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A・R・ラフマーン |
Rangeela(ギンギラ)/1995 01.11.14 ★★★
製作・脚本・監督:ラームゴーパル・ヴァルマ/台詞:ニーラージ・ヴォーラ、サンジャイ・チェル/撮影:W・B・ラーオ/美術:R・ヴェルマン/編集:ニヴァス/音楽:A・R・ラフマーン/詞:メフブーブ/振付:アフムド・カーン、サロージ・カーン
出演:ジャッキー・シュロフ、アーミル・カーン、ウルミラ・マートンドカル、アヴタール・ギル、リーマ・ラグー、ニーラージ・ヴォーラ
特別出演:グルシャン・グローバー
公開日:9月8日(年間トップ5ヒット!)
STORY
映画のバックグラウンド・ダンサーを務めるミリ(ウルミラ)は、2階長屋の下に住むダフ屋ムンナ(アーミル)と仲がいい。だが、八九三なムンナが彼女との結婚を意識した時、撮影中のヒーロー、カマル(ジャッキー)の目に留まったミリがヒロインに大抜擢される。ムンナも大喜びしたものの、だんだんとミリは映画界へ関わりを強め、スターのカマルと親しくなってゆく・・・。
Revie-U *結末に触れています。
プラーン、ミーナークマーリー、ラージ・カプール、ヌータン、ヘーマ・マリーニー、レカー、アミター・バッチャン、シュリーデヴィーなど往年の映画スターがモノクロ・スチルで次々とロール・アップ。なぜかバックグラウンドは、車の排気音や町の雑踏の音というアバンギャルドなオープニングである。テルグ語映画界からボリウッドに殴り込みをかけた、ラームゴーパル・ヴァルマの「今までのヒンディー語映画とはちょっと違うゼ」という意気込みが感じられる。
これらのスターは、ラームゴーパルのお気に入りなのだろう。クセのある敵役を演じ続けたプラーンや美人女優というより演技派として人々を唸らせたミーナークマーリーが筆頭というのが筋金入りの映画ファンであるラームゴーパルらしい。
冒頭からして、ミニスカートのウルミラ・マートンドカルが踊りまくる。ウルミラは、まだ子役時代と言っていい頃からラームゴーパルに重用されて来たが、本作でヒロイン、ミリ同様に人気女優となった。まだラームゴーパルがボリウッドに移って日が浅かったせいか、さほど予算が得られなかった分、深紅のドレスを着たウルミラ、ミニスカのウルミラ、ホットパンツのウルミラ、スクール水着のウルミラ・・・と、ウルミラの美脚に頼るところが大きい。
インドの映画館は全席指定前売りのため、ブラック(ダフ屋)が横行する。このダフ屋ムンナが、アーミル・カーンの役どころ。粗野でコ汚い下町育ちを意気揚々と演じており、完全主義者のアーミルらしい入れ込みが感じられる。
ムンナのダフ屋という職業は、カマルという映画スターの対極にある。劇中、カマルがムンナに仕事を尋ね、ダフ屋と聞いて鼻も引っかけない。映画産業には直接貢献しない有象無象でしかないからだ。だが、観客にとっては人気の映画を見る際に最初に接する映画関連業者でもある。そんなダフ屋を主人公に選ぶあたりが、またまたラームゴーパルの映画好きを感じさせてくれる。
このムンナ、ミリがヒロインに抜擢されたと聞くと大喜びし、仕立て屋に新しく服を新調させて彼女を祝いの食事へ誘う。ミリは着飾って現れるが、新作の完成パーティーへ誘われていてカマルのスポーツカーに乗って出かけてしまう。
翌日、気を取り直したムンナは新調した服を着て、彼女をホテルのランチへと誘う。どんな服を新調したかと言うと、シャツもズボンも真ッ黄色。おまけにチャーターしたタクシーの屋根の色とお揃いだったりするのが笑える。
インドのホテルで食事するのはおそろしく高いつき、しかもウエイターは英語でしか話しかけて来ないので、生粋の下町っ子であるムンナが浮くことこの上ない。それでも彼は、知人の結婚話を持ち出し、それにかこつけてミリにプロポーズしようと思っている。ところが、ホテルのロビーにカマルが現れ、またもミリは彼について行ってしまうのだ。ひとり残されたムンナの前に、意気込んで注文した料理が次々と運ばれて来てインターミッションとなる。
ジャッキー・シュロフが、またいい。「Mr.BOND」というアクション物もこなすスター、カマル役である。
スターが映画の中でスターを演じる場合、やたら豪勢で鼻持ちならない存在となりがちだが、ラームゴーパルはむしろカマルをシャイで憂いのあるキャラクターとして作り上げている(当然、ジャッキーを当て込んで書かれたのだろう)。
彼は華やかな映画スターであるのだが、過去に婚約者を自動車事故で失って以来、愛を遠ざけて来ていた。撮影中にヒロイン役の若手女優が運転手と結婚(!)してしまったため撮影が中断しかける。そんな時、カマルは浜辺でひとりダンスに興じるミリを認め、代役ヒロインへ推薦する。
と言っても、ダンサー上がりのミリが芝居を出来るはずもなく、初日は11テイクも失敗する。ムンナ相手に台詞の練習をしたミリは翌日、演技の上達に褒められる。次第にカマルは屈託ないミリへ惹かれてゆき、ついに結婚を決意する。
