ひんでぃーこれくしょん<K>
オススメ度 =陳腐 ★★=退屈 ★★★=平均点 ★★★★=面白い! ★★★★★=お気に入り!!
   

アッチャー・ソングス
om shanti om
キショール・クマール

ek hasina thi ek deewana
キショール・クマール
アーシャー・ボースレー
darde dil darde jigar
モハムド・ラフィ
paisa ye paisa
キショール・クマール
kaml hai
main solah baras ki


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Karz(借り)/1980 08.05.30 ★★★★
カルズ

製作:アクタル・ファルキー、ジャグジート・クラーナー/監督:スバーシュ・ガイー/脚本:サチン・ボーウミク/台詞:Dr.ラフィ・マソーム・レーザ/撮影監督:カマラカル・ラーオ/作詞:アナン・バクシー/音楽:ラクシュミーカーント-ピャーレーラール /振付:スレーシュ・バット/スリル:スリンデール・カシム/美術:スデンドゥー・ローイ/編集:ワマン・ボースレー、グルダット・シラリ/特殊効果:シネマジック
出演:リシ・カプール、ティナ・ムニム、スィミー・ガレーワル、プラーン、プレームナート、ドゥルガー・コーテー、アバー・ドゥリア、ジャラール・アガー、ピンチュー・カプール、イフティカル、ビルバル、ヴィジュー・コーテー、マック・モーハン、ムクリ、マドゥー・マルホートラ、ユスフ・カーン、ランジャン・ガレーワル、ラタン・ガウラン
友情出演:アルナー・イラーニー
公開日:6月11日

Film Fare Awards:音楽監督賞

STORY
人気歌手のモンティ(リシ)は、ボンベイへ旅行中の女学生ティナ(ティナ)に一目惚れ。彼女への想いを抱いたステージ中、強いフラッシュバックに襲われ氣を失った彼は、それが過去世のヴィジョンであったことを知る。休養のため、彼女の住むウーティーを訪れるが、そこで自分を殺した女カーミニー(スィミー)と出合い・・・。

Revie-U
 *結末には触れていません、ご安心を。
「Dhoom : 2(騒乱2)(2006)を抜いてインド国内の歴代トップ1を飾ったシャー・ルーク・カーン製作・主演OM Shanti OM(2007)が下敷きとしてリスペクトしているのが、この本作。年間トップ9ヒットとなり、今も数々のメモラブル・ナンバルで人々に記憶される80年代の佳作と言えよう。
主演のリシ・カプールは、名門カプール家の出世頭で、ラージ・カプールの次男に当たる(本誌ナマステ・ボリウッド09号・フィルミー家系図参照)。
「OSO」に登場する70年代のトップスター、ラージェーシュ・カプールがモデルとなっているスーパースター、ラージェーシュ・カンナーの元妻であり(トゥインクル・カンナーの母、つまりアクシェイ・クマールの法律内母=義母)ディンプル・カパーディヤー(ナーガリー表記的にはカパーリヤーとなるが、大抵はカパーディヤーと発音されている)と「ボビー」Bobby(1973)で鮮烈Wデビュー!
70〜80年代はマルチ・スター・システムに欠かせぬ人氣を博し、ほとんどついこの前まで中年体躯を押してマードゥリー・ディクシトジュヒー・チャーウラーなどを相手にヒーロー役に興じていた印象が強いから、いささか鼻について拒絶している向きもあることだろう。
しかしながら、サルマーン・カーン共演「Yeh Hai Jalwa」(2002)や、父親役にシフトしてからも「Hum Tum」(2004)での変わらぬエンターティナーぶりにはやはり目を見張るものがある。
長いキャリアの中であまり賞に恵まれなかったが、「OSO」の後押しがあって、この春、Film Fare Awards生涯功労賞の受賞となった。「Yeh Vaada Raha(これが約束)(1982)、「Tawaif(娼妓)(1985)など埋もれた秀作も多いので、ぜひ往年のリシ・カプールを堪能して欲しい。

