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インド映画はお祭りがいっぱい(9)ヒンドゥーの結婚儀礼3

2011.06.13

早稲田大学でボリウッド映画を題材にインド学を研究している高橋 明氏による「ナマステ・ボリウッド」連載コラム。毎回、映画に登場するインドのお祭りを月1でアップしてゆきます。コラムと連動したボリウッド講座@早稲田大学も企画しています。次回、開講をお楽しみに。

9章 ヒンドゥーの結婚儀礼 (3)
婚約式と結婚式、同日がトレンド

(ナマステ・ボリウッド #23/2010,4月号)

「君の家に来た、君をもらいに来た、互いの心を与え合おう。私の鼓動は君に訴え続けている、それを聴いて、聴いて、聴いてくれ!…彼はものを知らない子供みたいな人、好意で受け入れて差し上げたのよ、誰か言ってあげて!/彼女は私をずいぶんに言うけど、私は好意のお礼に心をささげたんだ、そう言ってやってくれ!」
結婚式は親族全員集合(ほとんど義務)のときだ。招待状を出さないのは絶縁状を出すようなものだし、欠席するのは一生恨まれる覚悟が必要。おまけに伝統にこだわるなら婚約式は別の日程で行う。花嫁の女友達と花婿の男友達による求婚儀礼を模した対向型の踊りを特徴とするこの儀礼も当然、親族全体が召集される。この二重の負担を軽減するために婚約式は結婚式当日の午前中に行う習慣が生まれて久しい。
映画の結婚式描写が婚約式の華やいだ踊りを中心にするものが多いのもこの現実を反映している。Kuch Kuch Hota Hai」何かが起きてる(1998) のカージョルサルマーンの婚約式もアッラーのご加護がなければ2・3日後に結婚式が予定されていた。滞在期間は長くなっても一回の全員集合ですませる様式が設定されているわけだ。
ところでこの映画、諸神、流れ星までの賛同を得てカージョルとシャー・ルクが結ばれるのだが、このシーンでも神意の発現を表す演出が用意されている。求婚者一行を娘たちが灯明とティラク(額に施す吉祥のしるし)で歓迎する場面(aarti)、カージョルだけが色粉をサルマーンの頬に塗りつけて逃げ出す。他愛もないいたずらだが、本人も気が付いていない無意識の現われというより、神意の顕現に見えてくると、インド映画はますます楽しくなっていく。
高橋 明(早稲田大学文学学術院非常勤講師)

Kuch Kuch Hota Hai

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