲンコツを喰らってぷいっと家を飛び出したっきり行方知れずとなっていたインドラ*(渥美清/サンジャイ・ダット)が、春祭りホーリーに浮かれるデリーの下町チャンドゥニー・チョウク(delhi-6)へ、ぶらりと帰って来る。ミターイ(甘物)屋を営むチャーチャー(おいちゃん=森川信/パレーシュ・ラーワル)、チャーチー(おばちゃん=三崎千恵子/キロン・ケール)に育てられた腹違いの妹サプナー(賠償千恵子/アムリター・ラーオ)と涙の再会するも見合い話をぶち壊すインドラ。アップン(オレ)が居たんじゃ可愛い妹が嫁にも行けぬ、とまたも家出。ラージャースターンで考古学調査をしていた幼馴染みのナシーム(光本幸子/カトリーナ・ケイフ)に声をかけられたインドラは、促されて彼女の父親(笠智衆/ナスィールッディン・シャー)が世話人を務めるデリーのダルガー*(イスラーム聖者廟)へと転がり込む。日々反省の中、ふとしたことから神様カード印刷所で働く勤労青年プレーム(博=前田吟/シュリヤス・タルパデー)が妹を好いていることを知って、これをとりまとめるが、ナシームにNRIの婚約者アシュラーフ(リティク・ローシャンの特別出演)がいたことを知って、インドラはラクシャー・バンダン(兄妹祭)の朝、ひとり旅立つのであった。
監督は、ドタバタ物はともかく人情物の心得を持つプリヤダルシャン。撮影は現地ロケでなく、名美術監督サブー・シリルによる「Billu」(2009)ばりの緻密な下町オープンセットをフィルムシティに再現。音楽はリティクの叔父で、牧歌的なメロディを得意とするラージェーシュ・ローシャン。主題歌は、もちろんサンジャイのダミ声でプレイバックして頂きたい。その他、タコ社長(太宰久雄/アヌパム・ケール)の娘(美保純)にディヴヤー・ダッタ、源公(佐藤蛾次郎)にラージパル・ヤーダウ、ヒロインに想いを寄せるインスペクター(米倉斉加年)にアルバーズ・カーン、キャバレー歌手リリー(浅丘ルリ子)にレーカーをフィーチャル。こんな映画、ミターイやーん!
(初出:ナマステ・ボリウッド#24:2010年7月号 text by KJR)
*インドラ:漢名帝釈天の釈はサンスクリットのsakraの音訳。
*ダルガー:誰でも受け入れられ、しばしばヒンドゥーも願掛けに詣でる。