初々しいヒロインを演ずるは、サンジャイ・ダットのデビュー作「Rocky」(1980)などで80年代前半を駆け抜けたティナ・ムニム。78年に国際ティーン・コンテストで、ミス・フォトジェニック&ミス・ビキニを受賞し、「Des Pardes(お国と他国)(1978)でデビュー。80年代後半にボリウッドを去ってカリフォルニア留学、インド最大となる新興財閥リライアンス・グループアニル・アンバニー氏(推定資産6兆3600億円)と1991年に結婚し、現在英国在住。
登場シーンではプライヴェート・パーティーのためにホテル入りしたモンティに対して、いささか感じの悪い印象を返すものの、パーティーが始まれば物陰からそっと見守るのが可愛い。この時の黒いスカーフ姿は、まさしく印象派の絵画を見るようだ。

一方、謎めいた大人の色香を放つ敵役のスィミー・ガレーワルは、人形のようなフォルム(「サンダーバード」ぺネロープを連想させる)で本作に謎めいた魅力を添える。
スィミーは今でこそ「徹子の部屋」的な長寿番組「Rendevouz with Simi Garewal」のインテリ・ホステスとして知られるが、ラージ・カプール監督・主演作「私はピエロ」Mera Naam Jorker(1970)では、遠景ながら麗しい全裸シーンを披露(子役のリシが<夢想>してしまう!)。また、ラージの末弟シャシ・カプール主演作「シッダールタ」Shiddhartha(1972=米)では全裸情交シーンに挑むなど進歩的な考えの持ち主であったようだ。
参考までに触れておくと、ボリウッド・メジャーにおける露出度の高さではラージの監督作「Ram Teri Ganga Maili(恋のガンガー)(1985)でヒロインのマンダキーニーが滝に打たれてニップルが透けて見えるシーンがあり、インドの男衆がどっと詰めかけて大ヒットとなった逸話がある他、かのシャー・ルークもデビュー年に出演した「ボヴァリー夫人」翻案「Maya Memsaab(マヤ夫人)(1993)で監督ケータン・メーフターの夫人であるヒロインのディーパー・サヒー相手に「KANK」(2006)以上の濃厚な情事を交しており、ディーパーの美しい上半身が露に映し出されている。
余談ついでに、レズビアン描写が物議を醸したディーパー・メーフター監督(先のディーパーとは別人)の「FIRE」Fire(1997)におけるナンディーター・ダースのそれは、カットからして代役であろうと解る。

監督のスバーシュ・ガイーは、インドの大衆に広く浸透したヒンドゥー神話をモティーフに選ぶヒットメーカー。当たる要因とされるミュージカル・シーンにもより重きを置く。
「OSO」でも再現された「om shanti om」など本作でのステージ・ナンバルを改めて観ると、アイシュワリヤー・ラーイをトップスターに押し上げたTaal(リズム)(1999)のダイナミズムへ至る原型が見てとれ興味深い。
スバーシュは、復讐と輪廻転生というテーマをジャッキー・シュロフ×アニル・カプール主演「Ram Lakhan(ラームとラカン)(1989)でも展開し、さらにこれが「カランとアルジュン」Karan Arjun(1995)へと結実する。
全編にヒンドゥー色を強調することで観客心理を煽り、これがヒットに結びつく仕掛けとなっている。殺人現場がシヴァの妃カーリー女神の祠であることや、コンサート・ナンバル「om shanti om」のステージが巨大なターン・テーブルに見立てられポップな印象を与える一方で、プレーヤーの軸がシヴァの聖なる男根リンガに見立てられているのがミソ。