このダフ屋とスターの格差がよく表れていて、それぞれのキャラクターの哀れさを誘う。
ミリの誕生日にロケ地を訪ねたムンナは、無理して買ったルビーの指輪をプレゼントしようと彼女の部屋へ行く。すると、着飾ったミリがまたもカマルからプレゼントされた豪華なアクセサリーを身に付けようとしている。
カマルはカマルで、ダイヤモンドがたっぷり載った婚約指輪を用意するのだが・・・。
いよいよ映画が完成(劇中、撮影していた映画のタイトルが「ランギーラ」)。プレミア試写となる。その会場にムンナの姿はなく、ミリはお粧しして現れた家族から彼の手紙を渡される。カマルの隣に座って手紙を読み始めようとすると、場内が暗くなり映画が始まる。このタイトルバックとエンドタイトルの垣間に、荷物をまとめ出てゆくムンナが描写される。
試写が終って、会場は沸き上がる。ムンナの想いが綴られた手紙を読んだミリは、大喝采の中、ステージとは反対側へ走り出す。後を追って訳を聞いたカマルは彼女を家に送り届けるが、すでにムンナの姿はなかった。
数ヶ月後。スター街道驀進中のミリは家族と共に高層フラットへ移り住み、リムジンで撮影所まで送り迎えされるまでになっている。ムンナはと言うと、相変わらずしがないダフ屋。今日も映画館前に屯する人々の中をうろつき、チケットを売って日銭を稼ぐ。その姿を、新進女優ミリが大きく描かれた「ランギーラ」の看板が見下ろしている・・・
と、このようなオチになるものだと想っていた。
ダフ屋とバックグラウンド・ダンサーの恋の物語。それもヒロインが主役に抜擢されて、スターとなって羽ばたいてゆく、と聞けば、少し前のハリウッド映画やフランス映画あたりなら、こういうセンチメンタルなラストで括ったことだろう。
ところが、意外や意外。カマルとミリは、ムンナを探し出してしまう! ここで、カマルはボリウッドのひとつのルール、ライヴァル役の法則に則って、ムンナに花を持たせる。ミリとカマルは互いに突っかかり合うが、そのコンビネーションは明らかに愛情に満ちていて、カマルでさえ笑って頷いてしまうのだ。
こういうハッピーエンドだからこそ、年間トップ5のヒットを勝ち得たのだろう。
本作を映画作りの内幕物と見ると、少々物足らなく思える。撮影のシーンもそれほど多くない。ラームゴーパルは映画の舞台裏をあざとく見せる代わりに、ほどよく手の内を隠しておいたのかもしれない。銀幕は、ある程度憧れをまとった距離を持っている方がよいからだ。
ストーリーはむしろ、ローアーミドル・クラスであるミリの生活レベルで描かれている。これは、大仕掛けなスター誕生物であるスバーシュ・ガイーの「Taal(リズム)」(1999)とは大違いだ。数年間とは言え映画界の流れの違いもあるだろうし、当時のラームゴーパルの立ち位置もあるだろう。本作の製作状況を考えると、ラームゴーパルが貧相を感じさせないギリギリの線で決して潤沢ではない予算を乗り切ったことが判る。
また、主人公がダフ屋だったり、バックグラウンド・ダンサーだったりするのは、ラームゴーパルがテルグ映画圏出身ということも大きいだろう。テルグ映画はヒンディー映画と違い、労働者が主役を演じるのが普通だからだ。
そのためか、他のヒンディー語映画と比べて、ストーリー展開は驚くほど地味である。劇的な場面はさほどないし、本筋とは関係ないギャグでつなぐようなキャラクターもいない。その分、観客と同じ視線でのハッピーエンドが、より温もりのあるものに感じられる。
インドのスピルバーグを目指す若手監督スティーヴン・カプール役は、グルシャン・グローバー。他の映画では大仰な敵役を演じることが多いが、今回は特別出演扱いで、さほど諄くない芝居を見せ好感が持てる。
大物(?)プロデューサー、P・C・チョープラ役には、ラームゴーパルの「Jungle(ジャングル)」(2000)にも出ているアヴタール・ギル。カツラを投げつけたり、我儘ステージ・ママに遜ったりというお決まりのギャグを見せる。
ミリの父親役にアチュート・ポトダール、母親にリーマ・ラグーが扮し、映画好きな父親と家族の一般的な様相が見て取れて面白い。
また、完成パーティーのシーンでP・Cの名を語る偽業界人役として、台詞で参加してるニーラージ・ヴォーラがカメオ出演(?)している。
1995年のトップ5ヒットとなった本作は、今も人々に愛されている。
その様は、「Kuch Kuch Hota Hai(何かが起きてる)」(1998)の歌当てゼスチャー・クイズで、カージョールがセクシーポーズを取る第1問の答えが本作のタイトルソング「rangeela」であったし、音楽を担当したA・R・ラフマーンのドゥバイ・コンサートでもオープニングにこの曲のインスト版が演奏されていたりと、人気の高さが伺われる。
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