本作の魅力を増幅しているのは、なんと言ってもラクシュミーカーント-ピャーレーラールの手による珠玉のナンバルだろう。
高級避暑地ウーティーに広大な茶園を相続し、恋人カーミニーと結婚したモンティの前世ラヴィは、里帰りする途中、血を好む女神カーリーの祠前で花嫁の手によって惨殺される。その時、カーラジオから流れているインストルメンタル「ek haseena thi」サンタナ風に啼いたギター・チューンは心だけでなく、来生への記憶にも刻まれるかのようだ。
ティナと出合うプライヴェート・パーティーで歌うのが、求愛ナンバル「dard e dil darde jigar」。 シャー・ルークのシックスパックで話題になった意味不明タイトル「dard e disco(ディスコの痛み)も、実はこの「dard e dil(心の痛み)に由来(歌詞にもある通り、元はガザルだったそうだ)。
その「OSO」の冒頭で撮影されているのが、劇中ステージ・ナンバル「om shanti om」!(スバーシュまで特別出演!) 1995年頃に発売されたカバー・コンピCD「Bollywood Mix」では、アビジートがフィーチャルされているが、オリジナルのプレイバックは、かのキショール・クマール! 実にパワフル!
これらのメモラブル・ナンバルを生んだラクシュミーカーント・シャンタラーム・クダルカルピャーレーラール・ラームプラサード・シャルマからなる音楽デュオは、「アマル・アクバル・アントニー」Amar Akbar Antony(1977)から本作までFilm Fare Awards音楽賞を4年連続制覇した全盛期とあって、インストルメンタル・バージョンやバックグラウンド・スコアに至るまでどれも心に刻まれる。
ちなみに、「OSO」では音楽監督のビシャール-シェーカルに乞われてラクシュミーカーントがレコーディングに立ち合い、多くの教えを施したそうだ。

サポーティングは、ラヴィの母親に「Mughal-E-Azam(偉大なるムガル帝国)(1960)で父子の板挟みになる母親マハーラーニーを演じていたドゥルガー・コーテーを配役。
息子ラヴィが惨殺されたと知るや、カーリー女神に「おまえが女神(マー)なら、私も母親(マー)だよ。息子を返せ!」と迫るのが胸を打つ。
転生したモンティが現れるや、息子と確信。その晩、床を抜け出し彼を探しに出ては、ダンプに撥ねられてしまう。このシーンが凄い! カンガルー・バンパー(パイプ・ガード)付きのダンプが停車し切れずブチ当たり、母親役のスタントマン(そう祈りたい)が2メートルは吹っ飛んでしまうのだ。 かつて世界を沸かせた「マッド・マックス」(1979=豪)でも横転したバイクのフロントフォークがスタントマンの首を直撃する映像があったが、このスタントマンもかなりのダメージを負ったはず。

その「MEA」で王子役ディリープ・クマールの代役として子役に扮していたのが、モンティの友人Dr.ダーヤル役のジャラール・アガー
かのSholay(1975)ではロック・ナンバル「memboob memboob」のジプシー歌手として登場。後年、プリティー・ズィンター主演Kya Kehna!(まあ、素敵!)(2000)に翻案された「Julie」(1975)ではヒロイン、ジュリーに想いを寄せる青年を好演している。

黒幕サージュダーをふてぶてしく演じるのが、今は亡きプレームナート。台詞がない代わりにグラスなどをスプーンで叩いて部下に指示するところが強烈な印象を与え、禿げ上がった白蓬髪に肩毛姿で、ブロンド女たちと沐浴する様は妖怪的ですらある。
こんな醜態ながら、ラージ・カプールの監督デビュー作「火」Aag(1948)では目も覚めるような好青年であったのだから、世の中、諸行無常……。
その部下、マック・モーハンも淡々と悪事を処理してゆき、実に佳い。マックはスニール・ダット主演「Gazal」(1964)の頃はメイクであった顎髭をトレードマークに変え、「炎」、Don(1978)などでスタイリッシュな悪役の定番となる。
脇役は脚本上で役名を考えるのが面倒なのか、実名そのままであることがしばしばで、彼も<マック>役が多い。ラーケーシュ・ローシャン監督作「Khel」(1991)などは、偽警官役を引き受けた彼自身役。報酬を受け取る場面で「マック・モーハン、もうひと仕事やってくれないか」との台詞まで用意されている(さすがは映画王国だけあって内幕ネタも常道で、本作でもティナの伯父カビールがアクション俳優を雇ってモンティの度胸を試すエピソードがある)。

忘れてならないのが、ティナの後見人となるカビール・チャチャ(伯父)を演じる名脇役プラーン。旧Don(1978)や「アマル・アクバル・アントニー」など運命の悪戯により犯罪に手を染める父親役など、ストーリーに厚みをもたらすキャラクターを演じさせたら彼の右に出る者はいない。
本作でも、ある事情から服役し、10年ぶりにシャバに出てはティナを訪ねるも買い求めたプレゼントが幼児服というエピソードからして、彼が塀の中でもずっと幼いティナを想い続けていたことが滲み出ている。
そのカビールのキャラクターに命を与えているのが、名ダイアローグ・ライター、Dr.ラヒ・マソーム・レーザによる台詞。ティナに恋人がいると知って、ひと芝居打った後に吐く韻を踏んだ台詞「坊主(バッチェー)、まだまだ未熟(カッチェー)だな」。仕事を訊かれたモンティの返答に素っとぼけた「歌ならオレでも歌える」などなど、ノット・バッド!

その他、モンティを招いてプライヴェート・パーティーを開くDr.ダニエルにDaag(汚点)(1973)、「Don」などダンディな警官役を定番としたイフティカル。口髭がない若い頃の「Jagte Raho(目を覚ましておれ)(1956)は、Shootout At Lokandwala(2007)などのボンクラ俳優トゥシャール・カプールにそっくりなのが意外。37年越しの新作リリースとなるアミターブ・バッチャン主演作「Yaar Meri Zindagi(友は我が命)(2008)にも出演。
また、カビールの仲間に、Main Hoon Na(私がいるから)(2004)でも引用されている「炎」におけるガッバル・スィンの伝説的台詞「アブ、テーラー・キャー・ホゲヤー? アーリア(ほら、どうした? カーリア)で知られるカーリア役のヴィジュー・コーテー
「アマル・アクバル・アントニー」でリシが惚れるニートゥー・スィンの父親役だった小男ムクリが、ティナを愛しく見守る涙もろい校長役。
カビールに敵対する男に「AAA」のボディガード役、「Don」の一味などの敵役俳優ユスフ・カーン
そして、ティナの登場シーンで姿を見せているホテルの従業員ジョセフ役のモンゴル顔は、ラタン・ガウラン。ほんの脇役俳優であり、「Shalimar」泥棒も命がけ/1214カラット=V(1979)ではジュニア・アーティスト程度のトライブ役ながら、「Jhumroo」(1961)のシェルパ役では台詞も多く、「Jagte Raho」では鬼氣迫る小男ぶりを発揮している。

さて、去年は「OSO」にて大々的にリスペクトされた他、B級フリークのアッバース-ムスターン監督作のNaqaab(仮面)(2007)でも、富豪のボビー・デーオルに求婚されたヒロイン、ウルワシー・シャルマに近づく謎めいた男アクシャヱ・カンナーが黒幕とやり取りするモバイルのリングトーン(着メロ)を本作における疑惑ナンバル「ek haseena thi」に設定。本作を観ていると、映画の<罠>に誘導されてしまう仕掛けがお見事であった。
さらに、俳優デビュー作「Aap Kaa Surroor」(2007)の劇中でも「dard e dil」を弾き語るシーンがあったヒメーシュ・リシャームミヤーを起用、舞台をケープタウンに移してのリメイクが撮影中。タイトルは「Karzzzz」(2008)! 監督はVaada(約束)(2005)で絶妙な演出を見せたサティーシュ・コゥーシーク。ヒメーシュはトレードマークの野球帽を脱ぎ捨てており、新境地を見せるか見物。カーミニー役には、これまた麗しくもアブナイ香りに満ちたウルミラー、プレームナートが演じた黒幕役にフェローズ・カーンと実にスリリング!

1本1本が独立した作品として作られ、観賞されては消費される多くの国の映画とは異なり、ボリウッドではフィルミーソングが人々に愛され続けることで映画が有機的に結びつき、ひとつの神話世界を構築してゆく。
本作が「OSO」へと結実したように映画が、歌が輪廻転生して新たな魅惑を生み出す。それ故に、映画を観てゆくことでボリウッドの神話的ポイントが貯まることとなり、観れば観るほど雪だるま式に愉しみが増す。ボリウッドの特典システムを生かす為にも、ぜひ旧作の数々に触れて欲しい。

*08.6.09 追記
クライマックスのステージ・ナンバル「ek hasina thi ek diwana tha」のイントロ・ドラミングは、本作に思い入れを示すシリーシュ・クンデールファラー・カーンによるJaan-E-Mann(我が命〜愛しき人よ)(2006)の中で、サルマーン・カーンの口上で始まる回想ナンバル「humko maaloom hai」にて再現されている。

 
 
 
 
 

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